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ご主人さまとエルフさん  作者: とりまる ひよこ。
ありきたりな迷宮と牛耳さんなのです

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15/74

tmp.14 必殺技の代償


 地下鐘楼の29階なう、なのです。ユリア(重戦士)を加えて前衛過多となったボクたち一行は再びダンジョン攻略に精を出しているのでした。おっとりした見た目で大戦斧を振り回すパワーファイターだったのにはびっくりしたのです、牛の面目躍如ですね。


「そっちに行ったぞ!」


「おーらいなのですよ」


 ふわっーっと半透明なクラゲのような魔物、ジェリーレイスが高い位置からこちらに向かってきます。前衛でご主人さまやルルと肩を並べるにはまだ実力が足りてないユリアにガードしてもらいながら、指先で照準を合わせて呪文を紡ぎましょう。


「気高き光よ、惑いを穿つ祈りを受け、我が指先より光条を放て」


 光属性の下級に位置する、『閃光(レイ)』と名付けられている魔法です。指先から放たれた閃光の矢がしゅばっとクラゲの中心を打ち抜きました。宙を漂っていた魔物は途端に奇妙に震えながら中心に吸い込まれるように萎んで消えてしまいます。


 ボクの手にかかれば30階クラスのモンスターといってもこの程度なのですよ、ふふん。


 全身をツノが生えた黒い甲冑で覆う騎士のような魔物と闘いながら、攻撃の余波でワラワラ湧いて出てくるジェリーレイスを吹き飛ばしているご主人さまやルルを見ながら、ボクは自慢げに胸を張るのでした。



 鬼畜で変態でいやらしいという言葉が服を着て歩いているような、青春真っ盛りで若さとリビドーが湯水のように溢れ出ている何とかを覚えたての猿と同レベルのご主人さまですが、チートという言葉に恥じないくらいには強いのです。


「何か内心ですごく侮辱されてる気がするんだが……気のせいか?」

 

「気のせいです」


 元冒険者のユリアの見立てだと、ご主人さまは上級の上位もしくは最上級クラスの実力者。ルルは中級の中位くらいには強いんじゃないかという事でした。因みにボクは一人だと最弱モンスターの代名詞であるゴブリンすら油断できない相手です、十分に離れた位置からって条件付きでなら無双できるのですけどね……。


「ほんと非常識ですよねこのパーティ……」


 30階へ降りれる階段の真横にシートを広げて休憩中、自分もしっかりとお茶を楽しみながらユリアがぼやきます。普通の冒険者からすると色々ありえない生活なのだそうです。


 何でも冒険者はその半数が定職に就けない食い詰め者がなる仕事で、毎日毎日必死で働いていて生活に余裕なんかなくて、やっと一般市民並みの暮らしが出来るのは中級に入ってから。なので大抵の人間が壁にぶち当たって挫折してならずものになってしまうのだとか。


 以前ペアで活動してた時は、あの幼馴染君が武器を買ってお金がなくなり、空きっ腹を抑えながら一つのパンを分け合って飢えをしのいでいたそうです。なんて不憫な話でしょう……。


「ふふふ、旦那さまと一緒にいるとアイツがどれだけ甲斐性なしだったのか解りますね」


 笑みが黒いのは吹っ切れてきた証拠だと思いましょう。実際に甲斐性がないのは事実なので否定はしません、その調子で再会した時に横っ面の一つでも引っぱたいて罵ってやるといいのですよ。


 何かあったらご主人さまが守ってくれるのです。ボクは所詮抱き枕ならぬ抱きエルフなので戦力外です、兜と刀がトレードマークな有名な猫のゆるキャラに戦闘力を期待するくらいに大間違いです。悲しくなんてないのですよ……。


「休憩終わりだ、ボスを倒して出るぞ」


「はーい」


 ご主人さまの声に応じて手早く休憩スペースを片付けると、隣の階段を降りていくのでした。


 ボス部屋は等しく大部屋になっていて、中心にはボク達に気づいたらしく六本の腕に武器を構えたスケルトンが待ち受けていました。見るからに強者の雰囲気です、骨なのに金色ですしね。


