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7話

 ベルフェンの街では、朝早くに神殿の鐘が鳴る。

寝ぼけまなこをこすりながら、ベルフェンの安宿で目を覚ました。


 採掘をしている時の妙な癖で、朝起きたら、二の腕の筋肉の様子を確かめることが日課になっている。むん。やはり、若干腕の筋肉量が減ったか・・・? マッスルポーズをとりながら、俺は今日の予定を考える。


 俺は冒険者ギルドに向かい、ゴブリンの耳を交換しようと考えている。できれば冒険者ギルドにも登録しておきたい。

しかし、この世界では、魔族はほとんど現れないが、この世界の人間属の最大の敵であるといった話を採掘場で聞いたことがある。


 俺の変装のスキルは万能ではない。


 ひとまず冒険者ギルドに登録することは後回しにし、ゴブリンの耳だけを売りに行くことにする。






 魔法を身に着けたせいで気が大きくなったせいか、今回はためらいなく、冒険者ギルドに足を踏み入れることができた。中は冒険者で相変わらずの賑わいを見せていた。やはり採掘ギルドより華やかな様子である。


 「いらっしゃい。今日はどんな御用? 」


 ギルドの受付に行くと、受付嬢が話かけてくる。


 「ゴブリンの耳を売却したい。」


 「ギルドカードを見せてもらえますか? 」


 「いや、俺は冒険者ギルドには登録していない。俺は採掘師だ。」


 採掘ギルドカードを見せながら受付嬢と話す。


 「あら。よくゴブリン討伐できましたね。3つ全部で大銅貨1枚と銅貨5枚ね。どうぞ。」


 やはりというべきか、ゴブリン1体よりもホーンラビット1匹の方が(かね)になるな。

 聞けば、討伐部位以外も同様で、ゴブリンそのものに素材としての価値がないようだ。


 ただ、ゴブリンはオーク同様、他の種族の雌を襲い、繁殖することがある。そのため、討伐依頼が定期的にギルドから出される。その際には、ギルドから冒険者にそれなりの額が提示されるようである。


 「そういえば、ゴブリンの巣の討伐はいつ始まるんだ? 」


 「よくご存じね。ちょうど3日後から始まりますよ。しばらくはカラタン山の道も閉鎖されるので、もし移動するなら、早いうちにね。」


 「そうするよ。」


 冒険者ギルドを出て、明日以降のことを考える。


 とりあえず、しばらくはベルフェンの街に滞在しよう。そして、当日は冒険者のふりをして、森に入ってみよう。ポーションと筋肉魔法があれば、1日くらいはずっと森にいてもどうにかなるだろう、きっと。


 冒険者のふりをするのならば、流石にこの装備では心もとない。街の防具屋で防具を買うことにしよう。


 その後、防具屋で、ほとんど最安値といっていい、銀貨3枚の皮の服を購入した。


 これで少しは冒険者に見えるだろう。明日の準備を整え、いつもの安宿に向かうのだった。





 


 買っておいた朝食を食べる。しばらく部屋でゆっくりした後で、用意しておいた皮の服を身に着け、ポーションを準備、手持ちの銀貨を採掘師ギルドに預ける。


 既に森には数十人という規模の冒険者が森の入り口に集まっていた。


 「これより、ゴブリンの巣の討伐を開始する!それぞれのパーティーには森の異なるエリアを担当してもらうことにする。」


 今回の討伐に参加する冒険者達の中心的な存在だろう。ひと際強そうな冒険者の説明を、俺は離れたところでから聞きつつ、様子を伺う。


 辺りには冒険者以外の街の野次馬連中も集まってきているので、その中にいれば目立たつことはないだろう。


 よく見れば、道具屋の店主も話を聞きにきていた。もしかすると、ここの連中もそういった仕事を請け負っているのかもしれない。


 「それでは、それぞれの担当する持ち場へ配置し、ゴブリンの巣を発見次第、速やかに連絡するように!念を押すようだが、決して深入りはするなよ!!」


 ――冒険者の移動が完了するころに、人知れず森へ分け入っていこう。








 しばらく森の中の人目のつかない場所で待機していると、次第に辺りが騒がしくなっていく。


 「ギェ、ギェ!」


 「総員、戦闘準備!」


 「ギェギェギェー!」


 「回り込め!逃すな!!!」


 「アイスランス!」




 すぐ近くまで戦闘音が迫ってきていることを感じ、冒険者とゴブリンの戦闘を観察することにする。冒険者の戦闘を見るのはこれが初めてではないが、やはりどのパーティーも連携が見事だ。


 剣士や重戦士は言うまでもなく、何も武器を持たない戦士もいる。彼らは、素手でゴブリンを倒すことができるようだ。武闘家というやつだろうか? しかし筋肉任せではない、おそらくは技能によるものなのだろう。


 そして、何といっても魔法だ。以前見たファイアーボール以外にも、様々な魔法があるようだ。そのどれもがゴブリンを圧倒する威力を持っている。


 ファイアーアローのように、ゴブリンも魔法を使うようだが、冒険者の使用する魔法はもっと威力が高そうだ。詠唱時間もゴブリンよりも短い。




 見ている間に、すぐ近くにゴブリンが何体か近づいてくる。幸いゴブリンの中で杖のようなものを持ち、魔法を使ってくるようなやつは混じっていない。


 「グァ、ギェ!」


 「ストレングス!」「マッスルパワー!」「パワーアップ!」


 多少大きな声で叫んでも、目立ちはしないはずだ。筋肉魔法を使用しながら、ゴブリンを一体ずつ慌てずに倒していく。


 何度か戦闘を行って分かったことだが、筋肉魔法とポーションがあれば、その効果が持続する限り、通常のゴブリンに負けることはほとんどないといっていい。


 注意しなければならないのは、たまに矢を放ってくるゴブリンと、魔法を使うゴブリンだ。特に以前のように、途中で矢を受けて、態勢が崩れたところに、魔法を放たれるのはあまりによろしくない。


 ―と。

 


 ズゴーン!!


 急に何かの炸裂音とともに、冒険者の悲鳴が聞こえた。

 「オークだ!ちくしょう、近くにいやがった! ヒールを!!!」


 見れば、3匹のオークがこちらへ迫って来ている。でかい!

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