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ご主人さまとエルフさん  作者: とりまる ひよこ。
海だ!水着だ!誘拐だ!? なのです

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27/74

tmp.24 事件の予感


 困ったことになりました。ボクが溺れ掛けてからというもの、ご主人さまが膝の上で抱きしめたまま離してくれないのです。どうやらよっぽどショックだったみたいで、うざったいけど助けてもらったし、申し訳ない気持ちもあるので無理矢理振りほどく訳にもいきません。


 まぁ砂浜に敷いたシートの上、木陰でぼんやりしているだけで変なことはされないし、別にいいといえばいいんですが、微妙に気持ち悪いのです。


「お嬢様、飲み物はいりますか?」


 ご主人さま謹製のクーラーボックスから瓶詰めにした果実の搾り汁を取り出しながらユリアが大きな胸をたゆんと揺らします。果汁に水や蜂蜜を加えて味を調整したものをポーション用の瓶に詰めた自家製のドリンクですね。普段からストック用に奴隷三人でせっせと作っているものを持ってきていたのです。


「レモンをください」


「はい」


 最近のお気に入りである炭酸を加えたハチミツ入りのレモン水をちびちびと傾けながら太陽の光が注ぐ砂浜をぼんやりと眺めました、人間族の女の子たちが色とりどりの水着を着てきゃーきゃーと歓声をあげて波打ち際で戯れています。


 ちょっと町から離れると魔物や野盗と人が殺しあい、都市では小さな子供や女性がさらわれて奴隷として売り買いされている世界とは思えない平和さなのです。ここだけ抜き出すと日本の一風景と勘違いしてしそうなレベル。ちなみにこの砂浜にいる全員がいわゆる富裕層にあたります、これが格差社会ってやつなのでしょうか。


 世の中理不尽なのですよ……。



 そんな理不尽に目を塞ぎ、穏やかな一時を過ごしているとき、岩陰の方に奇妙な動きをする人影を見つけました。ご主人さまの腕をたたいてそちらを指差します。


「ねぇ、あれって……」


「ん? ……何だあれ」


 岩陰に視線を向けたご主人さまの顔が一気に険しくなりました、人影は複数人で何かを押さえつけるような仕草をしていたので、気になったのです。何か動物を捕まえているようにも見えますが、どうにも後姿が典型的なごろつきというか何というか。


 首を突っ込むのはよろしくないことなのですが、見て見ぬ振りをするのも寝覚めが悪そうなのです。偽善ですけど、性分なのです。


「ご主人さま」


 振り返ってご主人さまを見上げます、視線に気づいたご主人さまは何も言わず憮然とした表情を浮かべましたが、しばらくすがるような視線を向け続けているとやがてあきらめたのか、ぽんぽんとボクの頭をなでると、ため息を吐きながら立ち上がりました。


「……ユリア、ソラを頼む、ルルは一緒に来い」


「了解しました……はぁ、せんぱいはお人よしなんだから」


 ぼやきながらもしっかりと短剣用のベルトを腰に巻きつけたルルが立ち上がり、ご主人さまと一緒に岩陰の方に向かいました。なんだかんだ言いながらちゃんと動いてくれるあたり大好きですよご主人さま。


 後はおとなしくご主人さまが戻ってくるのを待つとしましょう。ここまできたらボクは足手まといでしかありません。岩陰に二人が消えていくのを見届けてから、ユリアと一緒に一応いつでも動けるようにしながら待機するのみです。



 ご主人さまはしばらく戻ってきませんでした、普段ならそんなに経たず戻ってくるだろうに不思議なのです。時計がないので正確には分かりませんが、体感では一時間くらいは経っているように思えます。まさかとは思いますが何かあったのでしょうか……ちょっと不安になってきました。


「あれ、シュウヤは?」


 見に行こうかどうしようか、相談しているボクたちの下へ葛西さんがやってきたのはちょうどボク達が探しに行くことを決心したタイミングでした。


「実はあっちの岩陰に不審な人影を見つけて、ご主人さまに見に行ってもらったんですが……」


「半刻近く戻ってないんです、ちょっと心配で探しにいこうと思っていたんですよ」


 事情を説明するボク達に葛西さんは少し困ったような顔をして、分かったと頷きました。


「そういう事なら俺も一緒に行くよ、心配だ」


 彼はご主人さまみたいに何でもそつなくこなせるタイプではないみたいですが、やはり主人公体質というべきかかなりの強者みたいです。じゃないとこの世界で一人放り出されてここまで生きてこれるはずがありませんものね、少しでいいから分けてほしいです。


「お願いするのです」

「お願いします……」


 幸いというべきか、体調も飛んだりはねたりはともかく普通に歩くくらいなら平気そうです。熱せられた砂浜を踏みつけ、葛西さんを先頭にユリアに手を引かれ岩陰の方へ向かいます。


 手でボク達を制すと、葛西さんは腰の剣に手をかけながら岩陰を覗き込みました。しかし拍子抜けしたように立ちすくむとこちらに向かって手招きをしてきます。ユリアと顔を見合わせて首をかしげながら、できるだけ静かに移動して、葛西さんの背中越しに岩陰を見ます。


 しかしそこには何もないようにみえました。三人がかりでしばらく探した結果、誰かが居た痕跡こそ見付かったもののそこでぱたりと消息が絶たれています。ご主人さまに限ってボク達を置き去りにして勝手にどこか行くというのは無いと思うので、何かあったと考えるのが妥当でしょう。


