第5話 初めての友達
1週間後 プレートム王立学院 中庭
「・・・あの、ヴァシリウス家の方ですか?」
中庭を歩いていると金の刺繡の入ってない制服を来た女子が話しかけてきた。
「違います。僕はキヨマサなので。」
俺は全力で立ち去る。
「――はぁ。」
平民と貴族のクラスや寮が別れてる理由が分かったよ。
明らかに異性として好きではなく、あくまで身分目当ての告白が今日だけで5件だ。
俺が人としてではなく、ただの身分を上げる道具として見られている。
かなり辛いものがあるな。
中庭からだいぶ走ってきたせいで、目的の教育棟からだいぶ離れたな。
「キヨマサくんだね。」
背後から男の声がした。
振り向くとショートの銀髪に度の入ってない眼鏡をかけた男が立っていた。
こいつもイケメンだな。だが制服の胸元に金の刺繍が入っているということは貴族か。
「あぁ。」
「僕はエースグリット・グラディオラスター
辺境の領主の息子だよ。みんなはエースって呼んでる。」
「そりゃどうも。どうせあんたも俺の身分目当てなんだろ。」
「外れだね。
僕は君自身に興味がある。
聖女を倒した君にね。」
「聖女?
あのイカれた殺人未遂恋愛狂いキス女のことか。
お前たちの領地じゃ、あれを聖女というのか。
やめたほうがいいぞ。」
「ははっ いいね。
ますます君を好きになりそうだ。:
「やめてくれ そっちの趣味はない。」
「――いやすまない。
彼女は珍しく光魔術の適性が並外れて高くてね。
この国の初代国王と同じだから聖女とされているんだよ。
どうやら僕たちとはかなり価値観が違う人のようだけどね。」
――何か、違和感を感じる。
本当に、価値観だけなのか。
あいつは神聖な女ってよりは性的な女のせいじょの方が名前とあってそうだけどな。
まるで異世界人・・・
いやエスキートを持っていないっぽいし考えすぎか。
「エースくん
講義遅れるよ。」 ぜぇぜぇと女が息を切らして走ってきた。
黒っぽい緑色の髪に地味そうな眼鏡をかけている
たしか筆記試験の主席だっけ。
胸が異常にでかい。好色家の多そうな貴族クラスだと苦労してそうだな。
「あぁ、紹介しよう。グリモリア・ブリュヘリアさん
僕の友達だよ。」
「は 初めまして。グリアってみんなから呼ばれてます。」
グリアは俺を見るとエースの後ろに隠れる。
「キヨマサだ。よろしく。」
「グリアは頭がいいからね。
ちなみに中間試験が1.5カ月後にあるが
グリアは優しいから、勉強を教えてくれるかもしれない。」
打算的だな、こいつ。
「そうか。まぁ、俺も何かあったら相談させてくれるとありがたいな。」
異世界人だから、帝国に夜逃げした時に詰め込みはしたがこの世界の細かい知識や学力水準に達してるか怪しいし。
「は、はい。」
グリアは前髪で顔を隠してしまった。
「とりあえず一緒に行こうか。」
魔術行使の許される訓練場へ移動した。
プレートム王立学院 訓練場
炎魔術の行使後も空気入れ替えが可能なように天井が開くような造りになっているだだっ広い建物だ。凄いな、俺なんか野山で魔獣に背後から襲われそうになりながらリカルドたちに魔術の訓練させられたのに。
「それでは魔術の実技訓練だ。
50メル以上の攻撃魔術においては威力が急激に減少することがあるが、
魔術紋を始点と終点に置くことで増幅した力で遠距離を攻撃できる。
マリーナ手本を見せてくれるか?」
マリーナが光魔術で50, 60, 100の離れた的を光で射貫く。
「見事だ。」
聖女ってだけはあって魔術の才能は長けているらしい。
「まぁ、何だ
訓練もいいが、実戦が一番だからなぁ。
1週間後に今から指定する場所で魔獣を狩ってきてもらう。
6人1組でな。」
「いきなりですか!?」
「あぁ、6人もいれば何とかなるだろ。
指定場所はここに張っとくぞ。
魔獣を狩ったら首の骨か、背骨の一部を持ってこい。
鮮度次第では肉でもいいぞ。珍味だからな。」
この魔術訓練の講師は他の教員とは違い、結構実戦的な課題を貸してくるな。
たしか元騎士団員らしい。いい教員なのかもしれない。
「それじゃあ、適当にくじ引きで決めてくれ。」
番号が1から30まで書かれた紙を1人ずつ引かされる。
「それじゃあ、6で割り切れた奴、1余ったやつ、みたいな感じで割った余りでグループ分けするぞ。」
俺は12だから割り切れたグループだな。
