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双子の兄妹
雨宿りをしていた民家の主が、中へ招き入れてくれた。
主は、旅人に暖炉を与え、温かいココアもいれてくれると言う。
旅を始めた当初は慣れなかったが、今はもうすっかり厚意に甘え、旅の話を対価に出すことに慣れた。
彼らは、旅のために生きて来た旅人と違い、旅をする知識を持たない。
だからこそこの、一見等価交換にならない交渉が、成り立つのだ。
主には双子の兄妹がいた。
小さなマグカップで温かいココアを飲む兄妹は、旅人の話に宝石のような瞳を向ける。
その対象は微妙に違っていた。
兄の方は冒険の話に。
妹の方は旅人自身に。
男で良かったと思いつつ、双子が寝付くまで、旅人はたくさんの話を聞かせた。