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降り立って
旅人の前にふうわりと、輝く船が降り立つ。
青白い光を放ち、光の粉を撒き散らし、それはそれは幻想的で、それでいて力強さも感じる、夢のような船だった。
首が痛くなるほど見上げる甲板から、光の帯が音もなく伸びる。
旅人の足元に到達すると、今度は黒いローブを纏った人物が降りて来る。何故か男だと思った。
船も帯も光り輝いているのに、その男の周囲だけが暗い。光を呑み込んでいるかのよう。
不思議なこともあるもんだと眺めていると、ローブの男が恭しく礼をした。
釣られて旅人も礼をする。
男が笑った、気がした。
旅人の胸が期待に高鳴る。
もしこんな船で空の旅をしたら、一生の宝物になるだろう。
絶対にできないと思っていた空の旅が、叶うかも知れない。
少年のように瞳を輝かせる旅人に、男がまた笑った。