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ご主人さまとエルフさん  作者: とりまる ひよこ。
ありきたりな迷宮と牛耳さんなのです
9/74

tmp.8 迷宮へ行こう

 ダンジョン、それは数多の謎を秘めた過去の足跡。


 ダンジョン、それは浪漫の象徴にして、世界で唯一人間が成り上がれる場所。


 ダンジョン、それは危険と隣り合わせの希望。


 嗚呼、人はなぜこうもダンジョンというものに惹かれるのでしょうか。



 というわけでやってきました、ペテシェダンジョン。ご主人さまに攻撃魔法も教えてもらったので準備万端なのですよ!


「テンション高いですね、せんぱい」


「あたぼうです、血が騒ぐのです、日頃のストレスを発散するのですよ!」


 頼れる前衛が二人もいるのです、安全地帯から攻撃撃ち放題なのですよ! 超イージーモードなのです。


「はいはい……天井と背後には気をつけろよ」


「いえっさー!」


 そんな訳でボク達はペテシェのギルド付近に入り口があるダンジョンへ来ているのでした。初心者御用達だけあってモンスターの湧きが甘く、あまり強くないので実力をつけるのに向いているのだとか。その分人が多いし簡単なのであまり稼ぎにはならないそうなのですが、たまにレアな装備を持っている個体も出るらしく、中々に浪漫あふれる仕様なのです。


 因みにダンジョンの正体は謎だそうで、誰が何の目的で作ったのか不明。ただ中で生物が死ぬと死体は所持品を残して一定時間で消滅してしまいます。モンスターは何らかのシステムにより一定数まで自動で出現するみたいです。装備品も自動生成されるようなので、モンスターの残したアイテムを売って換金するのが基本ですね。


 浅い階層だと生成されるアイテムも低級品なので稼ぎもいまいちという寸法なのです。さて、何でわざわざダンジョンに来ているかというとですね、ここの中ボスクラスが例のメダルを落とすそうなのですよ。


 新しい奴隷であるルルも加わったことですし、ここは一つメダルを集めてパーティを強化しようというお話になったのです。ボクもまだパワーアップを諦めていませんし、今後もっと色んな場所に行こうとするなら戦力強化は必須でしょう。


 いくらご主人さまがチート主人公とはいっても無敵タイプではありませんからね、せめて自分の身くらいは守れるようになっておきたいのです。いつ別のヤンデレが襲ってくるかもわからないのですからね。なので戦闘訓練も兼ねてご主人さまに連れて来てもらっているのです。


 

「根源たる火よ、礫となりて我が敵を灼け!」


 ボクの詠唱に合わせて手のひらサイズの炎の玉が眼前の魔法陣から勢い良く射出されていきます。火球はルルが抑えてくれていたゴブリンの顔面にぶつかって弾けると、勢い良くゴブリンの体を焼き尽くしていきました。


 使ってるのは最下級の火魔法ですが、ボクってば魔力だけは高いようで直撃さえすれば結構な威力になるのです。ただご主人さまいわく魔法の才能が無いみたいで、相性の良い属性でも下級を覚えるのが精一杯と言われてへこみかけましたが、足りない分はパワーでカバーすればいいのですよ……。


 そうそう、魔法とか冒険者とかのランクもしっかりありまして、聞く限りでは最下級、下級、中級、上級、最上級、伝説級の6段階っぽいです。ご主人さまは上級目前の中級冒険者ですね、出世スピードとしてはかなりの速さみたいです。


 上級から一流と呼ばれる領域に差し掛かります。こっちに来て半年足らずでここまで来てるとかやっぱりチートはひどいですね。通常なら中級に上がるまでに2年はかかるって話なのに。


 そんなチートは今一人でこの階層の中ボスである、ナイトゴブリンを倒しに行ってます。当然ながら普通はソロで倒せるような相手ではないですが、多種多様な魔法とレヴァンテインの力で楽勝な空気を醸しだしてました。


 することがなくて暇を持て余したボクとルルは近くにやってくるゴブリンを倒していたのです。命のやり取りとかがどうとかは今更なのです、スプラッタだとか無意味に殺される人間なんてガマガエルのところに居た時に飽きるほど見ているのですよ!


 そもそもダンジョンに湧くモンスターは厳密には生物じゃなくて魔法で作った生体人形みたいな物らしいので、葛藤は自分の身を危険に曝すだけなのです。


「ソラ、ルル、次いくぞー」


 光になって消えたゴブリンが残した、錆びてボロボロになったナイフを収集品袋に回収した頃にご主人さまから声がかかりました、どうやらもう倒してしまったようです。このくらいの階層だと中ボスといえどもはや相手にならないのでしょうね。


「いきましょう」


「はい、せんぱい」


 荷物を抱え直すルルを待ち、離れない程度に先導するご主人さまの後を追いかけるのです。



 現在20階層なう、なのです。このダンジョンは全部で24階層あって、5の倍数階に中ボスが待ち受けています。ナイトゴブリンは5階の中ボスで、今は全身鎧を付けた巨大なケウンタウロスっぽい魔物と戦っている最中です。ご主人さまが。


「「がんばれー!」」


 ボクも魔法を撃ってみたのですけどね、何の効果もなくむしろターゲットがこっちに来て余計危なかったので離れてルルと大人しくしております。ルルも流石にあれと戦う力はないので柱の影から一緒に応援中です。


 石畳を踏み砕きながら、ハルバードを構え凄まじい速度で接近する人馬の突撃(チャージ)を、ゆらりと風に舞う布切れのような動きで回避しながら、ご主人さまが火の魔剣で切りつけました。赤熱して光を放つ刀身は容易くその鎧を切り裂き、切断面から溶けた銅が流れて地面を焼きます。