「エクス先生、もし僕たちの身に何かあったらどうするんですか?」
「あー、お前等は貴族だろ。魔術の才能に長けてるから大丈夫だ。
問題は平民の女子だな。先生が付いていってあげようか。」
前言撤回だ、こいつただの下心全開のとんでも野郎だ。
「私達は結構です。」
「私達も。」
「おーい割り切れたグループの人、ここだ。」
赤い髪の俺を炎でぶっ飛ばした男の声がした。
嫌な予感をして見え見ると赤い髪のトラヤーヌ 間違いない同一人物だ。
さらに最悪なことにアントニアーヌ 俺を土の魔術でぶん殴ってくれた黄色髪の男まで一緒らしい。
「俺もだ。不本意だがな。」
「君か。」
トラヤーヌが俺をにらみつける。
「うそ。」
マリーナ あの殺人未遂女の恋愛狂いキス女までいた。
最悪すぎるだろ。くじは俺に何の恨みがあるんだよ。
「また会ったね。」
俺の肩にポンと手をおいてにっこりと笑う。
「エースか、助かったよ。まともな人間が1人はいて。」
「それはどういうことだ!!」
トラヤーヌがキレて剣に炎を灯す。
「エースくん この人達怖い。」
「まぁまぁ。」
グリアまで付いてきちゃったらしい。
大丈夫かな、これ。
3日後 スカラルの街
帰っている最中に角から出てきた誰かにぶつかった。
まるで壁のような巨大な質量に付き飛ばされて、尻もちをついた。
「すまない。怪我は?」
一応、相手が女ということもあり、謝っておく。
「我に怪我の心配か。面白いな。」
雪のように白い髪に、真っ赤な目をしている女性
背はソルティさんと同じぐらいだが、とてもじゃないがぶつかった時の質量と見た目が違いすぎる。めちゃくちゃ筋肉質なのか。あと時短のためかパンを口に咥えて普通にむしゃむしゃ食べてるよ。器用だな。
「――それはどうも、無事だったなら失礼します。」
「我が連絡先を教えておく。」
シュッと白い髪の女が小型のカードを俺に投げる。
「オルペスさん?
俺はキヨマサです。」
「知ってる。
それじゃあね。」
急いでいたのか、女が速足で立ち去る。
家のすぐ近くなのに付いてないな。
家に戻るとソルティさんが出迎えてくれた。
「おかえり。」
「ただいま。さっき、この人に会ったんですけど
知ってますか?」
「――いえ。
ファータグラヌス家と言えば自然豊かな山々と自然公園を持ってる小さな領主だし。」
「なるほど、さっき角でぶつかった時に俺を知ってるっぽかったんですよね。」
「大公家の許嫁なんだから、多少は知られてるでしょ。」
「そうですよね。」
何となくだが、ソルティさんは何か知っていそうだな。
多分だが、予言に関わるところで俺に話せないのだろう。
今はソルティさんを信じるしかなさそうだ。
「そういえば、そろそろ実習じゃない?」
「俺はテラガヌ自然公園みたいです。」
「――そう、ちょうどいいわ。
そこのこの地点に向かってちょうだい。
魔獣を倒すならいい場所だと思うし、
面白いものが見れるはずよ。」
「楽しみにしてますよ。嫌な予感しかしませんけど。」
「あぁ、それと聖女ちゃんは連れて行っちゃだめよ。」
「――それは。マリーナのことですか?」
「そう、マリーナ・ミニュエ
平民の出でありながら光魔術で突出した才能を持つことから
付いたあだ名が聖女
建国の国王が光の魔術の突出した才能があったから聖人って呼ばれたのの女版みたいね。」
「ソルティさんを殺す可能性があるんですよね。」
「可能性よ、
私が負けると思う?」
「いえ 全く」
「その杖とジャケットを来てれば大丈夫だと思うけど警戒はしておいて。」
そういえば特別性だったな、ジャケット。
おかげで入学式の前に死なずに済んだし。
4日後 ファータグラヌス領 テラガヌ自然公園
学園都市から列車で揺られること半日、
俺達は指定された自然公園に来た。
もちろん、トラヤーヌ、マリーナ、アントニアーヌとは別の車両を指定席で予約した。
大公家の特権である。
「あぁ、王立学院の生徒さんだね。
エクス先生から聞いてるよ。魔獣退治をやってくれるんだよね。
いや~助かるよ。柵があるとはいえ公園の方に出ると大変だからね。」
「えぇ。我が王の血にかけて。」「我が剣にかけて。」
トラヤーヌとアントニアーヌが剣を抜いて男に一礼する。
自然公園の管理人らしい男の人が俺達を魔獣のいる危険な森へ誘導してくれた。
「キヨマサ!俺は君を認めない!
