間話 アルシア・クイーン
私は生まれながらの天才だ。
王族は一般的な人族より長生きをする代わりに心身の発達が遅い。
だけど私は、そんなの関係ないと言わんばかりに頭が良かった。
私は人間より少し脳の成長速度が遅いだけだった。
体の成長は全然だったが。
もちろん、クイーン家でも天才と称された。
四女でありながら第二女王候補となっていた。
歳の離れた姉たちは家にいなかったが、嫌っているという噂を耳にした。
そんな私にある情報がやってくる。
今まで観察を続けていた村からの攻撃で、兵士が4名死んでしまった。という情報だ。
私は腹を立てた。
なぜなら、死んだ兵士のうち、1人を知っていたからだ。
ただ顔と名前を知っているだけだったが、怒りに震えていた。
いい機会だ、お前は頭が良いから同行しろ。これはいい経験になる。との命令があったので、目隠しなどをされながら同行した。
目隠しなどを外された時は驚いた。
なんと、敵は魔人の集団だったのだ。
我が国の支配下にそんな所があったなんて知らなかった。
魔人達は強かった。
皆が凄い水魔法を操っていた。
おそらく、全員が超級レベルに達していた。
だが、私たちの部隊も精鋭揃い。
特に隊長はルベリア王国を代表する中の一人である、都市級の一線流剣士だった。
しかし、急に強すぎる男の魔人が現れた。
それから戦況が大きく傾いた。
その男は目茶苦茶に速い動きで、我が兵士達を殺していった。
隊長の動きはぎりぎり私にも見えるぐらいの速さだったが、その男は私には全然見えなかった。
正直、勝てないと思った。
私を含め、皆があの男に殺されると肌で感じてしまってからは、腰を抜かして震えていた。
でもなぜか、隊長と相打ちで終わった。
私を守る人はいなくなったのだ。
こんな、場所も分からない所で1人で生き抜ける訳がないと思った。
そう恐怖していると、目の前に魔物が現れた。
あとで知ったが、ドーテルと言うらしい。
死んだ、と思った。
すると、視界の端からレオ様が飛び出してきて助けてくれたのだ。
私は必死だった。
黒髪ではあるものの、見るからに兵士ではなく、すぐに村の人だと分かった。
村の魔人を殺したのに、助けてくれたのだ。
殺される、死にたくないと真っ白な頭で必死に考え、
あんまり使ってこなかった敬語を使い、丁寧に、無抵抗である事を示した。
そしたら何と、私の国まで連れて行ってくれると言うのだ。
私はレオ様の仲間や家族を殺したのにである。
初めは頑張ってレオ様のペースで歩けるように努力していたけど、普段と違う環境にどうしても疲れ、遅くなってしまった。
初め、それで不機嫌になっていたので、置いていかれると思った。
けど、レオ様はペースを私に合わせてくれた。
私だったら、こんな事はできない。
家族が殺されたら、関係者は例外なく攻撃していただろう。
助けるなんて以ての外だ。
レオ様は本当に命の恩人だ。
森では本当に苦労した。
魔物が夜に襲ってくるからだ。
その魔物は強くて、自分自身すら十分に守ることが出来なかった。
レオ様は初め、魔物に集中して戦っていたが、蜘蛛の魔物と戦ってからはなぜか、私を守ってくれるようになった。
私も協力しようと頑張ったけど、ほとんど役に立てずレオ様に助けてもらってばかりだった。
すぐに魔法が出せなくなる自分が嫌になった。
森では毎日、夜に魔物が襲ってくるため、夜に寝れなくなってしまった。
朝に寝ても疲れが取れず、日々、魔物と戦ってボロボロになっているレオ様を見ていた。
私は戦ってもいないのに昼夜逆転の生活に疲れていて本当に申し訳がなかった。
とにかく、強くなってレオ様の役に立ちたいと思った。
それからカナンに着いた。
カナンに着く少し前からレオ様は元気になっていた。
これが普段のレオ様だと思うと、私のしたことがどれだけレオ様を苦しめていたのか分かる。
カナンで家に隠れている時、レオ様は私をよく褒めてくれた。
主に料理についてだ。
私はレオ様に許された気がして、少し安心した。
脱出作戦では、門番を何とか倒して脱出のきっかけを作れた。
レオ様の役に立てたと思い、凄く嬉しかった。
その後、レオ様は私を褒めてくれた。
でも、その時のレオ様もボロボロだった。
私はまた、レオ様に危険なことをさせてしまったのだ。
もっと強くなりたいと思った。
日々、魔力調整の練習をしたが、少しずつしか成長しなかった。
その点、レオ様は凄かった。
急速に強くなっていったのだ。
始めから凄く強かったのに、どんどん成長していたのだ。
私は全然役に立てていない事に気づいていた。
レオ様だけだったら、森でもカナンでも怪我せずいられたのだ。
その後、名前の長い国に着いた。
確か...ガルマカルマチルバキアセルスンブルグだったっけ?
その国は港があり、間大陸まで行けるというのだ。
私は嫌だった。
間大陸へ行ったらすぐにルベリア王国に着いてしまう。
そしたら、レオ様とお別れになってしまう。
私は村の人を死に追いやったくせにレオ様を好きになってしまったのだ。
命がけで守ってくれた姿をカッコいいと思ってしまったのだ。
とにかく長く滞在したいと思い、レオ様を引き止めた。
その国にはギルドがあったが、レオ様にバレないように頑張った。
冒険者になったら、レオ様は強いからすぐに運賃が集まってしまうと思ったのだ。
働く所がリンゴ屋に決まった時は嬉しかった。
これで長い時間いられるからだ。
リンゴ屋でレオ様は呼び込みをしたいと言っていた。
私は呼び込みをする場所からギルドが見えると思い、私が呼び込みをした。
働き終わった後、レオ様が私に今までの行動について謝った。
レオ様が何か悪い事をしたのだろうか。
何もしていない。
それどころか、何度も助けてくれた。
レオ様は何も悪くない。
悪いのは私の方だ。
私はルベリア王国に帰ったら、レオ様を全力で守れるように努力しようと思った。
船にいる時、村へ攻撃する事になった経緯について考えていた。
隊長が凄く張り切っていたのを思い出した。
あれは、隊長の恨み晴らしのためのものだったのだ。
兵士が4人死んだ事は、あんな精鋭部隊を作るほどの理由にはならないはずだ。
私はルベリア王国に着いたら、調査しようと思った。
間大陸に着いた時からレオ様からの視線を感じた。
ドレスの中を見ようとしていたのだ。
その時、私でもレオ様と恋仲になってもいいと分かって嬉しかった。
水浴びの時は全然、興味なさそうだったのに。
体の作りには興味があったようだけど。
ルベリア王国に着いた時、レオ様はお母様を恨んでいる素振りを全く感じさせず、普段通りだった。
本当にすごいと思った。
私なんかより、心身ともに、天才だと思った。
私はレオ様を尊敬している。
とても感謝している。
レオ様は冒険者になりたいらしい。
私は守られなくてもいいように、レオ様と一緒に冒険者になれるように頑張ろうと思った。
そう思った時にはもう、
王様にはなりたくなくなっていた。
「少数の」方々、読んでくれてありがとうございます。
平日は投稿が少なくてごめんなさい。




