回想-鉱山都市【ドワーフ】
よろしくお願いいたします。
鉱山都市での出来事を思い出す
一面の新雪に包まれた広場と遠くに見える夕日
ユッタと共に家族になるとお互いに誓い合った日のこと
テントからユッタが出てきて俺の隣に座り朝食をとる
その後は会話を少し挟みながらもお互い広場を見続けていた
日が高くなり俺たちは下山を始める
その道すがらユッタにこの世界での婚姻について尋ねてみた
平民の話と前置きしてから話してくれた内容は
結婚前に妻側の親に結納金を渡し披露宴を主催して周囲に認知してもらう
必要なら神殿で婚姻証書を発行して妻が持つ、ということだった
説明を受けたが前世とあまり変わらないのか地域差があるのか良くわからなかった
ユッタは家族と離れて生活しており労働力と見做されていないので結納金は必要ないが神殿で婚姻証書は発行してほしいと言われた
俺は立ち止まり了承してユッタに告げる
「これからも一緒にいてほしい。家族として妻として歩んでほしい」と
ユッタも立ち止まり俺を見て答える
「あなたの傍に生涯います。あなたの家族として妻として支えていきます」と
お互いに見つめ合う。ユッタの顔が赤い。俺も赤くなっているのだろうが互いに目を逸らさない
暫く見つめ合ってからユッタが故郷の村で両親に報告したいと言い
俺の故郷にも行ってみたいと希望を伝えてくる
俺は賛成すると同時に姉の事を全てユッタに伝えていないことを思い出す
姉が召されていることは話してあるが原因や自死については話せないでいた
姉の強さや優しさ知り、姉の献身と自己犠牲の真意を理解し納得しているのに話せない
俺は姉を誇りに思うと同時に何も出来なかった自分に罪悪感を感じてるのだと思う
俺は逃げている。前世の価値観からなのか怖くて一線を越えられないでいた
知られたくない過去。知ってほしくない過去
失ってしまった最愛の家族。失いたくない新しい家族
ユッタを信じ愛しているからこそ真実を告げるのが恐ろしかった
3日ほど参道を下りている間にユッタとの関係で変わったことがある
誰もいない時にユッタが俺の隣に座るようになったことだ
俺にとっては普通の事に感じるが、後日、男女が二人で旅することや隣に座ることについて前世との価値観の違いを知ることとなる。大きな変化だったようだ
そして夕暮れ時に鉱山都市の宿屋にたどり着く
宿屋の主人に感想を聞かれ一面の銀世界と祠の神々しさを伝えると大いに満足したようだった
気をよくした主人から今度は夏に来て祠を訪ねてほしい、きっと違う景色が見えるはずだと勧められた
是非来たいとユッタが前のめりで言うと更に機嫌が良くなったのが分かる
俺も同じ気持ちでユッタが奉仕活動を続けてる間に何度も来ようと心に決めた
その後も山の景色の話を続け一区切りした後、主人に挨拶をして別々の部屋で休むことにした
翌日炭鉱と鍛冶屋の見学に向かう
宿屋の主人に尋ねてみると鍛冶屋は沢山あるので鉱山付近に行けば分かると言われた
たどり着くと確かに軒を連ねていて他の街では考えられない光景だった
見学が目的なので暇そうな鍛冶屋に見当をつけて中に入るとドワーフが槌をうっていた
来店した俺たちを一瞥するとメイスは作ってないと言ってくる
神殿騎士の恰好に反応したのだろう
少し話を聞きたいと願うと興味なさそうに俺たち二人を見て何かを言いかけるが
直後に立ち上がり近づいて来て俺たちの手を見ながら指輪を見せろと言ってくる
あまりの大声に驚くが俺たちの事はお構いなしに指輪を見せろと興奮しながら言ってくる
俺とユッタが手を出して見せると少し見た後にチョット待ってろと言って炉に戻って行く
俺たちも不思議に思い指輪を見ると淡く光っているように見えた
直ぐに戻ってきたドワーフがよく見たいから貸してくれと頼まれたので俺の指輪を渡す
指輪から光が失せる。フムと言いながら指輪を精査して指に嵌めるように言ってくる
俺が指に嵌めるとまた淡く光りだす
「素晴らしい作品だ」と呟く
俺の手を持って色々な角度から見た後に製作者と入手経路を尋ねられたのでユッタが話す
少し考えて「ああ、あの変わり者か」と呟くと黙ってしまう
暫く経って「お前さんたちは何日滞在するのか?この街で予定はあるのか?」と口を開く
滞在日数は決めていないが鉱山を見たら出立する予定だと告げる
すると明日の夜に鍛冶仲間を集めるから酒場に来いと誘われ場所を教えられる
了解して暫く鍛冶屋を見学させてもらってからお礼を言って後にする
それが鉱山都市でのドワーフとの出会いの切っ掛けであり更なる出会いの入り口でもあった
お読みいただきありがとうございました。
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