勝負だ!俺とお前のどちらが多く魔獣を倒すか。
負けた方が学院を去る。」
トラヤーヌが俺に剣を向けて宣言する。
本当にこいつは俺をイラつかせることに関しては天才らしく
「断る。
俺はヴァシリウス家ひいてはヴァシリウス領の血税で入学金を払ったんだ。
途中退学なんて出来るわけないだろ。」
ソルティさんの受け売りだがな。
「くっ、やはり入学金を詰んで無理やり入ったのか!」
「お前の名前アウグトゥスだったな。
王族のお前も試験は面接だけだったんだろ。」
「それがどうした!
王族が王立学院に行くのは当たり前のことだ!
そうだろう、マリーナ!」
「そうね。
こいつは卑怯者よ。」
王族はいいのかよ、脳までイカれてる奴が聖女とか世も末だね。
「まぁまぁ、2人供落ち着いて。
ともかく今は単位の取得のために2手に別れて行動するのはどうかな。」
エースが早速助け船を出してくれて助かったな。
ここで喧嘩別れするつもりだったが、もっとうまいこと行きそうだ。
「ふざけないで!魔獣相手に人数を減らすなんて!
危険よ!」
どうやら都会育ちらしい聖女マリーナが怒ってしまった。
本当にこの上なくめんどくせぇな、この聖女。
「マリーナのことは俺とアントニーが守るよ。絶対」
マリーナが目を輝かせた瞬間に俺はエースとグリアの手を掴んで全力でその場を走り去る。
「うん、俺達に任せてよ。」
アントニアーヌがマリーナの左手の甲にキスをする。
「誓うよ。」
負けじとトラヤーヌもマリーナの右手の甲にキスをする。
「うん。ありがとう。トラヤーヌ、アントニー」
俺はエースとグリアを連れて森の古代遺跡がある方へと走っていく。
列車の中で2人に打合せしといて良かったよ。
あいつらは何かあるとやたらとカッコつけてキスして自分達の世界に入るからな。
その間に離脱するのが最善だ。
どうやら魔獣は結構いるらしく、ヤマアラシっぽいのと、アライグマっぽいのを早速2匹倒した。
「2人の分はこれでいいだろ。」
グサッっとナイフで頭を落として背骨を斬り出す。
こいつらはたしか体内に毒袋があるせいで食えないし、ちゃんと土魔術で埋めておく必要がある。
「はは、慣れたものだね。」
とか言いつつエースは俺以上に慣れた手つきでアライグマっぽいのを解体していく。
「ラクーンの肉は食べれるからね。
凍らせて教官に持って行ってあげよう。
エリチョィスは、食べれないから埋めておいてくれるかな。」
「わ、私がやる。」
グリアがなっがい杖をドッと地面に突き立てて、穴をぼこっと作る。
エリチョィスの遺体を入れる。
「爪や皮はここで捨てておくほうがいいね。」
「うんうん」
グリアに解説しながらエースがラクーンを解体していく。
本当に見事な腕前だな。
「しかし、もう1匹ほしいね。僕たちは3人だし。」
「そうだな。遺跡に行く途中にいれば倒そう。
遺跡に行くのが優先だ。」
「――婚約者さんの依頼かい?」
「あぁ。この先の遺跡の地下にある石碑の写真を取るって依頼だ。」
こっちの世界にカメラがあるとは思ってなかった。割と近代的なんだよな。
それ以外にも石碑の近くがいたら渡すように言われている革袋も預かったが、中身は見てない。
「あ、あの。婚約者ってどんな方なんですか?」
グリアが荷物にラクーンの肉を詰めていく。エースとは息が合ってるな。
「使命感と責任感の塊みたいな人だよ。」
「そう なんですね。」
「グリアも婚約者がいるのか?」
「はい。私は」
「そろそろ行こう。遺跡は少し距離があるから急がないとね。」
エースが話をさえぎって荷物をまとめて歩き出す。
「悪い、踏み込みすぎたか。」
「いえ。」
「もう少し配慮を身に着けた方がいいかもね。」
少し小走りに移動しながらエースがさわやかに笑う。
相変わらずかっこいいな、こいつ。それにあの王子を含む3バカと違って優しくて頭がいいイケメンか。嫉妬しちゃうね。
ファータグラヌス領 テラガヌ大森林 地下古代遺跡 セルヴァ
「――ここが。」
地下空間が広がっている。
きれいな石造りの建物の地下洞窟に様々な生活遺物品が残っている。
だが全て原型は留めてない。
「数百年は放置されてるみたいだね。」
エースとグリアと一緒に地下遺跡を進んでいく。
どうやら都市の上に巨大な岩や土が覆いかぶさって出来た地下になっているらしい。
建物も2階立て以上のものはなく、造りは学園都市のよりはしっかりしていそうだが古いな。
「キー――!!!」
巨大なコウモリのような魔獣 ヴァスペルティ
学名はヴァンパ+スペリエルだからたしか魔術を唱えられるコウモリだったか。
「キィッ!!」
紫の尿を壁にまき散らし、魔術紋を形成する。
すごいな。かなり知能が高そうだ。下品だが。
シュッシュッ!!
