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悪役熟女令嬢の婚約者  作者: †真・筋坊主†
第3章 厄災の前 Before the disaster
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第12話 存在しない者 someone who doesn't exist

オウトクラト領 メメントリス 貴族墓地

丘の上で、俺達4人はある墓の前にいた。

刻まれた名前はカタリナ・アレクシア 旧姓アウトクラト

ソルティさんの親友であり、ベルゼブの顔の元となった人だ。

「――付き合ってくれてありがとう。

ベルゼブはちょっと違和感あるかもしれないけれど。」

「私の記憶はこの人とは違います。」

「そうだな。カタリナとやらがどれほどの使い手かは知らんが、

ベルゼブほどの力はあるまい。」

「力の問題じゃないでしょ。まぁ気にしてないならいいけれど。」

俺達がきびすを返して帰ろうとすると

「――いつの間に」

ベルゼブが驚き、ドッと魔素を強烈に纏い始める。

「囲まれてるな。手練れが10といったところか。

どうする?私が突破しても良いが?」

「やめましょう。まずは理由を聞いて、それからよ。」

騎士と思わしき甲冑を着た男が歩いて来た。

黄色い髪に、盛り上がった筋肉、それに背丈ほどの大剣。

「騎士団長殿がどうしてここに?」

「ソルミティア殿、あなたに国家反逆罪の容疑が掛かっている。」

「――そう来たのね。

告発元は後宮の宮廷魔術師じゃないかしら?」

「!?

告発者の情報は明かせません。

どうか大人しく同行をお願いいたします。」

「――断るわ。」

ドッとソルティさんが俺の手を掴んで空中に飛び上がる。

それを合図とするようにベルゼブが翼を生やして空に飛び上がり、セルベスを掴む。

「仕方ない。少し手荒になりますぞ

騎士団長エルディアーヌ・ヴィウス

いざ参る!!!」

まずは一番弱い俺を倒す気らしく、脚力だけで俺の方へと剣を構えて飛び掛かる。

「性格が悪いのは相変わらずね。」

ソルティさんが炎を4発連続で騎士団長に放つが、全て騎士団長の剣で防がれる。

剣術の腕は見ただけで分かる程度には洗練されている。

「ベルゼブ! あっちは任せる。」

騎士団長を追って、騎士たちが9人俺とソルティさんに向かって魔術を唱え始める。

「残念だ、将来有望な少年を切らねばならぬとは!!」

騎士団長が空中で風魔術を連続で発動して飛び上がる。

そして俺の脳天めがけて剣を突き出す。

俺は杖で剣を弾いて、反撃として黒い水の牙で騎士団長の右肩を切り裂く。

「やるな。」

ビッ!と騎士団長の右肩の薄皮が切れて血が飛び散る。

わずかに痛みで剣を左に払う手が遅れた瞬間に

「火ノ星」

ソルティさんの惑星魔術が展開され、騎士団長の四方から炎弾が直撃する。

「くっ」

騎士団長が風魔術の制御を失って落下していく。

俺とソルティさんは風の星<ヴェント・アストラリア>と呼ばれる空中に浮遊する惑星のような模様の球体に捕まり、空中に浮いている。

「――いい囮だ。団長」

ドッと俺の背中に衝撃が加わる。

「しまっ」

俺の体が落下していく。

ソルティさんが背後から来た青色の髪の男に再び集中砲火を浴びせる。

だが青色の髪の男が炎弾を受け止めるように風魔術で防壁を作り、炎を受け流していく。

「キヨマサ

気を付けて!」

「えぇ」

下を見ると騎士団長が地面に着地し、俺を切り伏せようと剣を構えなおしていた。

「闇牙」

ペンダントに触れて闇魔術を纏わせた水の刃を騎士団長の足元から発生させる。

「はぁっ!!」

騎士団長は薙ぎ払うだけで水の刃を地面ごと叩き伏せる。

「土壁・三ツ重<テラムルス・トリプレクス>!!」

俺はもろい土の盾を3重に突き破って減速しながら着地した。

「っ!」

とは言え流石に両足が痛むな。

「いい魔術師だ。殺すには惜しい。」

騎士団長が一瞬で俺との距離を詰めて剣を俺に突き出す。

「!?」

俺はとっさに自分の首元に土の盾を5重に展開する。

ゴッ!!!

