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海辺のバザー
照り付ける太陽が、肌を、砂を、海を焼く。
活気に溢れた海辺では、バザーが行われている。
小麦色に焼けた、体格の良い男性やスレンダーな水着美女が、商品をアピールしながら、元気と笑顔を振り撒く。
声に誘われて、旅人も露店を覗いてみた。
アクセサリーも果物も、海や夏を象徴した物が中心だ。
その中の一つに目が奪われ、旅人は手に取っていいかと店員に問う。
店員は快く許してくれた。
海色した小さな貝のオルゴール。
壊れないよう、そっとゼンマイを巻く。
聞こえてくるのは、遠い遠い海の向こうの歌。
食料以外の荷物を増やすことは、旅人にとって死活問題だ。
けれど、重さのない物なら、いくらでも持ち歩ける。
オルゴールを丁寧に戻した旅人は、異国の歌を口ずさみながら去って行った。