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斬 -ZAN-   作者: 鷹玖沙 眞
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序章 桜の木の下で

春、桜の開花と共に人は出会いと別れを繰り返す。

少女は少年を見掛け、その姿に違和感を覚える。

それが物語の始まりであった。


少年が持つ刀の謎とは…

 「何で君は刀を持ち歩いているのだい?」

 初対面の相手にだったけど僕はそう彼に尋ねた。高校の入学式も滞り無く終了し、桜が散りかけ始めた4月初旬の事だった事を鮮明に覚えている。


 彼は僕と同級なのだろうか?僕が入学した学校の男子の制服は角帽と詰襟姿ではない。時代の流れに併せてかなり前からブレザーになっていた。そんなブレザーを着ているだけでも暑い春先なのに、彼は軍服のような重そうな冬用のコートを身に纏い、満開となった桜の木に寄りかかって立膝を立てて座っている。


 初夏かと思わせるほど気温は上がってきているのに、彼は暑くないのだろうか?そんな私の疑問とは裏腹に彼自身は至って涼しい顔をしていた。


 そればかりではない。そんな格好に全く相応しくない日本刀を肩に当てて抱えて座っている。コスプレでもしているのだろうか?確か写真部はこの学校にも有ったと思うが、コスプレをするような部活では無かったと思う。ならば剣道部か?剣道着も着ていなければ、防具一式を傍らに置くでもなく刀を持っている?


 何でそんな物騒な物を持つのだろうか?


 止せば良いのに僕はわざわざ彼の傍に寄って、刀を所持する理由を聞き出そうと考えた。そんな経緯で僕は少年に声を掛けたのである。


 彼はとても面食らった表情を浮かべながら僕の顔を見上げ、一言だけポツリと呟いた。


 「…君はこれが見えるの?」

 “意外だ”なと驚いた表情を浮かべると同時に、“可哀想な奴だ”という眼差しを僕に向ける。


 「そんな物を持ってると危なくないかな?って…僕は聞いているんだけどな。」

  愚問だ…と我ながら思う。話している相手が刀で相手に斬り掛かるような危険人物だったら、手にした刀を一気に抜いて僕に切り掛かってくるかも知れない。僕は関わってはいけない人間に対して身の危険を感じつつも、興味本位で語り掛けてみた。


 「危ないよ…これを持っていても、いなくてもね。」

 彼の質問を打ち消すように、春の風が桜の枝を揺らす。枝がザワザワと音を立てて桜の花弁が舞い落ちる。


 それが僕と彼が初めて出会った日の出来事だった。

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