激しく風の刃がでたらめに放たれる。
俺は足元の地面に杖をかざして土壁を作って防ぐ。
さすがに命中精度の方は低いみたいだな。それに速度も遅い。
「キィキィキー!%$”%”#$」
コウモリが超音波を放ち、それと同時に今度は超高速の無数の風の刃が壁に突き刺さる。
「2種類の風の刃か。」
ゆっくり巨大な風の刃と小型の早い風の刃を使いこなしている。
大きさが俺の上半身ぐらいあるだけあって、魔術の出力もそこそこある。
「キヨマサくん、僕が」
「俺の単位だろ。サポート頼む。」
「グリア」「うん」
エースとグリアがアイコンタクトで魔術の術式の共同構築をしていく。
3つ、4つと風の刃を発生させてその場に保つ。
器用だな、この2人。
「せいやっ!」
俺は土の盾を体の正面に構えて
ヴァスペルティへと距離を詰める。
「キッ!!」
ヴァスペルティが長い爪で俺の土の盾を砕く。
「かかったな。」
土の盾の内側に発生させた水の刃をヴァスペルティの頭部めがけて放つ。
「キィッ!!!」
ヴァスペルティの首がぼとっと落ちて飛んでいた肉体が遅れて落下する。
パチパチとエースが拍手する。
「流石だね。聖女を倒しただけはあるね。
少し物足りなかったかな?」
「悪いな、サポート無駄にしちまって。」
「構わないよ。備えあれば憂いなしだからね。」
エースとグリアが風の刃を解く。
ボウッとエースの髪を風が揺らす。
ほんとイケメンなやつだよ。
「そういえば、エースは婚約者いるのか?」
俺はヴァスペルティの胴体から背骨をぶった切って引き抜く。
「さぁ、当ててみるかい?」
「どうせ、いるんだろ。」
ヴァスペルティの頭を地中に埋める。
「正解だ。
だいぶ年下の女の子でね。気が引けるよ。」
貴族の世界はそういうもんだよな。とか思いながら
「――大変だな。ヴァスペルティの肉って食えるのか?」
「一応、持って帰っておこうかな。
めっちゃ臭いとは聞いたけど。」
ヴァスペルティの皮を剥いで内臓を捨てて肉だけパックに詰める。
「凍らせといてくれるか?」
「了解」
エースが氷魔術を唱えてパックの肉を凍らせる。
便利だな。歩く冷凍庫。
「少し失礼なこと考えてる顔だね。」
「! な、なんのことかな。」
グリアは俺の苦笑いから目をそらす。
グリアって心が読めるのか?
