65. 隊長
「冒険者ー!!早く来てくれ!!」
一応ずっと走ってるんだけど、全力で。
リトルドラゴンに家族が殺されそうなのか?
鬼気迫るような顔をしているな。
「はぁ、はぁ、で、何があった?」
「あそこの船を救ってくれ!!」
おじさんが指を指した方向を見ると、リトルドラゴンが船の上にいた。
なるほど。リトルドラゴンが船に乗ったもんだから、船が壊れるのが心配なんだな。
おそらく、おじさんの船だろう。
「お客さん、急いで適当な攻撃をしたらリトルドラゴンが興奮して船を壊すかも知れない。落ち着くんだ。」
「あ?ああ、そうだな。」
「一撃で仕留めた方がいいはずだ。」
「そうだな、焦ってしまってな。」
「大丈夫だ。任せろ。」
リトルドラゴンは確か氷魔法が使えるんだよな。
まあ、意識してたら大丈夫だろ。
リトルドラゴンって本当に上級でもいるのか?
俺が戦うリトルドラゴンは全員超級なんだけど。
全員って言っても2匹しか会ったことないな。
一撃で仕留めるって言ってしまった。
さっきの超級の魔物も一撃だったから調子に乗ってしまったが、超級の中でも強さに差はある。
このリトルドラゴンが超級の中で下の方ならいいんだけど。
一撃って事は、不意を突く必要があるよな。
う〜ん...海の中からなら気づかれずに近づけるか。
バレて氷魔法を使ってきたら窒息死するけど、
そんな危険性は考えてはいけない。
考えたら怖くなるからだ。
...窒息死って、目茶苦茶怖いな。
どんどん死に近づく感じだろうか。
海の中は身体強化の力も発揮しにくいだろうしな。
いや、そんな事ないのか?
レオはリトルドラゴンから離れる。
遠くから潜水した方がいいよな。
バレたらおじさんの船は絶体絶命だ。
「はあっ!」
チャポンッ
前に分かったことだが、身体強化をしたら長く息を止められるようになる。
身体強化は意外と万能なんだ。
氷魔法の方が使い勝手いいと思うけど。
船の下まで泳ぐ。
うわ〜、海の中から見たら怖いな。
いつも通りに動かない体で近づいたからだろうか。
俺は泳いでいる時に作戦を考えた。
まず、石を船の左方向に投げるんだ。
そしたら、おそらくリトルドラゴンは左方向の海面に氷を作って閉じ込めようとするはずだ。
だから俺は石を投げた瞬間に右方向から出て、リトルドラゴンをぶん殴る。
「ぶぐっ。」
息を止めてるのも、そろそろ限界だ。
早く始めよう。
ビュン
船の左側の海面に向かって石を投げる。
バシャッ
「クァッ!!」
カチカチカチカチカチ
石に驚いたリトルドラゴンは氷魔法を広範囲の海面全体に放つ。
ドンッ
!?
ここにも氷魔法使ったのかよ。
全体に広がってるな。
「ぶふっ!」
ヤバい。
ドンッ
硬っ!
壊さないと死ぬ。
ドンッドンドンドドドドドドドドドッ!!
壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ。
「あ゛あ゛ああぁぁ〜!!!」
バキッ
氷を突き破った。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」
「グァーー!!!」
こっちを見たな。
左側の海面を気にしていたのか。
ドンドン聞こえてなかったのか?
結構殴ってたのに。
ダンッ
リトルドラゴンに飛びかかる。
「クァ!!」
リトルドラゴンは氷の盾を張る。
バキッ
グチャ
リトルドラゴンの頭を貫いた。
「はぁ、はぁ、ふー。」
さっきの氷、海面のやつよりも硬くなかったな。
海の中にいたから俺が弱くなっていたのか。
なるべく水中には入らないようにしよう。
あっ。船まで凍っているじゃん。
まあ、溶けるよな。晴れてるし。
ん?
左側の海が盛り上がるのを感じた。
なんだ?
バシャンッ!!
