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夜の草原
日の暮れた草原は、暗い海になる。
葉擦れの音が、まるで潮騒のよう。
空との境も曖昧で、不思議な気分だ。
優しい風に誘われて、旅人はまた歩き出す。
風の吹くままに、気の向くままに。
時折空を眺めては、必死で煌めく星々に癒される。
星座のことは分からないけど、どうやら今夜は当たりの日だったらしく。
目立たなかった小さな星が、微かな白い線を描きながら、漆黒の中へ溶けていく。
それを皮切りに、星達が次々に闇を切り裂く。
一点を目指して。
旅人は星を追うことにした。
夜の旅には危険が多いけれど、その分昼間とは別の魅力に溢れているから。