剣が土の盾を3つまで切り裂き、4つ目で止まる。

「闇牙<テネブラデンス>」

今度は水の刃を騎士団長の真後ろから発生させる。

「もらった」

騎士団長がまるで後ろが見えているかのように身を極限まで低く伏せて躱し

剣を翻した瞬間

俺は自分の放った闇魔術を纏った水の刃を闇魔術でさらに魔素に再変換し、

増幅して

「手土<マヌテラ>!!」

騎士団長の腹の辺りに手の形をした土の塊を発生させる。

「がっ!!!」

騎士団長が上空に跳ね上げられてからドッと地面に落下する。

「ギリギリだったが、俺の勝ちだな。」

土の手をくらった瞬間に斬撃を放ったのか、俺の左腕の服が斬れていた。

ずれていれば首が斬れていただろう。

「ぐっ!負けられんのだ!!

騎士とは

民を守る者!

悪しき者をくじく者!!!」

騎士団長の纏う魔素の質が変わっていく。

「――これは」

「冥土の土産に教えてやろう。

騎士団長には代々、王家より特別な魔具<ガイスト>が貸与される。

隣国の七星龍の1体、光龍の角の欠片がな。」

騎士団長が首に下げてある小さな茶色の欠片を握りしめる。

ゴッ!!!と騎士団長が眩しい光を全身に纏っていく。

「――なら、俺も本気でいかせてもらう。」

俺もペンダントに魔素を注ぎ込み。

全身に真っ黒な影を纏う。

それと同時に杖にも魔素を充填していく。

「黒水刃・七重<ニグラハイドロ・セプテムプレクス>」

全身の影が次々と刃の形を象っていき、俺の周囲にとどまる。

そしてちょうど7つになった瞬間

「参る!!!」

騎士団長が全身の光を剣に収束させ、

「聖剣・断罪!!!」

剣を振り下ろした瞬間に

ドゴォオオオオッ!!!

収束した光が束となって俺に迫る。

ドッ!!!

だが闇の刃1枚で光の束を切り裂く。

「ばかな!?」

「それしか星ノ獣の魔具<ガイスト>を持ってないあんたは知らないだろうが、

星ノ獣の魔具<ガイスト>には適性があるんだ。」

ドドッ!!と力を使い果たしたであろう騎士団長の胴体に闇の刃が突き刺さる。

「ぐふっ」

騎士団長が膝をついて剣を支えにして必死で体を支える。

ボタボタとかなりの量の血が流れていく。

死なない程度には重症になる箇所に刺したからな。

「俺と白蛇の魔具<ガイスト>は特別に相性が良かったが、

あんたはそうじゃない。

その魔具<ガイスト>の本来の性能はさっきの10倍は下らないだろう。」

「!?

ばかな、そんなことが。」

「あるんですよ。」

「「!?」」

男の声が響き渡る。

「誰だ!?」

騎士団長が叫んだ瞬間、ドッ!!と騎士団長の体が吹っ飛んでいく。

「ごきげんよう。

私は聖騎士団 団長のジェイム・ポーカー

ごきげんよう。」

片目が真っ黒に染まった男が立っていた。

そして騎士団長とはくらべものにならないほどの強い魔素を纏っている。

白髪に鎧は灰色で統一された地味なものだが、周りとは存在感の質が違う。

「それとこれは君には過ぎた代物ですよ。」

ジェイムが騎士団長が首にかけていた首飾りを持っている。

「――あんたエスキート持ちの転生者だな。」

「ご名答。

こちらも知っていますよ。

ヴァシリウス家が転生者を味方に引き入れて我等の計画を邪魔しようとしていることも。」

ジェイムが剣を構える。

ドッ!!!と全身と剣に輝く光を纏う。

「反則だろ。」

「2つも持っているあなたに言われたくはありませんね。」

ジェイムが騎士団長とはくらべものにならない速さで剣を振う。

「闇牙<テネブラデンス>・七刃<セプト>!!!」

「聖剣・断哭」

ジェイムの放った光の束が俺の闇の刃を貫通していく。

「くっ!」

とっさに土魔術を発動して自分の体を飛ばして、ぎりぎりで避ける。

「――いい判断ですね。」

俺の飛んだ先に先回りしたのか、男が俺に向かって剣を突き立てる。

「そうかよ。」

ドッ!!と闇魔術を纏った刃と水の刃を背後から首めがけて振うが、光魔術の強さで消し飛んだ。

俺の右肩から血が垂れてきた。

「無駄な抵抗はやめて

偉大なる聖女に献身なさい。」

「断る、

こっちにも聖女気どりの主がいるんでね。」

「残念です。」

ドッ!!!と俺の脳天に剣が振り下ろされる。


終わった。

こんなところで。


ギイイイイッ!!!