「俺が前に出る、ルルは隙を突いて遊撃、

 ユリアはソラの護衛、ソラは隅っこで大人しくしてろ」


「了解」


「解りました」


「らじゃー! ……じゃねぇのです、

 何でボクだけそんな指示なんですか!」


 不服なのです、これでも光系統の下級魔法を覚えて戦闘にも慣れて来ました。いつまでも足手まといではないのですよ。侮ることは許しません、断固たる決意で戦いますよボクは。


「帰ったら地下……」

「大人しくしてます!」


 部屋の隅っこの方に邪魔にならないように移動します。苦笑したユリアを盾にしてボクがご主人さまを睨んだ所で戦闘が始まりました。真正面からご主人さまが剣を使って打ち合い、その隙を突くようルルが側面や背面から長剣で切りつける形ですね。


 とはいえ敵も中々達者です、ご主人さまの剣は腕四本を使って何とか防ぎながら、ルルには残った二本で牽制をして近寄らせません。ですが地力の差は明確なようです。氷属性の魔法を併用しだしたご主人さまの前に圧されはじめていきました。


 振りぬかれた右三本の腕、手斧と剣とメイスが握られています。ご主人さまは斧を避けつつ剣を受け、メイスが届く前に地面を蹴って後ろに下がります。引くついでに足元に氷の魔法をばら撒いてますね。金ピカ骸骨は見事に簡易トラップに引っかかって足を滑らせました。


 そこへ飛び込んできたルルの剣が突き出され、ガードしようとした左腕を二本破壊しました。音を立てて砕けた骨と共に地面に転がる短槍と短剣、倒れながらも反射的にルルを攻撃しようとする骸骨に、いつの間にか接近していたご主人さまの蹴りが、がら空きの胴に叩きつけられます。


 あれたぶん身体強化魔法使ってますね、肋骨が何本か砕けながら骸骨は部屋の壁に叩きつけられました。更に追撃しようとするルルでしたが残った左腕に握られた突剣を突き出されて動きを止めてしまいます。そこへ右腕の剣が振り下ろされそうになりましたが、すんでの所でご主人さまに襟を掴まれて引き離されました、見てるだけでもちょっとヒヤッとしますね。


「あ、ありがとうございますシュウヤ様……」


「無理して追撃しなくていい、慎重にな」


 更に動こうとする骸骨に炎の槍を放ちながら、ご主人さまはルルを背中にかばうようにしながら距離を取ります。然りげ無い仕草で女の子を守るとか無駄にポイントが高い行動でむかつきますよね、イケメンなだけでもイライラするのに。


「さて、せっかくだし試してみるか」


 呟いたご主人さまが剣を右手で逆に持って腰を深く落とし、右腕を背中側に大きくひねりながら構えます。……というかですね、本当に高校生ですかご主人さま? 実は30過ぎで異世界転移で若返っただけとじゃないですよね?


 まぁ知ってるボクが言えた義理ではないかもしれませんが。ボクの場合は漫研の知人に古い漫画だけど面白いからと全巻貸し付けられたので知ってます、おじさんおばさんからは蛇蝎の如く嫌われてても漫画は現代人日本人のたしなみだと思うのですよ。


「ご主人さま……まさか、あの技を!?」


 取り敢えずここは乗っておきましょう。レヴァンテインが赤熱した光を放ち始めたのを確認してから、目を白黒させるルルとユリアに聞こえるように声を出します。


 だって、ねぇ、こういうの楽しいですよね。この気持ち、男の子なら解ってもらえるはずです。実際にご主人さまだってボクの絶妙なタイミングで差し込まれたセリフを聞いて微妙にニヤけてます、良い仕事をしたのです。


