第15話 反撃の黒水 Black Water of Counterattack
王宮 王座の間
王座に座している女、白金の鎧を纏った騎士が魔素を一気に纏い始める。
「炎刃閃!!!」
騎士の1人が一番魔素の弱い俺めがけて斬りかかってきた。
いい判断だが
「黒水刃」
杖を抜かないまま黒い水の刃を足元に発生させる
「!?」
騎士の1人は足を切り裂かれてずざぁっと倒れこむ。
「ちっ バカが!
そいつは転生者だ
このババア共を先に」
ドッ!!!
背後で構えていた騎士が土魔術と風魔術を組み合わせて弾丸の速度で土くれを発射する。
だが全ての土くれがソルティさんの惑星魔術の土星の球体に弾き飛ばされ、跳弾して男の眼に突き刺さる。
「っあ ぐああああっ!!!」
男が悶絶しながら倒れる。
「ベルゼブ この2人は任せていい?」
「その方が良さそうですね。
その女は強い」
ベルゼブが背中の羽をたたみテラスから転がり入ってくる。
そして転生者であろう聖騎士2人を石で出来た腕で掴み投げ飛ばす。
「聖騎士でも細切れにすれば復活はできないでしょう。」
ベルゼブが吹き飛ばした聖騎士をカマキリのような固い鎌で切り裂いていく。
「ようやくウジ虫の親玉がお出ましね。」
金髪の女が玉座から立ち上がる。
「魔ノ森以来か、
まさか破滅ルートを回避する手があるとはね。」
「・・・あんたも転生者みたいだな。」
俺は杖を構え女めがけて黒い水の刃を飛ばしつつ距離を詰める。
「そうね。
肉体はテレシア、精神は聖女
最強よ。」
パァッ!!とテレシアの杖が俺の黒い水の刃を弾き飛ばし天井に黒い水が飛び散る。
それと同時にゴゴッと床を割って顔が全く同じ肉体が生えてきた。
「はっ!!」
ソルティさんが惑星魔術の炎と風で肉体を焼き尽くす。
「・・・スペアはあと106体
全て殺しても意味ないけれど。
いくらでも作れる。」
地下から何かが浮かび上がってくる音がした。
高層の王座からでも見えるほど王宮の周囲の地面が盛り上がり
幾何学の模様を象っていく。
「ここまでの仕掛けを・・・
セルベス、施設破壊を頼める?
施設自体が魔術の巨大術式になってるわ。
それと例の準備を早めて」
「遅い」
ドッ!!!
テレシアが無数の黒い炎をセルベスめがけて放つ。
「あんたの相手は俺だ」
水の壁を発生させ、黒い炎を止める。
「私もね」
ソルティさんの惑星魔術が発動し、風の刃がテレシアの首を斬りつける。
ブシャッ!!と鮮血が飛び散る。
だが
「ふぅ
転生者に再生能力があるのは知ってるでしょう?」
テレシアを斬った瞬間から回復していき、肉体が元通りになっていく。
「――ソルティさん、どう削ります?」
元々の作戦では再生能力を上回るほどの攻撃を加え続けて
再生限界を超えさせるはずだったが。
恐らく再生能力が高すぎて肉片からでも再生できそうだ。
「削るのはなし。
サルトゥ作戦に切り替え」
「了解
ベルゼブを外に出しといて良かった。」
「そうね。たまたまだけど。」
ドドドドッ!!!と激しい戦闘音が鳴り響いた後に断末魔が聞こえた。
恐らく聖騎士2人をセルベスさんとベルゼブで仕留めたんだろう。
「アイン 聞こえるか
サルトゥだ。2人に伝えてくれ。」
契約ってのをやったおかげか、俺はアインと意識レベルで繋げることができている。
「うむ。儂の出番ということかの。」
「いや、レールの方だ。」
ゴォッ!!!!!
