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草原の騎士
草原の遥か彼方から、剣を掲げながら馬で駆けて来る騎士が見えた。
その顔は喜びに満ちていると、旅人は思った。
しかし、近くまで来ると、その考えは大きく覆される。
騎士は、泣いていた。
勇ましい姿ばかり見ていたので、意外ではあったのだけれど、心の中ですとんと何かが落ちる。
騎士は国を愛すると聞く。
あの騎士は、勝ったことよりも愛しい国へ帰れることが、何よりも嬉しいのだろう。
笑って帰りたいから、今泣いているのだろう。
今までは全く違う存在だと思っていたが、今はよく似ていると思う。
愛する対象が違うだけで、あの騎士と旅人の愛は同じくらい強いものだから。