「え、せんぱい知ってるんですか!?」

「な、何なんですあれ、何か凄い魔力を感じるんですけど」


 二人とも中々に良いリアクションなのです。連携が揃ってきた感じがしますね、素晴らしいです。


「かつての勇者が編み出したといわれる必殺技です、

 その一撃は天地を切り裂くともいわれているのです」


 嘘は言っていないのですよ。ボクの説明を聞いて二人が驚いたような顔でご主人さまを見ています。


「はあぁぁぁぁぁぁ!!」


 その瞬間、ご主人さまに飛びかかってきた骸骨に向かって勢い良く剣が振りぬかれました。輝く閃光が視界を白く染め上げます。光が収まった頃、そこには剣を振りぬいたままの体勢のご主人さまと、真っ二つにされて消えていく骸骨の姿だけが残っていました。


 流石に技名は叫ばないあたりが賢明なのです。そこまでやるのは恥ずかしかったのですかね? 打ち終わって冷静になったのかちょっと照れが見えるのですよ、これは弄らなければいけません。普段からボクを虐げているから逆襲されるのです。


「す、凄いですシュウヤ様!」


「ほ、ほんとに凄い……」


 ところで、ダンジョンの壁におもいっきり斬撃の痕が残っているんですが大丈夫なんでしょうか。勝手に直ったりするんですかねこれ。うん、誰が管理してるわけでもないし、気にしないでおきましょう。


「おつかれさまですご主人さま。

 次は火炎魔法と氷結魔法の合成でもいってみますか?」


「……そっちはどんな威力になるか想像できないからやめておこう」


 確かに実現したら相当な事になりそうですよねあれ、ボクとしては是非かっこよく決めて黒歴史を創造してほしいものですが。普段のお返しにいくらでも弄ってあげますよ、ハリーハリーハリー。


「メダルも手に入ったしそろそろ帰るか……」


 ちょっと恥ずかしそうにしながらご主人さまが中継点にある直通ポータルを起動させます。ボクが圧倒的に有利、有利なのです、中々に新鮮なのですよ。


「帰ったらどうします?

 もっとかっこいいポーズと口上でも練習します?

 またつまらぬものを切ってしまったとか言ってみます? ねぇねぇ」


「脱出するぞー」


 ねぇどんな気持ち、異世界でチートもらって強くなったからって調子に乗って、女の子たちの前で必殺技撃っちゃうのってどんな気持ちですか? それを同じ日本人に見られちゃうってどんな気持ちですか? 知りたいなー、ボク知りたいなー。


「あれー、ご主人さまどうしたんですか?

 中途半端にカッコつけたら余計恥ずかしくなっちゃったんですか?

 お顔が真っ赤ですよー?」


 ご主人さまったら案外可愛い所もあるのです、所詮借り物の力でしか無いとか高二病全開な事言っちゃってるくせに、中途半端にそういうことやるからそうなるのですよ、今日は特別にぷぎゃーしまくってあげます。


「せんぱい、めちゃくちゃ調子にのってますね」


「旦那様にあんな態度で大丈夫なんでしょうか……」


「ねぇどんなきもち、ねぇどんなきもち?」


「…………」


 ふふふ、これで暫くは弄るネタに事欠かないのです。



【RESULT】

―――――――――――――――――――――――――――――

◆--------------★【ソラ】--★【ルル】--★【ユリア】

[◇MAX COMBO}--◇【30】----◇【0】----◇【0】

[◇TOTAL HIT}----◇【30】----◇【0】----◇【0】

---------------------------------------------------

[◇TOTAL-EXP}--◆【186】--◆【063】--◆【000】

―――――――――――――――――――――――――――――

【パーティー】

[シュウヤ][Lv38]HP542/542 MP830/830[憤怒]

[ソラ][Lv8]HP-60/32 MP0/140[戦闘不能]

[ルル][Lv33]HP422/422 MP28/28[正常]

[ユリア][Lv15]HP440/440 MP32/32[正常]

―――――――――――――――――――――――――――――

【レコード】

[MAX COMBO]>>30 <<new record!!

[MAX HIT]>>30 <<new record!!

―――――――――――――――――――――――――――――

【一言】

「(がくがく、びくんびくん)」

「せんぱいみたいな子を"バカワイイ"って言うのかな?」

「(うわぁ……)」

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