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黄金色の季節
夕暮れは、季節ごとに違った表情を見せる。
秋の夕暮れは、優しい。
夏が置き忘れた、モコモコした真っ白の雲に、黄金色の光が当たる。
たくさんの植物がその色を真似て、実りの秋を迎える。
頭を垂れた稲、起立しながらも重そうな小麦。嬉しい変化だ。
鳥の綿毛みたいになったススキ。子供たちが手折って行くのを見ると、心がほっこりする。
銀杏の周囲には、黄色い葉が敷き詰められる。小動物が埋もれた果実を探して、ばさばさと撒き散らす。
山に生えるあけびは、旅人の腹を満たす。つるは生活用品に加工され、茎は生薬となるので、山間部に住む人々にとっても貴重な資源だ。
黄金色の季節ほど、旅人に優しい季節はない。