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ご主人さまとエルフさん  作者: とりまる ひよこ。
君と作る未来の為になのです
61/74

tmp.53 決戦の火蓋


 小銃を構えた獣人達が一斉に射撃を開始すると同時に、ユリアとルル、葛西さん達前線部隊も前へと飛び出しました。その様子を見守っているとボクの肩を誰かが叩きます。振り向くとフェレが満面の笑みを浮かべていました。


「ソラ、うたおう!」

「あー、"アレ"ですね……」


 冬の合間に回したガチャでボク達が手に入れたスキルの一つ、何故かフェレに強請られて一回目を同時に回した時にでてしまったもの。その名は『合唱魔法』二人同時に同じ歌を奏でる事で強力な効果を起こすことが出来るスキルだそうです。攻撃よりも補助が中心みたいですので、こういった集団戦だと効果を発揮するでしょうね。


「いくよー!」

「はいはい……」


 並んで直立し、大きく息を吸ってから同時に歌い出します。題目はフェレの好きな、こちらの世界にある祭りで歌われるような明るいもの。


「「――――♪」」


 足元に魔法陣が広がっていきます、この歌の効果は確か身体能力の強化と自然治癒力の強化のはず。効果はそれぞれ大きくはないですが、バランスが良いのです。明らかに動きがよくなった獣人達がやる気の見えない冒険者たちを薙ぎ払っていきます。


 ていうか君ら殆ど抵抗してないじゃないですか、こっちとしては無駄な殺生をせずに済んで助かるんですがやる気なさすぎやしません!?


「はぁぁ!」


 ユリアもまたガチャガチャで手に入れた『獅子王の戦斧』という武器で放たれる魔法を打ち砕き、ケインに斬りかかりました。ご主人さまは斬り掛かってきたパンツ泥棒を一撃で切り捨てて襲い掛かってくる冒険者の相手をしているようです。もうちょっと出番くらい上げても良かったでしょうに……まぁ、あれで独占欲強いですからね、


 ルルは新しく手に入れたスキル、『暗殺』を駆使して冒険者の意識を刈って回ってます。方針として極力殺さないという事になっているので、実に便利なスキルだと思います。


「ユリア! 正気に戻るんだ!」

「私は正気よ!」


 振り下ろされた斧を寸での所で避けたケインでしたが、地面を簡単に打ち砕く斧の威力に僅かに焦りを覚えたようで、まずユリアを抑えることにしたようです。周囲にした四人の女性たちもそれぞれ魔法、槍、剣などで援護をはじめました。流石に五対一で勝てるほどユリアは突き抜けていないので、慌てて範囲外に逃れています。


 しかし敵も中々にやるようで、剣使いの青髪の女と槍使いの緑髪の少女が逃れたユリアにすぐさま肉薄します。


「あんた邪魔なのよ!」

「君が側にいることはケインのためにならない! すまないがここで排除させて貰おう」

「だからケインのところには行かないっていってるでしょうが!!」


 突き出された槍を柄で弾き、追ってくる剣を刃を盾代わりにして防いでいます。流石にご主人さまや葛西さんを相手にしているだけあって、防御に関してなら多少は余裕があるみたいです。多勢に無勢で大丈夫なのかと心配していると、少し離れた位置で実力者らしい冒険者を昏倒させて回っていたご主人さまが剣を振り上げて叫びました。


「"紅蓮飛翔剣"」


 次の瞬間、剣から巻き起こった炎が鳥の形を作り、ユリアを攻撃している女性二人に迫ります。


「なっ!?」

「くっ!」


 とっさに飛び退く槍使いに対して、剣使いはそこまで機敏には動けないのか剣を盾にしながら踏ん張りました。


「"聖光衝烈波"!」


 あと一歩まで剣使いに迫った火の鳥はしかし、真横から飛ばされてきた青白い閃光の爆発によりかき消されてしまいました。それを放った張本人であるケインは憎々しげにご主人さまを睨んで、剣を持って斬りかかろうとします。


 ご主人さまのはたぶん聖剣技ですが、あのダメ男も同じ技を使えるようです。なんであんな奴に才能があるのか、世の中理不尽なのです。


「卑怯だぞ!」

「何がだ」


 叫ぶケインに頭痛を堪えるような顔をするご主人さま、気持ちはわかります。そうこうしている間に衝撃を与える魔法を連射する小銃によってランクの低い冒険者は一人残らず気絶し、腕の良い冒険者はご主人さまや葛西を始めとした隊長格に狩られて大体が倒れています。残っているのはケインと女性四人だけ。投降してくれれば穏便に済むんですが、あれを捕虜にするのはウザそうで嫌ですね。


「いきなり横から女性を狙い打つなんて! お前それでも男か!」

「戦場に立つ以上覚悟はしてきているんだろ、それに誰かれ構わず優しくするのは感心出来ないぞ」


 うんうん、モテオーラの持ち主がそれやると際限なくハーレムが拡大しますからね、実際ご主人さまは自分のハーレム員以外には意識してそっけなくしているようです、愛想が悪いというほどではないですが、かなり事務的な感じなので取り付く島もないのだとか。


「女性に優しくするのは当然だ!」

「いい加減自覚しないと、お前を慕う彼女たちを不幸にすることになるぞ」


 舌戦と共に剣撃を打ち合わせる二人、実力差を考えればご主人さまなら一撃で昏倒させる事も出来るのでしょうが、そこはユリアを立てているのでしょう。そうこうしている間に剣士と槍使いは葛西さんが、魔法使い二人はルルが相手をすることで晴れてフリーになったユリアが大地を蹴って飛び上がり、大きく斧を振りかぶってケインの背中に叩きつけようとします。


「それとこれと何の関係があるんだ!

