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ご主人さまとエルフさん  作者: とりまる ひよこ。
海だ!水着だ!誘拐だ!? なのです
28/74

tmp.25 動き始める


 新たな二人の仲間を引き連れ、再び岩陰の調査に戻りました。と言っても目に見える痕跡はないので殆どクラリスさんのお仕事なのですがね。ぼんやり見守るボクたちの前で難しい顔をしながら見聞をしていた彼女が、深くため息を吐きながら重く口を開きました。


「強力な魔法が使われた痕跡があるわね」


「強力な魔法?」


 何の魔法でしょうかね、彼女レベルの魔術師が強力と言うなら相当な物でしょうけど、正直ご主人さまくらいしか思いあたりません。


「断定は出来ないけど、残っている魔素の痕跡からして恐らく転送系……」


 転送系、確か一部の特殊能力(スキル)持ちだけが使える魔法だったはずです。希少かつ強力でご主人さまでもガチャでスキルを引かないと使えないだろうという魔法。当然ながらその大半が国や大きな組織に召し抱えられていて、そこらへんにぽんっと居るはずがありません。


 本当に誰かがそれを使ったのなら、予想以上に大事になっている可能性がありますね。国関係か裏の組織か、何ともいえないのです。


「お、お嬢様……旦那様はお強いですから、その」


「分かってますよ」


 確かにご主人さまも心配ですが、もしもこれが突発的な事故やアクシデントならまだしも、計画的にボク達と分断するために行われているとしたら、とてもまずい状況です。ここに居るメンバーでは大規模な襲撃には対応しきれないのですよ。ユリアは戦士として一人前程度ですが、クラリスさんは間違いなく一流と呼ばれる実力者。


 コリンズさんも中級とはいえクラリスさんと組んで仕事をこなせる程度には優秀です。葛西さんはこの世界に平和ぼけした日本人が放り出されて生きていける程度。人殺しは難しくとも自分の身を守る程度は出来るでしょう。


 でもご主人さまみたく人外じみた力の持ち主ではありません。転送魔法の使い手を抱えているような組織なら同格の実力者が居ても不思議ではないでしょう。


「痕跡を辿るのは不可能じゃないけど……時間がかかるわね」


 時間がかかっても出来てしまうあたり、凄いのですが。あまりこれに時間を掛け過ぎても危険な気がしますね。ここにとどまることは果たして得策なのでしょうか。


「そのレベルの魔法使いが実行犯にいて、

 しかも意図的だった場合はここに留まるのは危険な気がします」


「……それもそうだけど、他に手がかりがないわ」


 言われてみれば……。


「安心してくれ、君は俺達で守るから」


「あぁ」


 いつの間にか仲良くなっていた葛西さんとコリンズさんの二人が言います。少し臆病になりすぎていたかもしれませんね……主人のピンチに我が身可愛さに尻込みするのはただの駄犬なのです。ペットとして少しくらいは役に立つところを見せたいものです。


「わかりました、ご主人さまの手がかりを見つけてください、お願いします」


「ま、あたしに任せておきなさい」



 いかほどの時間が経ったのか。危惧していた襲撃は今のところなくクラリスさんの探査は順調に進んでいました。分かったことは多くありませんが、それでも一つや二つは重大な事が判明しています。


「転移先の候補はいくつか絞り込めたわ、

 術者はスキルを持っていてもあまり強力な物ではないみたいね」


 デーナの地図を広げながら当たり前のように言ってますけど、決して簡単なことではありません。この年で自分の才能だけで上級一歩手前まで行っているだけのことはありますね、これで中身さえまともなら……いえ、協力してくれてるんですからディスるのはやめておきましょう。


「この中から怪しい場所を探していくのが妥当なんだけど……」


 指差す地図の目印が書き込まれた場所にある建物は貴族の屋敷。ご主人さまは酷く厄介な事態に巻き込まれた、巻き込ませてしまったみたいです。やっぱり身の丈に合わない情なんて持つものではありませんね、今回は大切な人たちに迷惑がかかってしまいました。反省したつもりだったのですが……ご主人さまが戻ってきたらちゃんとごめんなさいしないといけません。


「怪しいのはここ……ベルマ子爵の別荘ね、

 レア種族コレクターで有名で、別荘には専用の隠し牢獄があるって噂もある奴よ」


「随分詳しいですね」


 調べた素振りが無かったことから事前にある程度知っていたのでしょう。実は良家の出だったりしちゃうんですかね、確かにお嬢様チックではありますが。


「私にも色々あるのよ……ま、それはいいとして、

 こいつは合法的な方法だけじゃなく非合法な手段も取っているって噂もあるのよ。

 他の貴族の奴隷を奪ったりとかね……?」


「それじゃあまさか、私達を狙って……」


「たぶん違いますよ」


 ユリアの言葉に否定で返します。それなら二人が岩陰に行った隙をついてボク達の方を直接攫えばいいのです。ご主人さまレベルの人間を強制転移で吹っ飛ばせるなら離れてる隙にボク達を狙う何て朝飯前なはずです。


「それなら離れてる隙にボク達を狙うでしょう」


「転移魔法は厄介だからね、そっちのほうが手っ取り早いわ」


「そう、ですか……」


 痕跡を辿れるレベルの魔術師が居るなんて普通は思いませんからね、やはり完全な別件に巻き込まれたと考えるべきでしょう。


「それで、どうするのかしら?」


「助けに行く! ……と言いたいところですが、

 迂闊に首をつっこんで、ボク達が人質代わりにされたら目も当てられません」


「そうね」


 クラリスさんはボクの返答に満足そうにうなずきます。ご主人さまは何とかしちゃうタイプの人なので、定番としては勇み足で助けに行ったヒロイン、この場合はユリアが逆に捕まってしまってピンチになるパターンでしょう。


