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守護者
随分昔に滅ぼされたらしい集落に着いた。
崩れた石材は、苔むしている。
集落の入口と思しき所には、見上げるほどの土くれ。
普通に考えれば不自然だが、ここに限っては自然である。
曰く、街を護るために魔法使いがゴーレムとなったらしい。
しかしそんな街も、結局は内戦で滅びてしまったと言うのだから、何とも愚かだ。
ゴーレムは街を護るため、誰ひとり出そうとも入れようともしなかった。
他の街や国からの援軍すら、立ち入らせなかった。
街が滅びても、大分長くそうしていたのだとか。
ゴーレムが護った街は廃墟になり、ゴーレムは土に還り、後には瓦礫しか残っていない。
こんな皮肉な結末を誰かが知っていたら、未来は変わっていたのだろうか。
遠き過去に思いを馳せながら、旅人はそっと街に入って行った。