誰がための救済
よろしくお願いします
屋敷に着いた。もう僕を非難する声は聞こえない
玄関から中に入ると両親が奥から出てきた
父が僕だけを書斎に誘う。母が二人だけの話し合いに強固に反対した
「食堂で話をしましょう」と強引に父を連れていく。その後に続く
僕らの着席を確認すると母が問いかけてくる
「子爵から聞きました。なぜ姉を連れてダンジョンに行ったのですか?」
「その話は十分に話しただろ。終わった話だ」父が話に割って入る
「終わった話?
姉の優しさに付け込んで無理やり連れて行ったと言うじゃありませんか」
「その話も十分話し合っただろ?長旅ご苦労、今日はゆっくり休みなさい」
「あなた、娘が可愛くなかったのですか?」
「愛していたさ。あちらでもう一度話し合おう。お前はもう休め。早くいけ」
「ええそうよ、あなたが永遠に休めば良いのよ。姉の代わりにね」
僕は食堂を出ていく
僕のせいで姉さんが死んだことになってるんだな。間違いではないけど・・
ずいぶんと経ってから父が一人で僕の部屋を訪れた
父が話し出す。少し話を聞いて嫌になった
父曰く
「家族も皆苦しんでる」とか
「両子爵とも苦渋の決断だった」とか
「話が漏れれば姉の死が無駄になる」とか
「自殺では神殿での埋葬が認められない」とか
「子爵が騎士団への入団を許可してくださる」とか
「王都の子爵の口利きで王宮勤めが出来る」とか
「兄の下で役職に就けてやる」とか
「領民の間で広がる噂は気にするな」とか
「王都の貴族と寄親との関係が」とか
とかとかとかとか・・・・
不意に乾いた笑いが出た。父がギョッとして僕を見る
黙っていると父は出て行ってしまった。気が触れたとでも思ったのかな
再び乾いた笑いが出た
全員が加害者、全員が被害者の振り 僕もその仲間・・・
もうこの家族に未練はない
翌日 いつもより遅く起きて書斎へと向かう
書斎の主に明日家を出ると言うと祝福の言葉をかけてきた
数か月予定が早まるだけ。それだけだ
ベッドに横たわり今後の方針を考える
海や雪山に行く。これは絶対だ
王都で冒険者になるか?行きたくない。でも僕の知る世界は狭い
とりあえず王都までの道すがらギルドがあれば相談してみよう
僕の知る世界。僕?違うな。僕は俺じゃない。俺は俺に戻るんだ
俺の知る世界は狭い。狭すぎるんだよ
当面どうする?足がない。食料も不安だ。村で何か購入するか?
いや、村に行くのはダメだ。俺を姉の死の原因だと思ってる奴らだ
荷物を抱えた俺を見て領主の意向を曲解する奴も出るだろう
領民全体から礫を投げられたら領都どころか村を出る前に倒れ伏す
領都まで行ければ足が確保できる。王都方面の乗合馬車に乗れる
荷物を抱えた徒歩移動だから15日は覚悟する必要がありそうだ
食料は・・ウサギを狩った森へ行こう。水は街道の野営地で調達だな
食料の準備ができたら村はずれから街道に入って領都を目指そう
当面の予定は決まった
部屋を見渡す。思い出が沢山ある部屋だ
でも今は姉との思い出しか浮かんでこない
不意に涙が頬を伝う。そうだ姉が死んでから泣いてなかった
俺はお姉ちゃんを思い泣いた
翌朝
部屋にあったキャンプ道具を背負い最後に部屋を見回す
ありがとう。お姉ちゃん。ごめんなさい。お姉ちゃん
玄関まで行く
館の主が一人で立っており路銀と鉄剣を渡してきた
もう一人の住人は見送る必要が無いと部屋に居るそうだ
どうでもよい。会いたいとも思わない
俺は見送られ外へと踏み出す
姉との約束を守るために
お読みいただきありがとうございました。
第一章本編の終了となります。
稚拙な文章にお付き合い頂きありがとうございました。
宜しければ感想や評価で叱咤激励して頂けると幸いです。
次話のエピローグで第一章完結となります。
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