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少女の夢
余程ひどいなじられ方をされたのだろう。
少年の涙は止まらなかった。
捨て置くのも気が引けるから、旅人は傍にいた。
時々声をかけてやることしかできない。
草原の向こうから、少女が誰かの名を呼びながら駆けてくる。
少年が小さく反応したから、それが少年の名前なのだろう。
少女は少年を見付けると、開口一番にこう言った。
キミが見てるのは、わたしの夢なの。
少年が涙に濡れた顔を拭く。
そこには、幼くして守るべき者を得た、騎士に似た強い決意があった。
去って行く少年少女に、旅人はひとつだけ約束させる。
流れ星へと託してはいけない。
星は決して夢を叶えてはくれないし、情熱を傾けて見ている夢を、そんなに簡単に他人に委ねるべきではない、と。