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1989  作者: 鈴木大志
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身震いしながらドアの方に向かう。きっとこの時から起こることはわかってたけど、そのことを覆う言い訳を向かう間に考えてた。

ドアを開けようとすると、ドアが開く。

酸っぱい汗の混じった清涼剤の匂いがフッと香る。

濁りのない笑顔を瞼の裏で感じながら、直視しよとしたが、思うように首が動かなかった。

「何で来たの?」

「心配だったから。一人にはできないでしょ?」

全くこの男は、こんな言葉を意図も容易く口に出す。

まぁ私もそんな彼を愛したんだからお互い様か。

「もう何言ってんの、病気になったら冗談じゃすまないでしょ。大会もあるんでしょ?」

「大丈夫、鍛えてますから」

「何それ…マスクしてね」

「やったぁ」

腑抜けた声が静けさを破る。こんなうるさい声でも、静かすぎるよりはましだ。むしろ、こっちの方が耳触りが良い。

「何か、買ってこようか」

「えっ、買ってきてないの?こうゆうのって、何か買ってるのが醍醐味なんじゃ…」

「えっ。ご、ごめん、買おうと思ったんだけど、何かいるかわからなくて…」

「本当?」

「う、うん」

一昨日あったはずなのに、なんだか一ヶ月も待ち侘びたように、一秒一秒が楽しい。気だるさも抜けてきたような気もする。なんだか恥ずかしいけど、好きなんだと改めて気づく。

「じゃあさ、一緒に買いにいこうよ。」

「えっ?」

「だからさ、一緒に買いに行こ。」

「いや、私は風邪なんだよ、しんどいし、疲れてるし……わかった。行くよ。」

また踊らされてる

「ちょっと待ってて…鍵取ってくる」

「先出とくね。」

「うん、ありがとう。」

そうやって踵を返したものの、溢れ出る笑みを堪えきれなく1人で笑った。

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