翼が死んだ日
雨が降る街角に、白い羽根が落ちていた。
水溜まりに浮き、雨に打たれている。
一枚だけなら旅人も看過したが、鳥の物だとしても、不自然な数だ。
怪我をして動けなくなった鳥は、そのまま死んでいく運命にある。
考えるより先に、足はより多くの羽根が落ちている方へ向かう。
そこにいたのは、ボロ布のように破れた翼の人。
天使と言いたい所だが、その人には失礼ながら神々しさはない。
世界のどこかに翼を持つ、有翼人がいると聞いていたから、多分それだろう。
灰色の空を見上げ、何事か呟いている。
旅人がもし旅をすることを取り上げられたら、この有翼人のように狂ってしまうだろう。
そう思ったが、考えを改めた。
言葉は分からないのに、有翼人は死んだ翼に感謝していた。
不格好になって、血もにじんでいて、多分痛みもあるだろうに。
言葉も通じないこの土地で生きるのは、並大抵の苦労ではないだろうに。
旅が出来なくなったら、ただただ途方に暮れそうな旅人とは全く違う。
旅は道連れ、世は情け。
立ち止まるどころか見向きもしない人々の中、敬意を篭めた瞳で手を差し延べた旅人を、有翼人はどんな顔で迎えたのだろうか。