 でも、少なくともユリアはお前といたら不幸になる、それだけは……うわっ!?」

「私のっ!!」


 地面が爆砕し、二人の姿が土煙の中へ消えていきます。直後に金属が激しく衝突する音が聞こえてケインが転がるように出てきました。煙を切り裂くようにしてユリアも追従して出てきます。


「幸せをっ!」


 遠心力の付いた高速の一撃を思わず剣で受けてしまったケインは、腕ごと持っていかれるように剣を弾き飛ばされて尻もちをつきました。ユリアは敢えて斧の勢いを殺さないで、体ごと回転しながら更に加速を付けて倒れたケインに振り下ろします。


「お前が勝手に決めるなぁぁ!!」

「うわぁぁぁぁぁ!?」

 

 ケインの叫び声と同時に、地面が砕けて小さなクレーターが出来上がります。丁度股の間、股間のしたあたりに打ち下ろされた斧がその破壊力を遺憾なく発揮したようです。顔をひきつらせるケインに向かってユリアが冷たい視線を向けていました。


「じゃあねケイン、貴方の事嫌いじゃ無かったけど、

 今は旦那様しか見えないから、貴方は精々自分勝手に生きて……私の知らない所でね」

「まっ、ユリあがっ!?」


 軽い動作で斧の峰を震えながら立ち上がったケインの腹に叩き込んだユリアは、数メートルほど宙を舞った末に地面に激突した彼に、一瞥もくれないままご主人さまに微笑みかけ、他の冒険者の捕縛を手伝い始めました。冬の間の修行は無駄ではなかったようですけど、怖い。


 リーダー格である彼が倒れたことで周りの抵抗も止みます。決着が付いたことを確認してから歌をやめると、すっかり勝利ムードの兵士たちから拍手を送られてしまいました。慣れてるフェレと違って拍手なんてされたことがないので照れてしまいますね。



「それで、こいつらはどうします?」

「取りあえずは箱詰めして冒険者ギルドに送りつけるかな」


 戦いが終わり、冒険者の処遇について話し合っていると、またしても森の一角で爆炎が上がりました。別働隊が居たのでしょう、爆発の合った場所は……確か、大使館?


「……なるほど、やっぱり冒険者は俺たちの足止めか」


 新しい敵の予感に少し浮足立つ兵士たちと違って、ご主人さまは冷静に爆発の方角を見つめて納得していました。彼等をボク達に宛てがうことで倒せればよし、そうでなくても本懐を遂げるまでの時間稼ぎは出来ると踏んだのでしょう。ご主人さまが何も手を打っていないとは思えませんが。


「シュウヤ、どうする?」

「マコトは"FOX"を率いて恐らく森のなかに居る別働隊を探り、発見次第殲滅、

 俺達はこのまま脚の早い銃士隊を率いて大使館に向かう、残りは城の守護だ」


 指示を聞いて其々の役割を果たすために移動を始める獣人達に混じって、ボクはご主人さまの足元まで行くと顔を見上げます。


「置いてけぼりは無しなのですよ?」

「俺の傍から離れるなよ?」


 先ほどと違って反対はなく、あっさりと承諾してもらいボク達は王子様救出作戦へと向かったのでした。

 

【RESULT】

―――――――――――――――――――――――――――――

◆-------------★【ソラ】--★【ルル】--★【ユリア】

[◇MAX COMBO}--◇【0】----◇【0】----◇【0】

[◇TOTAL HIT}----◇【0】----◇【0】----◇【0】

---------------------------------------------------

[◇TOTAL-EXP}-◆【1300】--◆【610】--◆【649】

―――――――――――――――――――――――――――――

【パーティー】

[ソラ][Lv55]HP110/110 MP3100/3100[正常]

[ルル][Lv88]HP1320/1320 MP50/50[正常]

[ユリア][Lv80]HP4360/4560 MP102/102[正常]

[フェレ][Lv60]HP720/720 MP1370/1570[正常]

[シュウヤ][Lv130]HP4210/4210 MP3806/3806[正常]

―――――――――――――――――――――――――――――

【レコード】

[MAX COMBO]>>55

[MAX HIT]>>55

―――――――――――――――――――――――――――――

【一言】

猫「ナイスボディスマッシュ」

耳「彼、絶対いつか痴情のもつれで刺されるのです」

牛「ほんと、なんであんなのが好きだったんだろう……」


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