 魔法使いならいろいろ調べる魔法もあるのですが、あいにくとこの中に魔法系はいないみたいなんですよね。我が家の魔法系はご主人さまだけ、本来は上級に昇格の際に晴れてギルド本部から魔導聖剣士というありがた迷惑なクラス名を賜った彼の担当なのです。


 現在そのクラス名は我が家では禁句ですけどね。その日に散々からかったらマジギレしたご主人さまによってひどい目にあってしまったので、実に大人気ありませんでした。


「お嬢様……旦那様は大丈夫なんでしょうか」


「大丈夫なのですよ、ご主人さまに何かあったら首輪になんらかの変化が起きるのです。

 ボクの首輪もユリアの首輪も何もありません、ご主人さまは無事なのですよ」


 おっと、思い出している間に、ユリアが不安そうな声で弱気を漏らしました。ボクは彼女の目を見て自分の首に巻きつけられたチョーカーを指先で突きます。これは迷子防止用とか防犯とかいろいろ機能がつけられていますが、同時に奴隷の身分を示す首輪でもあるので主人以外にははずせないもの。


 そしてご主人さまは前々から首輪に仕込をしていました。ご主人さまに万が一の事があった際にボクたちが路頭に迷うことがないように、いろいろ仕掛けてあるそうなのです。例えば事態を知らせる為に色が黒から白に変化するとか。初めて聞かされたときは死を想定してることに動揺して、思わず泣いてすがってしまったのは思い出したくない黒歴史ですね。


 話を戻して、ユリアの首に巻かれているチョーカーは何の異常も示していないのでとりあえずご主人さまは無事なはずなのです。それよりも……。


「ルルもご主人さまと一緒でしょうし、問題はボク達なのです」


 見事に戦闘力高い二人と分断されてしまったのですよ、しかも二人そろって高級種族。ボクのドワーフというレッテルもどこまで通用するかわかったものじゃありませんし、ユリアだけでも狙う価値がある存在です。葛西さんも頼りになるかまだちょっと分かりませんし、どうすればいいのか……。


「そうですね……取りあえず荷物をまとめて動けるようにしておきましょう。

 カサイさん、手伝ってくださいませんか?」


「あぁ、任せとけ」


 ユリアの少し上目遣いのお願いに葛西さんが即答で答えます。さすがご主人さまと仲がよいだけあって視線がとても正直でした。まぁ扱いやすくていいんですけどね。



「あれ、ソラじゃない、こんなところで会うなんて奇遇ね」


 荷物を片付けて、取りあえず一度宿に戻ろうとした矢先、またしても思いがけない出会いがありました。ぎしぎしと首が音を立てそうなほどゆっくり振り返ると、紅い髪を潮風になびかせて、貧相な胸部をワインレッドのビキニに包む姿が眼に入ります。


 そこにいたのは紛れも無く、大魔導師(ストーカー)のクラリスさんでした。


 最近は被害者(かれし)といちゃつくのに夢中だったようで、街中とかで見かけてもお邪魔してはいけないとスルーしてたのですけどね。まさかリゾート地で会うとは思いませんでした。その格好からしてあちらもバカンス中なのでしょう。


「そっちのは誰? ……キサラギ君はどうしたのよ?」


 今カレに微妙に気を使ったているのか、ファーストネームじゃなくてファミリーネームで呼ぶようにしているみたいです。話していて時折冷やっとする部分はありますが、彼女は基本として悪人ではありません。それに破壊型とはいえ魔法の専門家でもありますし、もしかしたら何かわかるかも。


「こちらのはご主人さまのご友人で葛西さんです、実はですね……」


 事情を説明するに連れて次第に真剣な顔になったクラリスさんは立ち上がると薄い胸を張りました。


「そういう事なら私に任せて、コリンズもきっと協力してくれるわ、優しい人だもの」


 どうやら被害者(かれし)も来ているようです、結ばれてから多少落ち着いているのですがまだこの手の話になるとひやっとする要素は十分ですね。気をつけないといけません。


 何はともあれ心強い味方が得られたのは嬉しいですね。被害者(コリンズ)さんは間違いなく善人ですし、彼女も彼氏の前では地雷さえ踏まなければ善人カテゴリに入るでしょうし。


「まずはコリンズを拾って、それから現場にいきましょうか」


「はい!」

「お願いします」


 さて、いなくなったご主人さまを見つけにいきましょうか。


【RESULT】

―――――――――――――――――――――――――――――

◆-------------★【ソラ】--★【ルル】--★【ユリア】

[◇MAX COMBO}--◇【0】----◇【0】----◇【0】

[◇TOTAL HIT}----◇【0】----◇【0】----◇【0】

---------------------------------------------------

[◇TOTAL-EXP}--◆【508】--◆【176】--◆【158】

―――――――――――――――――――――――――――――

【パーティー】

[ソラ][Lv15]HP38/50 MP420/420[正常]

[ユリア][Lv31]HP1040/1040 MP60/60[正常]

[クラリス][Lv40]HP230/230 MP732/732[正常]

[コリンズ][Lv42]HP640/640 MP40/40[正常]

[マコト][Lv20]HP450/450 MP102/102[正常]

―――――――――――――――――――――――――――――

【レコード】

[MAX COMBO]>>33

[MAX HIT]>>33

―――――――――――――――――――――――――――――

【一言】

「ご主人さまを絶対に見つけるのですよー」

「……お嬢様、あまり気に病まれてはいけませんよ?」

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