「僕の氷魔術が食品保存庫みたいってところかな。」
「読心術でも持ってるのか」
地下古代遺跡 セルヴァ 中央水道
枯れた水路の交差点で、地上から水滴が落ちている。
「貴様らは誰だ。」
水路の繋がっている上流から人の声がした。
「キヨマサだ。王立学院の実技演習で来た。」
「そうか。」
ズリューと何かを引きずる音と共に
「!!? 嘘だろ」
人の大きさの2倍はある巨大な蛇、白蛇が出てきた。
「人の言葉を話せるのか。」
「貴様は我を侮辱しているのか?」
ドッ!!と俺の体が壁にぶつかる。
見えないほどの速さで尾を振ったんだ。
「ごふっ」
強すぎる、こいつは別格だ。
「エース、グリアを連れて逃げろ。」
「――死なないでくれ。」
エースがグリアの手を引いて走って逃げる。
「よし。」
俺の土魔術と水魔術の本領を見せてやるよ。
「ふん、我が姿は恐ろしいか?」
「いやかっこいいと思うぜ。
だが殴られっぱなしっていうのは好きじゃないんでね。
水刃・七ツ重!!」
俺は水の刃を全身に纏わせて、白蛇に突っ込む。
今度もし尾で攻撃してきたらぶった切れるぜ。
「ほぉ。面白い」
パンッ!と今度は地面すれすれから俺の顎狙って尾ではたきあげてきやがった。
ギリギリで杖で受け止めるとそのまま洞窟の外まで上に吹っ飛ばされてしまった。
「土腕」
俺は巨大な土の腕を地上の地面から生やしてぎりぎりで落下を防ぐ。
「我より頭が高いぞ。」
ドッと白蛇が飛び上がって地上に降り立つ。
地上に出て、はっきりと見えるようになったおかげで分かったが
「・・・どこかで会ったことがないか?」
それも最近、凄く似た人に会ったような。
「おぉ!!!素晴らしい!!!!」
振り向くと帝国の魔ノ森で会った刑事の男がいる。
「ワーグナーさん?」
「おぉ、君とも会えるとは
キヨマサ君だったかな。」
「はい。どうしてこんな所に?」
「何、簡単な事件の解決に呼ばれてね。観光がてら来たところだよ。」
「貴様ら、不遜だな。」
「そうだよ、キヨマサくん
ファータグラヌス家の前領主 セルペス・ファータグラヌス様だよ。」
ワーグナーが膝をついて帽子を脱ぎ、拝礼する。
「え?」
「良く分かったな。人間。」
「簡単な推理ですよ。」
巨大な白蛇の姿が影に沈んでいき、人の肉体が現れる。
「あ、かっこよかったのに。」
「なんじゃ?」
「いえ
――失礼を。」
釈然としないが、一応謝っておくか。ソルティさんの婚約者だから大体の貴族よりは身分高いはずなんだけど。
「うむ。」
「なら、あなたですね。こちらにお届け物が。」
俺はソルティさんから渡された革袋を差し出す。
「ふむ。」
セルベスが革袋を開けると
「すぅんばらしぃ~~~!!!」
顔が変わったように輝き始め、入っていた鉱石数種類を掲げて目を輝かせている。
「アルテニアの極圏にある凍結晶に、帝国東部で見つかる星龍結晶が3種類か。」
ワーグナーが一瞬で鉱石の種類を見抜き
「詳しいな。」
セルベスが指で丸を作る。
指の辿った軌跡が黒い水となって空中に浮かび上がる。
何かこの魔術、どっかで見たような。
「――そういえば、前 学園都市で会いましたね。」
俺は以前渡されたカードを見せる。
「あぁ、あの時の少年か。
確か ソルティ殿の婚約者だったか。
すまないことをした。肉体は治しておこう。」
セルベスが俺の腹部に触れると体が異常な熱を帯びて回復していく。
凄いな。
「星ノ獣の一角とお見受けして、1つお願いをさせていただけますか。」
ワーグナーがとんでも事実をさらっと言いながら、杖を取り出す。
「ふむ、その杖の呪いを解けばよいのか?」
「はい。この先の未来に必要な力です。」
「未来視の類か。我は好かぬが帝国の龍どもと仲が良いようだな。」
セルベスがなんの装飾も施されていない黒い杖に触れる。
するとパァァアアッと黒い衣のようなものが剥がれていき、白銀の龍の紋章が刻まれた白い杖が現れる。
「誰だ、こんなうざったい呪いを付与した者は。」
「詳細は不明ですが、聖十字系のカルト団体の一派かと。」
「――そう、こんなものが個人で造れるなら国も長くはあるまい。」
「それは困りますね。ですが、帝国の力もまた育っていますよ。」
「ふん、こちらも厄災を払わねばならんからな。
エスキート持ちの転生者が西方にも現れるとはな。」
「門はもうほぼないはずですが。
残党とまだ残っている門があるのでしょう。」
「――存在自体を消していないからそうなる。」
俺には全く分からないやり取りをしながら、2人は納得したらしく。
「報酬はいくらでしょうか。」
「1万ギルでいい。どうせ大陸通貨しかないのだろう?」
入国時に通貨は両替するはずだが、こいつ不法入国か。
魔ノ森を無理やり抜ければ王国に入れるからな。陸続きだし。
「はは、雇い主の頭金で100万ギルまでは用意していましたが。良かったですよ。」
ワーグナーがセルベスに1万ギルを手渡す。
「それでは気を付けて密出国するといい。」
セルベスさんは倫理観がぶっ飛んでるらしく、立ち去るワーグナーに手を振っちゃってる。
領主ってそれでいいのか。
「さて、少年
我は君が気になってしまった。
我が屋敷に来てもらおうか。」