 斬ったというより焼き切ったって感じです、ああいう使い方もの出来るのですね。片腕を失った人馬はバランスを失いながらも大きく旋回し、残された腕で斧槍を大きく振り回します。痛みに反応がないのは生物じゃない証拠ですね。同時に生半可なダメージでは行動不能にさせられない事を示してますので、敵としてみるとかなり厄介な性質でしょう。


 実際にとれた腕を意に介さず攻撃を続ける人馬に、ご主人さまは少し顔をしかめながらレヴァンテインを下から上へと縦に振りぬきます。紅い閃光は室内を照らし、哀れな全身鎧の人馬はその一瞬で真っ二つになって地面に転がりました。


 数秒のラグを置いて光になってダンジョンの床に吸収されていく肉片や鎧片を見ながら、ご主人さまがハルバードを拾い上げます。デザインもよさそうですし見た目は綺麗なので売り物になるといいのですが。


「やっぱ中々メダルはでないな」


「そうなのですか」


 落し物を確認していたご主人さまがため息をつきました。どうやら今回も手に入らなかったようです。まぁそう簡単にできないようになっているのでしょうね。気長に集めるのが良いかもしれません。


「んじゃ、ボスを倒したらさくっと脱出するか」


「はい」

「わかりました」


 中ボス部屋の奥にある階段を降りて次の階層へゴーなのです。中ボスは倒されると部屋の入り口が閉鎖されて、一〇分ほどで復活すると同時に部屋がまた解放されるのだとか。とことんゲーム仕様ですね。もしかしたら大昔の文明を作った人たちが作ったちょっと危険な遊技場なのかもしれませんね。


 そこからは特に難所も無く最下層のボスであるドラグスペクター、竜の骸骨がローブをまとったような格好をしたモンスターですね、そいつを軽くぶっ飛ばし、最深部にあるテレポーターから脱出しました。


 ふよふよ飛びながら魔法をガンガン飛ばしてくるので普通に戦うと結構強いみたいなんですけどね、開幕にケンタウロスをずばーってやった技を放って一発でした、ずばーってなりました。


 これはボクの魔法の出番かって思ったのにあんまりです。落とし物もしょぼかったみたいでちょっと残念な結果になったのですよ。まぁ魔法乱射型なので長期戦になるとボクとルルが危ないから速攻で終わらせてくれたのは解ってるんですけどね、どうにも消化不良です。


 あばれたりないぞー! と家に着くまでは思っていたのですけどね。帰るなり疲労が襲ってきてソファに倒れこんでしまいました。旅の時は自分の足で歩く場面なんてほとんどなかったので、油断なのです。


「うー……」


「もうちょっと体力つけないとな」


 頭を撫でるご主人さまを睨みながら寝返りを打ちます。といいますかね、体力が落ちた原因として、家から出してくれないのはご主人さまなのですよ? 軽くでいいのでルルと一緒に散歩にいきたいと思っても許可が下りないのです。


「運動不足はボクのせいじゃありません、

 ご主人さまが家から出してくれないのが悪いのです」


 だから外出許可を出すべきだと思います。奴隷は主人の許可無く居住している家屋から出ることが出来ません。破ろうとすれば首輪が締まってしまうのですよ。


「そうはいってもなぁ、お前を外に出すのはなんか不安なんだよ、

 なんかお菓子に釣られて誘拐されそうでさ」


 何という酷い認識でしょう。これでも中身は同い年なのですよ、そんな古典的な手段には引っかからないのです。


「その扱いはいくらなんでも酷いのです……、

 まぁ、家から出すのが嫌なのは百歩譲りましょう、

 代わりに運動不足を解消する手段を考案してください!

 家の中でこもっていると暇でしょうがないのです!」


 家事の方もご主人さまの魔改造した洗濯機やら魔導ポンプやらで楽になってしまっているのです。お陰で空いた時間が暇でしょうがありません、ダンジョンに行く理由がそれなんですから救えません。現在開発中だというお風呂が完成したら一日中はいっていそうな勢いの持て余し加減ですよ。


「運動不足ね……わかった、しょうがないな」


 ……あ、あれ? ボクの言葉を聞いて考え込んでいたご主人さまがいきなり膝の下と背中に手を回して抱き上げてきました。何のつもりなんでしょうか。


「あの、ご主人さま、あの、何でボクを抱き上げるのですか?」


「暇だから運動したいんだろ?」


「あの、あの、そっちは寝室なのですよ、運動する場所じゃないのです!!」


 これは、もしかしなくてもやらかしましたか? やっちまった系ですか?


「いやさ、そういえばすっかり忘れてたなと思って」


「な、なに、何を……ですか?」


 やばいのです、危険が危ないのです。本能がものすごい勢いで警報を鳴らし続けています。にげなきゃ、にげなきゃ!


「お仕置き?」


「るるー! るるぅー!?

 ピンチです助けてください! お願い助けて!! いやぁぁぁぁ!!」


【RESULT】

―――――――――――――――――――――――――――――

◆-------------★【ソラ】--★【ルル】--★

[◇MAX COMBO}--◇【21】----◇【0】----◇

[◇TOTAL HIT}----◇【21】----◇【0】----◇

---------------------------------------------------

[◇TOTAL-EXP}--◆【103】--◆【013】--◆

―――――――――――――――――――――――――――――

【パーティー】

[シュウヤ][Lv28]HP410/410 MP630/630[正常]

[ソラ][Lv2]HP-10/20 MP50/50[戦闘不能]

[ルル][Lv22]HP297/297 MP22/22[正常]

―――――――――――――――――――――

【レコード】

[MAX COMBO]>>21 <<new record!!

[MAX HIT]>>21 <<new record!!

―――――――――――――――――――――

【一言】

「(びくん、びくん)」

「うわぁ……」

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