「ガーー!!!!」
船のすぐ左側から、リトルドラゴンよりデカい魚が口を開けて、飛びついてきた。
「!?」
ズバッ
デカい魚が飛びついた瞬間、頭の部分が切断された。
「!?」
誰かが斬ったな。
レオは船の右側を見ると、氷の上に誰かが剣を持って立っていた。
「...隊長!」
「ん?おお、少年じゃないか。」
隊長が斬ったのか。
ということは、この魚を追いかけてきたのか?
何逃がしてんだよ。
隊長が遅れていたら船ごと食われていた。
というか隊長、火属性魔法で倒してたら追いつく必要なかったんじゃないか?
この魚には効かなかったのか、ずっと水中にいたのか知らないけど。
隊長なら、なんとか出来た気がする。
それをこんな...もしかして、カッコよく倒すためにギリギリまで粘っていたのか?
「なんか...嫌そうな顔をしているな。俺は再会できて嬉しいぞ、レオ。名前も覚えている。」
「俺も嬉しいよ。」
また会えた事を喜ぶべきだな。
久々に会って嫌な気分になるなんて、凄く酷い行為だ。
「おーい!!冒険者!!ありがとうな!」
困っていたおじさんだ。
今は満面の笑みをこぼしている。
もうちょっと褒めてもらおうかな。
「すまない。船が凍ってしまった。」
「いやいや、全然いいんだよ!ありがとな!」
そう言うと思っていた。水になって乾くからな。
迷惑な訳がない。
それについて怒ったら、俺もムカついてしまうだろう。
「正直、冒険者が子供だった時は終わったと思ったよ。」
まあ、無理もない。
大人の方がデカくて強そうだからな。
俺もデカくなりたい。
「じゃあ、ありがとう!!!」
おじさんに見送られ、俺は帰る。
隣にはデカい魚の体と目を持っている隊長がいる。
魚の目がデカくて怖い。
「隊長、体まで持ってきて何するつもりだ?」
「ソラと呼んでくれ。体は焼いたら美味しいんだ。」
どうやら、夜にご馳走してくれるらしい。
ちなみに俺達は歩いて帰っている。
最低でも2日はかかるだろう。
そして黙々と歩き、夜になった。
ボーッ
魚を焼いている。
いや、燃やしている。
手から炎を出して、魚に当てているのだ。
本当に便利だよな、属性魔法。
水は飲めるし、風は上手いことやったら飛べるし、
土は即席の家とか作れそうだし。
羨ましく思ってしまう。
「食べてみてくれ。」
ん?毒見?
「おう。」
ガブッ
美味い。
魚だ。
普通に魚だ。
「俺は強い奴が好きなんだ。...いや、弱い奴が好き
じゃないんだ。」
唐突にどうしたんだ?
...俺も強い奴は好きだな。
「レオは強かった。だから気に入っている。」
「そりゃあどうも。」
弱い奴が好きじゃないのか。
まあ。冒険者していると、弱い奴は死ぬからな。
味方が弱いと自分まで危ないから、好きじゃなくなる気持ちも分かる気がする。
俺は弱い人とパーティーを組んだことがないから実感は出来ないが、想像はつく。
「オークキングとの戦いは見事だったぞ。都市級冒険者と言ってもいいはずだ。」
「そうか?」
「ああ。しかもまだ幼い。大人になったら凄い高みへ行けるぞ。」
嬉しいことを言うね、あんちゃん。
順調に成長しているからな、このまま成長する事を願うばかりだ。
「ずっと思っていたが、剣とか使わないんだな。魔法も使ってないし。」
「ああ。身体強化魔法は使っているが、それ以外は出来ないんだ。」
「身体強化魔法だけでその強さなのか...凄いな。」
「冷めないうちに食べようぜ。」
冷めても温められると思うけど。
俺は眠いんだ。
明日の朝、歩きながら話したい。
「そうだな。」
その日は満足するまで食べて、寝た。
もちろん、全部は食べられなかった。




