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悪役熟女令嬢の婚約者  作者: †真・筋坊主†
第3章 厄災の前 Before the disaster
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第10話 黒幕の手掛かり Clues to the mastermind

王立学院 教育棟第5棟301講義室

「キヨマサ、ちょうどいい。」

エレシウス教授が授業終わりに俺の方へと歩いて来た。

珍しいな。

「お前に課題を出す、単位数は10だ。

魔具<ガイスト>の結晶回路に使われるエライト鉱石の合成について調査し、合成すること。

最低でも1キラグレンは実績がほしい。

セルベスの手を借りても構わんが、学院祭までに頼むぞ。

先行研究はここにまとめてある。」

エレシウス教授がどさっとと紙束を机の上に置く。

「出来なかったらどうするんですか?」

「セルベスを頼れ。

それでも出来なければ合成方法がないから鉱山から取って来い。

国内の分布図もその資料の中にまとめてある。」

「分かりました。」

「それではな。

例の件は潰しておいた。」

あの後、講師が治療棟に運ばれて自白魔術を受けたことが発覚したが、

エレシウス教授が手を回してもみ消してくれたっぽいな。

犯人はベルゼブだが、まぁ俺も共犯だし。出来ることは協力しよう。


2時間後 学院 食堂

周囲は学院祭の準備が進められており、学院内は様々な装飾が増えている。

「・・・わかんねぇ。」

先行研究は一通り読んでみたが、専用の工場設備でしかありえないような気圧や圧力をかけたり

温度を変えたりした実験が多い。さらにエライト鉱石が得られる量が微量すぎる。

10グレンが精々ってところだ。

化学式も複雑で合成方法が検討すらつかん。

こちとらミョウバン結晶しか作ったことないのに。それも転生前だからこっちと物理法則違うし。

「やぁ。何か困りごとかな。」

歩く爽やか人間ことエースが俺の横に座る。

「あぁ。エライト鉱石の合成方法が分からん。」

「――採掘じゃなくて合成?」

「エレシウス教授からの課題でな。10単位だ。」

「へぇ、面白いね。

目途は立ってるの?」

「全くだ。セルベスさんに聞くしかない。

それでだめなら1キラグレイ彫れるまで炭鉱夫だ。」

「うちの領地だと取れないけど、

お隣のグラナダ領が地上でも取れるからオススメだね。

露天掘りは有名だし。」

「あー、グラナダ領は苦手なんだ。

それ以外はないのか?

学院に来る前にグラナダ領の女の子に殺されかけてな。」

「へー、君を殺せる人物か。

でも学院前に君が急成長したと仮定するとラリィちゃんかな。」

鋭いな。実際にあのぐらいの魔術なら今の俺の脅威にはならない。

「知り合いか?」

「多少はね。社交界で何度か会ったぐらいだよ。

そうだな。

――ソルティさんの名前で話を通してもらった方がいい。

他の地域は大体鉱山に入らなきゃいけないし、大変だと思うよ。」

「はぁ・・・分かった。」


学園都市スカラル 北西通り

セルベスさんの屋敷に向かって歩いていると

ドッと少女とぶつかった。

「な、何であんたが。」

最初に俺を殺そうとしたグラナダ家の少女とばったり会ってしまった。

相変わらず生意気そうなガキだな。

だが魔術の才はあるらしく、中等部のある名門の魔術学校の制服を着ている。

「大公家が王立学院に通うのは普通のことだろ。」

今見てみると纏っている魔素<エレメント>も大したことないし、ただの小さい女の子だな。

「ぐぬっ な 生意気よ!

ちょっと強くなったからって!!!

むかつく むかつく!!!」

駄々をこねはじめてしまった。めんどくさ。

「――そういえば、1つ頼みがあるんだが。

領地のエライト鉱石を採掘させてほしい。

学院の課題で必要でな。」

「誰が!!