 下策は何もしないこと、凡策は身の回りの安全を固めてご主人さまを待つ。とはいえ万が一、億が一自力での脱出が困難な場合は待機は悪手となりうるでしょう。


「まずはそのベルト子爵でしたっけ、その人の情報を調べましょう。

 後は必要に応じてご主人さまの脱出をサポートします」


「……ベルマ子爵よ」



 一度宿に拠点を移しボク達は宿で待機、男性陣で情報収集に行くという分担で行動を開始しました。何故か妙に詳しいクラリスさんのくれた情報と合わせてわかったことは、数ヶ月前から連続窃盗で指名手配されている転移術師をベルマ子爵が雇っている可能性があること。


 ここ数日、彼の別荘付近にごろつき達が屯している事。最近海鳥が妙に騒がしかったこと。……最後の情報については置いておくとして、完全に何かやらかそうとしてた感じですね、解りやすいです。


「怪しい」

「怪しいわね」

「怪しいですね」


 もはやそれ以外の感想が出てきません、ご主人さまの言う「何もしないから一緒にお風呂に入ろう」と同じレベルの怪しさです。そうそう、怪しいといえばもう一つ。


「ところで、クラリスさんがここに居るのと、

 その指名手配中の転移術師がバルマ子爵に雇われてるのと何か関係が?」


 何でこんなに今回の情報に詳しいのか、少し気になっていたのですよね。何だかいやに協力的ですし。


「…………秘密よ」


「分かりました」


 どうやら利害は一致しているようですね、妙に詳しい理由も、容疑者をあっさりと絞り込んだ理由もやっと解りました。事態の収束まで遠慮無く頼らせて頂きましょう。


「まぁキサラギ君をそこらのやつがどうこうできるとは思えないけど、

 囚われているなら助けを必要としている可能性はあるわね」


 ご主人さまも決して万能無敵ってわけではありませんからね、安全は確保できても脱出が出来ないとかいう可能性も皆無ではないはずです。自分で言っといてどういう状況なんだろうとは思いましたが……貴族相手だからあまり無茶が出来ないとか?


「流石に貴族が相手となると、どうにも手を出しづらいのです」


 それにしても、手助けと言っても妙案が浮かびません。何かをしようにも情報があまりに不足し過ぎているのですよ。まずはご主人さまの所在を確かめないことには対処法の考案すらできませんし、探りを入れようにも相手が悪いのです。


「別荘の中に潜入してみるとか……」


 休憩していた葛西さんがおずおずと手をあげましたが、論外ですね。


「それが出来ないから悩んでるのです」

「それが出来ないから悩んでるのよ」


 捕まった時が厄介です、芋づる式にボクたちまで引っぱり出される可能性があります。ここは日本じゃないのです、警察組織は平等ではありません。お貴族様にお金を積まれれば白ですら黒となりうる世の中ですから、ただでさえ不法侵入(まっくろ)な状態でそうなれば暗い未来しか見えませんよ。


「地道に情報を集めるしかないか?」


 今度はソファに腰を下ろして顎の下で手を組みながらコリンズさん。


「時間をかけ過ぎると怪しまれますよ」



 そんな風にあーだこーだと話し合っていると、突然宿のドアが乱暴にノックされました。一瞬で警戒を顔に滲ませたコリンズさんが気軽に返事を返そうとした葛西さんの口を塞ぎクラリスさんに目配せします。


 すっかり良いコンビとなっているようでなによりナノデス。アイコンタクトを受けたクラリスさんは音を立てずに立ち上がると、そっと窓の外を見下ろします。ボクとユリアは一緒にいつでも動けるように待機中。


「はい」


 葛西さんに説明を終えたコリンズさんが、武器を背中にゆっくりとドアに近づき返事をします。


「デーナ警備騎士隊の者だ、ここを開けろ」


 随分と威圧的な男性の声です、何で騎士がこんな時間に?


「外に数人、タダ事じゃないわね」


 まさかこんな早く察知されて動き出したとでもいうのでしょうか?


「警備騎士の方がこんな夜更けに何のようですか?」


 コリンズさんが時間を稼いでくれている間に、脱出の準備をします。ユリアと葛西さんに荷物を持ってもらい、ボクはいざという時のためにと渡されていた護身用のマジックアイテムをいくつか服の下に忍ばせます。


「ここを借りているというシュウヤ・キサラギがベルマ子爵の屋敷に侵入し、

 家屋を損壊して逃亡したのだ、大人しくしておれば悪くはしない、扉を開けてもらおう」


 ……なんですと?



【RESULT】

―――――――――――――――――――――――――――――

◆-------------★【ソラ】--★【ルル】--★【ユリア】

[◇MAX COMBO}--◇【0】----◇【0】----◇【0】

[◇TOTAL HIT}----◇【0】----◇【0】----◇【0】

---------------------------------------------------

[◇TOTAL-EXP}--◆【508】--◆【176】--◆【158】

―――――――――――――――――――――――――――――

【パーティー】

[ソラ][Lv15]HP38/50 MP420/420[正常]

[ユリア][Lv31]HP1040/1040 MP60/60[正常]

[クラリス][Lv40]HP230/230 MP732/732[正常]

[コリンズ][Lv42]HP640/640 MP40/40[正常]

[マコト][Lv20]HP450/450 MP102/102[正常]

―――――――――――――――――――――――――――――

【レコード】

[MAX COMBO]>>33

[MAX HIT]>>33

―――――――――――――――――――――――――――――

【一言】

「ご主人さまは一体何やってるのですか!?」

「一体何が起こっているのか……」

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