激しい黒い炎が玉座から湧きあがり、
俺とソルティさんめがけて壁として押し寄せてくる。
「あんまり持ちそうにないんでな。」
黒い炎を俺の土魔術と水魔術を合わせて壁を作って防ぎつつ
回り込んできた黒い炎をソルティさんの惑星魔術の水でせきとめる。
「――これが厄災の聖女ですか」
「えぇ
まだ本気は出してないみたいだけどね。」
ソルティさんと俺の作った土と水の壁が黒い炎に焼かれて剥がれ落ちていく。
「そこの女 何をした?
なぜ死なぬ?
この眼が未来を誤るなど」
「20年間仕込んできただけよ!!」
ソルティさんの惑星魔術から無数の土棘が放たれる。
ドドドドッと黒い炎とぶつかりながら、何本かはテレシアに突き刺さる。
だが突き刺さったところから黒い炎に焼かれて抜け落ちていく。
「エスキートのせいで概念化してるレベルの魔術ね。
肉体の構造そのものが人間ですらない。」
ソルティさんの土棘がささった箇所は人体では急所だ。
確実に殺せていなければおかしい。
おそらく全身を魔素で作り変えているか何かの方法で組成そのものを変えているのだろう。
「準備 か
貴様の破滅ルートは変わらん。
既に貴様が1時間以内に死ぬ未来が見えている。
そこの転生者のなりそこないもな。」
「―――そう。
あの2人には見えてないのね?」
「!
黙れ!!!」
テレシアが玉座を立ち上がり、黒い炎を纏ったまま杖を振り下ろす。
炎と衝撃で王宮が真っ二つに引き裂かれながら発火していく。
「キヨマサ!」
ソルティさんが俺を掴んでテラスから飛び出す。
ゴッ!!!
ドゴォッ!!!
王宮の玉座より上の部分が完全に崩壊して、玉座の間がむき出しになった。
「――飛べるのはあなただけではないのよ」
「!?」
ソルティさんが飛んでいる真上にテレシアが空中に浮かんでいた。
「白風よ」
白い風の刃が俺とソルティさんめがけて降り注ぐ。
「くっ」
土魔術を発動して風の刃にぶつけて軌道をそらしつつ、
ソルティさんの空中回避ですんでのところで躱す。
白い風の刃が王宮の周辺に降り注ぎ地面を深くえぐっていく。
「黒水・纏」
俺は水魔術を発動して自らの肉体の周囲に水の刃を発生させる。
それと同時にソルティさんの手元に水の盾を作り出す。
「――魔術の複数展開
それがあなたのエスキート?
かわいそうね なりそこない」
テレシアが黒い炎と白い風の刃を同時に頭上に発生させる。
「そう?」
ソルティさんが指をパチッと鳴らすと
テレシアの頭上から泥が降りかかる。
「今の汚いあなたの方がよっぽどかわいそうだけど?」
ソルティさんがさらに惑星魔術を発動し
「雷よ」
泥まみれになったテレシアに雷を浴びせて動きを止める。
「――あなたの敗因は不死身に慣れすぎたことよ」
「ちっ 動きを止めたぐらいで
いい気になるな!!!」
テレシアが再び黒い炎と白い風の刃を俺の周囲に発生させ一斉に解き放つ。
「水盾」
ドッ!!!と俺とテレシアの魔術がぶつかり、水蒸気と高熱の泥が飛び散る。
それをさらに突き破るように黒い炎の集団が降り注いでくるが
その全てに黒い水の盾をぶつける。
ドドドドドドドドドッ!!!
激しい炎と水のぶつかり合いで水蒸気がさらに広がっていく。
「――まだよ」
惑星魔術の風でさらに追い打ちをかけていく。
風の刃がテレシアの風の刃とぶつかり、爆風が発生する。
「ちっ!!
このババアが!!!」
聖女がソルティさんめがけて背後から黒い炎の塊を地上から放つ。
燃えている炎だったら遠隔からでも操れたのか!