あんた何かに!」

何かめっちゃ目の敵にされてる。

周りの人は何か、俺が不審者っぽい感じで見てる。

真昼間から幼女を怒らせてるんだから当たり前か。

「――キヨマサ

あなたまさかナンパ? そんな幼い子を。」

ソルティさんが俺をドン引きした目で見ていた。

「・・・違いますよ。

ちょうど良かった。

グラナダ領の採掘を許可してもらおうと頼んでたところです。

ソルティさんからも口添えを。」

「ひぃっ

お 覚えてろ!!」

グラナダ家の少女が走り去っていった。

どこの悪役の捨てセリフだよ。


学園都市スカラル 邸宅

「ふむ、馬鹿弟子め

エライト鉱石の組成が複雑だからと我に投げおったか。

我も今日に明日とはいかん。

並行して進めた方が良いな。

ソルティ 採掘許可を取ってくれ。」

「えぇ。明日中に取れると思う。

それより、キヨマサ

本当にナンパじゃないのね?」

「違いますって。採掘を頼んでただけですよ。」

「――ソルティは必死だな。

まだ婚約中なのだから問題あるまい。」

「そ、それはそうだけど。」

「それにキヨマサは年上の女にしか靡かん。

こやつの瞳孔の動きを見ていれば分かる。」

セルベスさん、ちゃっかり俺の瞳孔とか体温とか血流の流れとか見てるんだよな。

恋の研究と称して人の生体情報を好き放題計ってるし。

「そ、そうなの?」

「ソルティさんは好きですが、別に年上の人が好きってわけじゃ。」

「ゴホン

とりあえずあんまり派手な女遊びは控えてね。

転生者を討滅するのが優先、それは忘れないで。」

「ソルティは真面目すぎるがな。

まだ婚約中なのだから男をとっかえひっかえと遊んでみたらどうだ?」

「嫌よ。私はキヨマサ以外に気を許す気はない。

それにセルベスが恋の研究対象を増やしたいだけでしょ。

自分がやってみれば?」

「――我は研究に忙しいのでな。

それにキヨマサの反応は見ていて面白い。」

背筋に冷たい水が流れるような感覚と共に俺はは自分の部屋に戻った。


4日後 グラナダ領 ロスメデォル鉱山 入口

俺は久々に1人で列車に乗ってロスメデォル鉱山に辿り着いた。

ソルティさんは王都に魔具<ガイスト>の調達、セルベスさんとベルゼブはアレクシア領に転生者探しにいった。

「――何者だ。」

鉱山の入口はちゃんと検問があって封鎖されている。

「キヨマサ・K・ヴァシリウスです。ソルティさんの紹介で来ました。」

「ヴァシリウス家の。エライト鉱石ですか。

余るほどあるのでお好きにどうぞ。」

検問の兵を紹介状で通り、鉱山に入る。

鉱山といっても木々が散々伐採されているはげ山だ。

どうやら露天掘りが出来るためらしく、トロッコを走らせるレールが敷かれている。

「誰じゃ。」

老齢の女性がピッケルを持って歩いている。

「キヨマサ・K・ヴァシリウスです。エライト鉱石の採掘に来ました。」

「おぉ。そうかや。

あっちの方にあるけんねぇ。」

老齢の女性が指さした方へと歩いていく。

「うっひひ」

後ろで老齢の女性が笑う声がした。


グラナダ領 ロスメデォル鉱山 露天鉱床

方言の強いおばあちゃんが教えてくれたところを見ると

エライト鉱石が大量にある。だが、精製されてないせいで土がめっちゃ混ざってるな。

「あ、あんた!

