(2)
身震いしながらドアの方に向かう。きっとこの時から起こることはわかってたけど、そのことを覆う言い訳を向かう間に考えてた。
ドアを開けようとすると、ドアが開く。
酸っぱい汗の混じった清涼剤の匂いがフッと香る。
濁りのない笑顔を瞼の裏で感じながら、直視しよとしたが、思うように首が動かなかった。
「何で来たの?」
「心配だったから。一人にはできないでしょ?」
全くこの男は、こんな言葉を意図も容易く口に出す。
まぁ私もそんな彼を愛したんだからお互い様か。
「もう何言ってんの、病気になったら冗談じゃすまないでしょ。大会もあるんでしょ?」
「大丈夫、鍛えてますから」
「何それ…マスクしてね」
「やったぁ」
腑抜けた声が静けさを破る。こんなうるさい声でも、静かすぎるよりはましだ。むしろ、こっちの方が耳触りが良い。
「何か、買ってこようか」
「えっ、買ってきてないの?こうゆうのって、何か買ってるのが醍醐味なんじゃ…」
「えっ。ご、ごめん、買おうと思ったんだけど、何かいるかわからなくて…」
「本当?」
「う、うん」
一昨日あったはずなのに、なんだか一ヶ月も待ち侘びたように、一秒一秒が楽しい。気だるさも抜けてきたような気もする。なんだか恥ずかしいけど、好きなんだと改めて気づく。
「じゃあさ、一緒に買いにいこうよ。」
「えっ?」
「だからさ、一緒に買いに行こ。」
「いや、私は風邪なんだよ、しんどいし、疲れてるし……わかった。行くよ。」
また踊らされてる
「ちょっと待ってて…鍵取ってくる」
「先出とくね。」
「うん、ありがとう。」
そうやって踵を返したものの、溢れ出る笑みを堪えきれなく1人で笑った。




