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外に出ると日差しは強いものの、視界の端まで伸びた入道雲のせいか、暑さは不思議と感じなかった。よくわからない寒気も自然と和らいでいた。
家に篭った邪気を封印するかの如く鍵を念入りに閉めると、少し前にある背中に追いつく。
「なんか新鮮だね、こうやって普通に歩くの。
いつもはなんか焦ってる感じだったから。」
また彼は健やかに笑う。
言ったことを飲み込めず口籠もると、今自分が部屋着でノーメイクであることに気づく。急に周りの視線が鮮明に感じられて、隅々まで温度が上がっていく感触がする。気まずさを紛らわすために彼の肩を叩きながら「何言ってんの」と言った。今思い返すとあの時の彼の顔はいつもと違ってきたように思う。
田舎だからなのだろう、どこに行くにも時間がかかる。それはコンビニやスーパーだからといって例外ではなく、家から近くのスーパーまでは少なくとも20分はかかる。夏は特に疲れるから、スーパーにいこうなどと思うことはない。スーパーへは軽い坂を乗り越えないといけなかった。この坂は急な坂では決してないが、かなり長く、病人を疲れさすのには十分だった。息が切れ始めた時、やっと頂上が見えてきた。達成感と共に、今後これを三回も続けなくてはいけないと思うと気が滅入ってくる。頂上に近づいていくと同時に左手からボヤけた灯りが漏れ出してくる。はっと自分の鈍感さに気づく。そう、今日は祭りの日。風邪でも行けるようにはからってくれたのだろう。思わず優しさに笑みが溢れてしまった。「ちょっとだけ寄っていく?」期待していた言葉をかけられ、「うん」と、笑顔と興奮を抑えながら食い気味に答えた。