剣が俺の足元から出てきた結晶とぶつかる。

「なっ!」

男が剣を引いて飛び下がる。

「儂が寝とるのを知っての愚行か?」

「うぉっ」

俺が飛び退くと地面から結晶に包まれた中年の女性が現れた。

だが尾てい骨の辺りから触手のようなものが伸びている。

髪は見たことのない青色だ。眼は点をいくつも直線で結んだ複雑な幾何学模様が浮かび上がっている。

それにかなり古めかしい茶色の服を着ている。

さらに違和感があるのは――数百年前であろう服がなぜか劣化していない。

「誰だ、貴様は」

「儂を貴様呼ばわりか」

女が手を振うとジェイムの胴体がズバッと切り裂かれる。

「ばかな!!

ミスリルの鎧だぞ!?」

男の肉体から血が吹き出す。

だがすぐに傷がふさがっていく。

「転生者か。

おい、小僧

この結晶に手を触れろ。」

「は はい」

俺が結晶に手を触れると、パリッ!!と結晶が砕け散り女が出てきた。

「うむ。

小僧 手を貸してやろう。

その前に契約だな。」

女は俺の首を掴んで持ち上げ

「ん」

俺に強く口づけしてきた。

「なっ!?」

「契約完了だ。

あいつを殺せばいいのか?」

「――出来るならな。」

「たやすい」

男の肉体が真っ二つに切り裂かれる。

「が」

ブシャッ!!と男の肉体が粉々になって飛び散る。

それと同時に女の手に血に染まる。

「少し加減を間違えたか。」

「いや、あれでいい。

エスキート持ちの転生者相手なら魔術で細切れにするしかない。」

「いや、普通に手で切り裂いただけだが?」

「――あんたの場合はそれでも問題ない。

再生できない程度に粉々になっていれば問題ないはずだ。」

「それと、周囲をかなりの人数に囲まれているが

あやつらは殺すのか?」

「キヨマサ!

そっちは?」

騎士団員を一通り蹴散らしたセルベスとベルゼブが降り立つ。

「敵じゃない。

正体は分からないが。」

「――ほぉ。まぁいい。

そちらも含めて撤退しようぞ。

あまり転生者以外の者を殺したくはないでな。」

そういえば、星ノ獣の使命の1つが生物の大量絶滅を防ぐことだったな。

「ソルティさん!

撤退を!!」

ソルティさんが俺の声が聞こえたのか、青色の髪の男に一気に炎弾をぶつけてこちらに飛んできた。

「ベルゼブで飛ぶぞ。捕まれ」

ベルゼブが肉体の魔素を収束させて翼を形成し始めたが

「必要ない。儂が飛ばす。

ヴァシリウス領でいいな?」

ドッ!!と俺達の足元に見たことのない空間が広がって吸い込まれた。


ヴァシリウス領 アガヴランス平原

「っ!?」

俺達は突如として草原に投げ出された。

内臓がぐるぐる回っているような気がする。

「ソルティさん」

「気を付けて」

「へ」

気持ち悪さを抑えて何とか立ち上がったところ

ソルティさんが俺の上に落ちてきた。

「ちょっと これ何なの」

ソルティさんが起き上がり辺りを見回す。

「空間の移動だ。

時空魔術というやつで」

青色の髪の女の形をした何かは答えた。

「それに――あなたは一体・・・」

「ヴァシリウスのせがれか?

儂のことは伝わっておらんか。」

「失礼、私はソルミティア・ヴァシリウス

見たところ200年程度は前の服みたいだけれど。」

ソルティさんが一礼する。

「儂は――

アイントロス・オウトクラト

アインとでも呼ぶがいいぞ。

見ての通りこの星の外から来た。」

アインは腰から生えた触手をするりと広げた。


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