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我、異世界ニ到達ス

今俺は見ず知らずの草原に呆然と立っている。周りを見渡しても人口物など見つからず、視界に写るのはやけに青い雲一つない空と、永遠に続いているのではないかと思うほどの広大な草原だけ。


「まさかこれはよくある異世界召喚パターンなのか…?」


仁は今にも消え入りそうな声で呟いていた。






國山仁はどこにでもいそうなごく普通の学生である。別段誇れるような特技もないし、容姿に恵まれているわけでもない。いつも学校が終了のチャイムを鳴らすと校門を出て、どこも寄り道もせず真っ直ぐ自宅に帰り、自分の趣味に耽る。それが仁の日常だった。


そしていつもと同じなんの変哲もなく学校から帰宅し、自分の部屋のパソコンのスイッチを入れた。

パソコンの電源が入り作動すると、今はまっているゲームを起動させた。


仁が今はまっているゲームは第二次世界大戦をモチーフにしたオンラインゲームだ。それぞれ自分が気に入った軍隊を選択し、第二次世界大戦の戦場を駆け巡るゲームである。

主な軍隊として枢軸国側のドイツ、イタリア、日本、連合国側としてアメリカ、イギリス、フランス、ロシアなど多岐に渡っている。

さらにこのゲームの一番の特徴が銃弾、砲弾が無制限なことだ。

弾数を気にしないで撃てるので細かいことに気を使わなく、それに最近ネトゲでの知名度をグッと上げている。そして今が全盛期だ。


(よし、昨日は三八を使いまくったから久しぶりに四四式騎兵銃を使ってみるか。)


今は日本軍を選択している。自国でもあるし何より他の兵より動きが素早いからだ。


(えっと、まず四四式だから6.5ミリ弾をもっていかなくちゃな。)


実包を選ぼうとクイックした時

眺めていた画面が止まり、パソコンが真っ黒に強制終了をしたかと思えば薄気味悪い青白い光を強烈に放ち始めたのだ。


「おいおい、勘弁してくれよ。どうなってんだ?」


仁はすこし不機嫌気味に悪態をついていた。無理もない。仁にとって自分の人生でNo.3に入るくらいの貴重で大事な趣味の時間をゆっくり堪能している時にこの様だ。


(しかもなんでパソコンから青白い光がでているんだ?こんな稀少な例聞いたことないぞ)


パソコンの未知なる動きに若干戸惑いつつも、仁はパソコンを再起動させようと電源スイッチを連打していた。しかし努力は一向に実らす相変わらず画面からは青白い光がでている…が突如閃光が爆発したかのように、勢いよく光りだした。






そして今に戻る。


(これはまさかの異世界トリップ!? でもよくあるパターンだと勇者として呼ばれたり、神様からチート能力を貰ったりして俺無双!なんてことが主流だけど…っ。)


召喚されるのなら必ず理由が存在する。何も目的がなく召喚されるのは稀少だ。勇者として世界を救ってもらうとか、使い魔にするためだとかありきたりの理由があるはずなのに・・


「誰もいないし周りが草しか生えてない丘陵地帯だし。何すればいいのだろう。」


少し呆れ返ってしまったが気持ちの矛先を変えてみることにした。まずは能力があるかどうか確認だ。

異世界召喚においてベタであり、とても重要なイベントである。


(よしとりあえずアレだな・・王道剣と魔法のファンタジー世界を予想して、強大な魔法が使えるようになっているかもしれん。)


「とりあえずどうやったら魔法をだせるんだ?こうかな・・」


手を前に突き出し、頭の中で祈ってみる。


「さあ出ろ!火!フャイヤー!雷!・・・出ろ出ろさあ出―ろ。早くしろ!掌からはやくでろ!」


予想した期待が外れ半ばやけくそに叫んでみるが一向に変化なし。


「やばい、もしかして能力0でここに来ちゃったとか・・」


だとしたらと思い、仁の背中に冷や汗がたれた。せっかく異世界に来れたのに何も能力がなければ意味がない。そもそも能力がなければ獰猛な獣に襲われても十分に対応できないだろう。


(つってもこの世界に魔法があるかどうかも怪しいし…なんか考えてきたら下らなくなってきた。)


無気力になった仁はその場にゴロンと横になり、雲ひとつない青空には鳥らしき生き物が群れで飛んでいる。


「そういや、あのパソコンの青白い光り。何だったんだろう。」


確かゲームを始めようとしていた時だった。三八から四四式に変えようと迷っていた時だっけ。そういや今日ゲームしてないじゃん。せっかくペリリュー戦調子よかったからやりたいのに。


