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星座と旅人
今夜は星が綺麗だ。
宝石よりも星が欲しいと思う。
星座やそれにまつわる話は、生憎旅の知識に消えてしまったが。
傍らに腰掛けた吟遊詩人が、ひとつの星座を指し示す。
そしてひとつ、話を紡いでくれた。
少し興味を持った者なら誰もが知るほどの、有名な話だ。
しかし旅人の食いつきは半端ではなかった。
宝物を見付けた少年のように、続きをせがむ。
話は急展開を向かえ、最終的には陰惨な終わり方になる。
そうして、その星座が空にできたのだ、と吟遊詩人が締め括った。
終わりも悲恋も、もっと言えば話の筋すらどうでもいい。
死んでも尚、旅をする気満々である。
死後の世界でも旅ができるのかと呟いた旅人に、吟遊詩人はそっと優しい微笑みを返した。