勝手に私の領地に入ってんじゃないわよ!!!」

なぜかグラナダ家の少女がいた。

「――あぁ、それだがちゃんと許可を取ってある。」

俺はグラナダ領の印が押してある書面を見せる。

「そ、そんなの偽造してるかもしれないじゃない。」

「そこまでする意味がないだろ。エライト鉱石だけ採ったらすぐに出ていく。

安心しろ。」

「べ、別に急がなくてもいいんだけど!」

「――そうか。ならゆっくり採っていくよ。」

ガッと検問で借りた小さいピッケルで鉱石を取り出す。

これ1キラグレン分取るのは地獄のような作業量になりそうだ。

「ねぇ、魔術使ったら?」

「その手があったか。

土裂<テラフラクス>」

俺は地面にひびを入れて、少し揺らすようにして鉱石結晶をはじき出す。

「――ずいぶん強くなってじゃない。」

あとは鉱石結晶を拾うだけだ。

やっぱ、魔術に限るね。

「ぼーっとしてないで、拾うの手伝ってくれよ。」

「嫌。」

「――そうか。ならいい。」

ひたすらエライト鉱石を拾っていく。

鉱石がずっしりバッグにのしかかる。

重いな。どんぐらい取っていけばいんだろ。

「ねぇ。ごめんなさい。」

「は? どうしたんだ急に?」

「最初に会った時、記憶がないの。

気づいたら魔術をあなたに撃ってて。

多分 誰かに操られてたかも。」

「――それは転生者か?」

「分からない。」

「犯人に心当たりはあるのか?」

「前日に王都に行ったから分からない。」

「王都で立ち寄った場所は分かるか?」

「離宮のパーティーと、プルートム中央オーテルと、市場にも」

「――なるほど。

ありがとな。」

どうやら王族の身の回りに敵の黒幕がいるらしいな。

道理で俺とベルゼブが王都中を歩いても見つからないわけだよ。

王宮にはソルティさんと一緒じゃないと入れないからな。

「うん。

こ、これでおあいこでしょ。」

「あぁ。」

俺は少女と握手した。

「て、きたな」

「悪かったな。採掘中なんだ。」

「やっぱ あんた嫌い!!」

少女が走っていく。

まぁ、しょうがないな。

だが思わぬところで手掛かりが手に入った。

――敵は王宮に潜伏している可能性が高い。

これでかなり絞り込める。


翌日 学園都市 スカラル 邸宅

「――そうね。確かに王都に転生者が潜伏している可能性は高い。

だから王宮の上も飛んでもらって探知はしたのよ。」

「・・・我がベルゼブの探知をかいくぐっているとは考えにくい。

つまり敵は肉体の魔素を消す方法を持っている可能性が高い。」

ベルゼブが俺とソルティさんとセルベスさんに紅茶を運んできた。

「この星以外の元素を持つ人を探知するのは?」

ベルゼブはささっと魔法陣を書いてしまった。

「うむ、転生者の生活している星・地球とやらの間素<エレメント>を探すか。

あまり期待はできん。」

「・・・そうね。

それと王都の焼死体のような不可解な事件を追っていくわ。」

「素直に新聞に目を通しておく方がよさそうですね。」

セルベスがメイドの取っている新聞を取り出す。

「――もうこんな時期ね。」

ソルティさんが溜息を付く。

「何かありましたっけ?」

「えぇ。ベルゼブは顔を変えられる?」

「肉体を変化させられます。

顔は少し苦手ですが。」

「出来ないわけがないだろう。

我の作った魔人ぞ。」

セルベスがベルゼブを睨む。

セルベスさんて時々こういうパワハラ上司っぽいところあるな

「は、はい。ですがどうやって」

「いつも翼を生やしている感覚を顔でやればいい。

そこらの娘の顔を見てそれを自分に重ねるイメージだ。」

「こ、こうですか。」

ぐぐっとベルゼブの顔が歪む。

表情筋いや骨格ごと変わってる。凄いな魔人の力。

「ベルゼブ、とても見れる顔じゃないから練習しといて。

来週の火曜日までね。

あとキヨマサも来週の水曜日は休んでちょうだい。

一緒に行きたいところがあるから。」

「――はい。」

珍しいな。ソルティさんが俺を誘うのは。

それにいつもは学院を優先させてくれるのに。


翌日 王立学院 研究棟第4号棟

俺はエライト鉱石とセルベスさんが作ってくれた読めもしない文束をエレシウス教授に届けた。

すると「キヨマサ 武闘大会に興味はないか?」

とエレシウス教授に聞かれた。

「参加は考えてませんが。」

「――そうか、私も普段ならあんな野蛮なものをと言うところだが

今回は優勝賞品がな。」

「?」

「教授、まさか学院生を出させる気ですか?」

研究室にいた研究生らしき数人がびっくりしていた。

「キヨマサはそこそこ戦える。

いい魔具<ガイスト>も持っているようだしな。」

「これは流石に学院の行事には。」

他の戦闘用の魔具<ガイスト>と比べても出力が高くて物騒すぎるし。

「いいや、それを使って出ろ。

優勝したら賞品を100万ギル換算で買い受けよう。」

「ひゃ、100万!?」

「教授が言ってるのは学年、研究生問わず無差別級の武闘祭のことだからな。

当然、俺達も出るし。無茶はしなくていい。

毎年、結構な重傷者が出るんだよ。まぁ、学院長の魔術で治るんだけどさ。」

研究室の中からオレンジ髪のベリーショートの研究生が補足してくれた。

「ち、仕方ない。

大将を従えたくば国を乗っ取れだ。」

エレシウス教授がどっかに走っていった。

――まさかな。

「あー、キヨマサだったか。

教授はよく分からないけどエライト鉱石と錬成式はありがとうな。

後で単位認定が出るから教務課で申請書書いとけよ。」

俺は一礼して研究室を出ると、中庭に人だかりが出来ていた。

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