「どうせなら四四式でも持って異世界行きたかったな。」


薄い雲を見つけながらをボソッと呟いた時、


「ガタッ」


すぐ横で物が落ちる音がした。


「!?」


思わず勢いよく飛び上がり、音がした方から距離をとった。われながらの反射神経に感心しつつ、周りに武器になるような物がないか探した。


「ってあれ?これって…」


片手に木の棒を持ちつつ近寄っていくと、音の正体の全貌が現れた。


そこの草むらには四四式騎兵銃が落ちていた。







四四式騎兵銃は大日本帝国陸軍発のボルトアクション式騎兵銃である。馬上での戦闘をも視野に入れ三八と並ぶ扱いやすい銃として有名である。


「なんでこんなところに四四式が…?まさか俺のチート能力は…?」


さっきの感覚を思い出し、次は軽機関銃を出そうと頭の中で浮かばせてみた。

すると要求通り足元に九六式軽機関銃が出現した。


「これが本物か…」


人生初の本物の銃火器を触り興奮する仁であった。






とりあえず色々試してみたがどうやらこのチート能力はあのゲームの影響を受けてるらしい。

拳銃から小銃、手榴弾、さらには軍用バイク、軍用車まで多岐に渡る。しかも弾や燃料が無限であるから心配は無用だ。

だか戦車や航空機はさすがに出すことができなかった。多人数で動かす物になるとダメになるものが多いらしい。


周辺武器の確認も終わり仁は草原の周辺を探索することに決めた。武器を持つことができたので安心したのもあるだろう。


「まあ、その前に試し撃ちからだな。」


まず手元に残した四四式騎兵銃を手に取ってみる。

銃身部に付着している四四式特有の折り畳み銃剣を動かしボルトを上げ、遊底を下げたところに6.5mmの普通実包を差し込む、金属音独特の音がしたのを確認し、遊底を閉じた。これで一発目発射の準備が完了した。ボルトを戻し、遠方の木に向かって照準を定め引き金を引いた。


パァーン


空気中に破裂音が響き草原中に響き渡った。狙い場所の木が揺れたのを見て、肩にくる振動に耐えながらも、仁は続けてボルトを動かし二発目を発射した。


「次は手榴弾辺りにするか。」


仁は手から九七式手榴弾を出した。


まず手榴弾の先端に取り付けられている安全ピンを抜き、石に信管頭部を勢いよく叩きつけ、仁は立投の体勢で、勢いをつけて投げた。立投は投げ方のなかでも一番命中率の高さを誇る。故にまた立投は身体が目立つこともあり、敵の銃にロックオンされたり自分の位置が知られてしまう、いわば両義性をもつ投げ方なのだ。


仁が投げた手榴弾は弧を描いて飛び、数十メートル離れた地点で爆発をおこした。


「さすが手榴弾。火力が違う。」


爆発地点が砂ぼこりで曇り、轟音を鳴り響かせ地面が揺れているような錯覚を覚えた手榴弾の威力に、ごく端的な感想をボソッと呟いていた。念のため爆風や破片を考慮して体全体は地面に伏せている。

その他に膝投、伏投もやってみた。チート補正がかかっているのか手榴弾の数は使っても使っても一向に減らない。


「ん?って何だあれは」


仁が異変に気付いたのは20発ぐらい投げ終えた時だった。前方数分メートル先の地面が突如盛り上がりを見せたと思ったら、人間とは思えないほどの甲高い耳障りな声と共に異変の原因の正体が現れた。


一言でいえば気持ち悪い生き物だった。全長は10メートル程で、全身白褐色のぶよぶよの皮で覆われてり、口は人間を丸のみにするのに十分なほどの大きさで、歯は小さなギザギザした歯が無数に剥き出しており、とてもじゃないが、友好的な目でみることができない。どう見てもモンスターパニック系の映画に出てくる怪物だ。


「なんじゃありゃ!?」


手榴弾を投げまくって地中に刺激を与えてしまったのが原因なのか否、かなり虫の居所が悪そうである。


巨大な地中芋虫は仁がいる方向に顔らしきものを向け、音量オーバーのキーキー声を発すると仁のいる場所へ伸縮運動をし、ゆっくりとこっちに近づいてきた。


「うおおぉぉ」


たまったもんじゃない、人間以上の大きさの芋虫モドキが真っ正面から来れば少なからず精神的なショックを受けるだろう。虫嫌いの人なら失神しかねない構図である。とっさにさっきまで投げてた手榴弾を取り出したが、ふと地べたに置いてある軽機関銃と目があった。


(そーいやこいつ出したままだったな。せっかく的があるし使ってみるか。)


仁は素早く手に持っていた手榴弾をしまい、傍らの九六式軽機関銃に手をつけた。

この機関銃は太平洋戦争時、日本軍が主流とした機銃だ。十一年式、三八式と同じ6.5mm弾を使用する。


すばやく体を伏せ後脚を立て姿勢を安定にし、上から弾倉を差し込み左側の目視照準を前方直進している芋虫に合わせる。芋虫の方は相変わらず伸縮運動を繰り返し、大きな口を開閉しながらこっちに向かっている。

後距離幅10メートルを機に仁は引き金を引いた。


銃口から乾いた重低音を鳴り響き、機銃から高速に6.5mm弾が飛び出し、芋虫の分厚い皮膚を、肉を、内臓をひきちぎり、ミンチにしていった。着弾箇所からは大量の濃緑色をした液体が噴水のように吹き出していき、勢いよく飛び出した液体は、周りを緑色の大地に染め上げていった。機銃による追撃は止まらず、体という体に銃弾を浴びせ、原型を残さず得体の知れない臓物に仕立てあげた。


「ふぅ 」


芋虫が完全に死んだのがわかったと同時に仁は大きな溜め息をついた。辺りから生臭さと硝煙の匂いが立ち込め、多少気分が悪くなったが頬を叩きそこは耐えた。


「これからもこういうのに慣れなきゃいけないよなぁ、たたでさえ異世界にいるんだから」


これからの先の未来を心配をする仁だった。








芋虫との闘いの後、場所を移り徒歩で3時間ぐらいだろうか、草原から明らかに道のようなものが曲線に延びていた。これは明らかに人と物が往き来している証拠であり、異世界へ一人投げ出されている仁にとってとてもありがたい朗報だった。


「やった!」


思わぬ収穫に一人でハイテンション気分になる仁。しかし喜びは後ろから声聞き覚えのない涼やかな声でかき消された。


「ねえあなた、ラフィア王国認定の禁断侵入区域で何してんの?」


「はあ?」


仁が振り返るとが一人の女性、いや、少女を先頭に数人の騎士やら魔術師みたいな格好をした集団に囲まれていた。


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