「あなたほどじゃないけど」
「ソルティさん!!」
俺はぎりぎりで水の盾を発生させつつ、自分の体を割り込ませて黒い炎の塊を受け止める。
ジュッ!!!!と激しく俺の右半身が炎に触れた。
「ッ!!! ガアッ!!!」
「キヨマサ!!」
ソルティさんが俺の半身に水をかけようと惑星魔術の水を発動しようとするが
「攻撃の手をゆるめるな!!」
俺はとっさにソルティさんに叫ぶ
ソルティさんは俺に目くばせして惑星魔術をテレシアにぶつけ続ける。
「黒水刃・二十重ッ!!!」
俺は水の刃をテレシアの黒い炎とぶつけて相殺していく。
だが、右手の感覚がないせいで2発、外れた。
「カバーするわ」
ソルティさんが惑星魔術の水をぶつけて黒い炎を相殺させる。
「今度こそ終わりだ 貴様らはここで
破滅する」
テレシアが超巨大な黒い炎の塊を発生させる。
「っ! いつの間に」
王都を取り囲んでいた黒い炎が消えていた。
「久しぶりだね」
聞きなれた声がして
ドッ!!!と黒い炎が削り取られる
「エース!?」
エースが聖剣を構えて黒い炎を切り裂いていた。
「空は飛べなくても1手だけなら
君の力になれると思ってね。」
ドッと黒い炎が溢れ出して、消える。
「クソガキがあああああっ!!!」
テレシアがエースめがけて黒い炎を連射する。
だが巨大な塊を維持したままのせいで3発しか発生していない。
「私もいます!!」
グリアが王宮の王座の間から黒い炎に土塊をぶつける。
「このっ!!!
まとめて消え去れぇ!!!!」
テレシアが黒い炎をひるがえし俺達に向けて放つ。
「準備が出来たぞ」
俺の脳内にアインの声が響く。
「今、あの炎をどっかに飛ばせるか?」
「ムリだ、例のぶつを維持し続けながらではな」
「分かった。」
こうなったらいちかバチかだな。
「黒水」
俺の全魔素を込めて水魔術を発動する。
「うぉおおおおおおおおおっ!!!」
俺の発動した黒い水の魔術と黒い炎の魔術がぶつかる。
衝突緬から激しい水蒸気が立ち上がり、王都中の上空に広がっていく。
「話は最後まで聞け 面白い者どもをそちらに飛ばせる。」
「今はそんな余裕ないっての」
俺の黒い水が徐々に押されていく。
俺は元々魔素が無尽蔵にあるタイプじゃないからな。
どうしてもエスキート持ちの転生者の全力魔術だと力の差が出てしまう。
このままじゃ押し負ける。
ソルティさんが俺の後ろで惑星魔術の水を発動し、俺の魔術と合成して威力を足して呉れてはいるがそれでも徐々に押し負けているのが分かる。
「くぉおおおお」
「出来のいい生徒を持っても苦労する」
「!
あなたは」
「集中しろ キヨマサ」
エレシウス教授が黒いまんとと黒髪を風になびかせながら
深淵魔術を黒い炎にぶつける。
「助かります!」
「若いもんばっかりに国を任せてはおけんのぉ!」
学長まで来てくれたのか。
「王都を囲む黒い炎さえ解ければこっちのもんじゃ」
ドッ!!!!と学長の爆発のような風魔術で俺の黒水の威力を増大させつつ、
さらに水魔術を合わせて黒い炎を消し去っていく。
「姉さんより水魔術だけなら得意なのよ!!!」
学長の巨体の後ろからソルティさんの妹エイレーンが俺の魔術に合わせてきた。
「エイレーン!?」
「姉さんはいっつも予言だけ信じて、突っ走って
でもいつも完璧で!!
大嫌いだった!!!」
エイレーンの水魔術の合成によって大幅に威力が増して
俺の魔術がテレシアの黒い炎をぶち破り。
ドッ!!!!
黒い炎を完全に消し去っていく。
「悪あがきをっ!!!
こうなったら全王都の魔素を吸い取って転生を」
テレシアが王都の地面に貼った文様に魔素を送り始めた瞬間
「今よ!!!」
ソルティさんが叫ぶ。




