44. 先生!?
「次は君よ、何をしているの?」
「ああ...おう。」
ロイがぼーっとしていた。考え事をしていたな。
「どうだ。」
木には顔が描いてあった。
それも、実に悲しそうな顔で泣いていた。
それはいいのか...
「素晴らしいわ!木が悲しんでいるのね。」
「なぜ、分かったんだ。」
「伝わるのよ、ひしひしと!!いいわ、素晴らしい。 次!」
次は俺だ。
「これで...どうだ。」
「う〜ん。怖い木を表現しているのね。いいわ!この感情のない自然の怖さが表れているわよ!次〜?」
よしっ!褒められた。
と言うことは、いいって事だ。
「これです。」
マイクは木を描いてはいなかった。
隣の女の人の胸を服越しで描いていた。
「...何をしているの?」
「はい。これは胸です。隣の女性にしか目がいかなかったのです。」
隣の女性が引いている。
というか、女性が全員引いている。
「私は木を描いてって言ったわよね?」
「はい。でも頭は胸でいっぱいでした。」
マイクの奴...何でこんなにも真顔なんだ。
日々の疲れで壊れてしまったのか。
「あのね!木を描けって言ったら描くんだよ!!」
「描きたいものを描くのが楽しいんだろ!!!
じゃあ何か?命令した通りに描けってか?
そんなのはその人の見え方、感じ方を無視している!!それは絵じゃない!!!」
「まずは命令したのを描くんだよ!!!」
まずい。皆が引いている。
「まあ、先生。次は描きたいものを描くんだろ?
だから、次に行こうぜ?」
「........なんだと?ガキ、この野郎!!」
なんでだ!?
何だこいつ。
「ふっ!あははははっ。」
ロイが笑い出した。
「あなた達、私の木を見なさい!!」
「チラッ」
先生は自らチラッと言い、絵を見せた。
その絵はとてもリアルに忠実で、光や影をたくさん
描き込んでいた。
いや、光が強いな。
そしてよく見ると光は緑色で、全体的に明るい雰囲気を感じる。
「凄いですね〜。」
「流石、先生よ。」
皆が絶賛している。
「.............いや〜!!!!」
ビリビリ
次の瞬間、先生が自分の絵をバキバキに壊し始めた。
「はぁ、はぁ、はぁ、分かったかしら、これが芸術よ。
この輝きを覚えて帰ってちょうだい。」
意味が分からない。
どういうことだ?
壊れるという事を美学として捉えているのか。
俺はそういうのが好きなんじゃない。
その絵を一目見ただけで分かるものが好きなんだ。
「次の授業よ。自分の思う楽しいもの描いてみましょう。」
楽しいもの...やっぱり何か違う。
俺もマイクと同じだ。
自分の描きたいものを描きたいんだ。
こんなのどうでもいい。
それから俺は真面目に話を聞かず、ぼーっとしていた。
途中、先生とロイが上着を脱いで、絵の具を掛け合って床に転がっていたのは驚いた。
何でそうなったんだろう。
「じゃあ、みんなありがとう〜!楽しかったわ!
これからもよろしくね〜!またね〜って言うと思ったか!!馬鹿野郎どもが!!!いや〜ん!!いや〜ん!」
「おう。」
ロイと先生が握手をする。
何で仲良くなってんだ?
意味が分からなかった。
こうして俺たちはそれぞれの家に帰っていった。
ギィ
「おかえりなさいませ、レオ様。」
「おう。リリは遊ばないのか?」
「はい。掃除をしておりました。」
「そうか。」
俺の絵は独自に進化させる必要があるようだ。
マイクとやっていけば進化するだろう。
俺の絵画人生はまだ始まったばかりなんだ。
焦る必要はない。
「リリは知らない人にお前の胸の絵を描かれたら、どう思う?」
「え...それは少し気持ち悪いですね。」
「まあ、そうだよな。」
マイクは凄いやつだ。
尊敬するよ。
到底俺には出来ない事だ。
「でも!レオ様なら全然いいです。」
「え?」
「あ...」
「「.......」」
変な空気になってしまった。
まあ、それぐらい好かれているのなら良かった。
いつか自分は奴隷だったのか忘れるぐらいに育てよう。
「あの...いいですよ?」
やめろ!俺を誘うんじゃない!
ドーテルちゃんが反応しないようにいい事を考えていたというのに。
「レオ様?」
やめろ!そんな上目遣いをするんじゃない!
というかお前、料理してるから立ってるだろ。
俺、座ってるんだけど。
あいつ白目向いて何してんだ。
「ふっ。ははははは!きもっ!顔がっ!はは!」
「笑わないでください!」
「だって、ふふっ。だってお前、ふっ。それ睨んでるだけだぞ。」
「難しいんですよ!」
その後、夕食を食べて寝た。
先生は結構な時間をかけて教えてくれていたことが分かる。
実は最後らへんとかに絵を描く時のポイントなどを話していた可能性はあったが、俺は何も聞く気がなかった。
でも、これだけの時間で銅貨5枚は安いと思うんだがな。
次の日、超級クエストを受けようと思い、ギルドに行く。
ギィ
今日もギルドは人気だな。
別に朝早くに来たわけではないから人は多くいる。
早くクエストを受けろ。
「うわっ!レオだ!」
「何!?」
「あの、巨人を一撃で倒した!?」
「超級冒険者様か!」
ん?
ほとんど合ってないぞ。
噂が酷い事になっている。
名前を俺も覚えてやりたいが、ちょっと多いな。
気味悪いが、我慢しよう。
「よお、レオ。」
奥にはロイがいた。
上級クエストを見ているようだ。
「やあ、レオ。」
おっ。マイクもいる。
2人パーティーでも組むつもりか?
「お前達、上級クエストを受けるのか?」
「ああ、そのつもりなんだがな。」
ロイが困った顔をしている。
マイクに何かあったのだろうか。
「いや、僕は止めとくよ。怖いし。」
「こんな感じなんだ。上級クエストが怖いんだとよ。」
なるほど、ロイが一緒に上級クエストを受けようと
提案して、それをマイクが断っている状態か。
別に受けたいクエストを受ければいいんじゃないのか?
「マイクは上級クエストを受けたいのか?」
「受けた...受けたくない。勝てる自信がない。」
まあ、勝てないと思うクエストは受けたくないよな。
だって勝てなかったら死ぬしね。
「でもよー、中級クエストで上級の魔物が間違って出てくる可能性とかあるだろ?」
分かったぞ、ロイの言い分が。
ロイはマイクが中級クエストを受けた時に、ロイが上級クエストを受けて超級の魔物が出てきたみたいな事が起こるかもしれないから、上級の魔物も倒せるようになっておけと言うことか。
確かにそうだ。中級クエストに超級の魔物はないと思うが、上級の魔物ぐらいならあるかも知れない。
「悪いがマイク、俺もロイの意見に賛成だ。」
「え〜、レオもかよ。じゃあ、レオもパーティーになってくれ。そしたら安心してクエストを受けられる。
なにせ、『無属性記者』だからな。」
ええ〜。




