6話
気を取り直してステータスを確認してみよう。
HP:150 MP:30
ステータスは初期値に戻っているようだ。
しかも、ポーションがない上に、仕事で鍛え上げた筋肉も初期値に戻っているような気がする。
この世界で逞しく生き抜くためにせっかく筋肉を鍛えたというのに、タイムスタンプで戻されてしまうのはいかがなものか。
―そういえば、俺の他のステータスはどうなっている? ?
意識をHPとMP以外のステータスに集中する。
攻撃力:C 防御力:C 筋力:C 体力:C
魔力:ストレングス、マッスルパワー、パワーアップ
魔法防御:C 素早さ:C
思ったよりは悪くない。だが、魔力。魔力が何かおかしくないか? 説明を見る。
「ストレングス」:筋力を向上させる。大きな声で魔法名を叫ぶと更に上昇する。
「マッスルパワー」:筋力を向上させる。ストレングスと重ね掛け可能。大きな声で魔法名を叫ぶと更に上昇する。
「パワーアップ」:筋力を向上させる。ストレングスとマッスルパワーと重ね掛け可能。大きな声で魔法名を叫ぶと更に上昇する。
要するに、「ストレングス、マッスルパワー、パワーアップ」を大きな声で叫ぶことで、大きく筋力を上昇させることができるというものである。
―俺の魔力もしかしてこの魔法に限定されんのか・・・?
どうしようもないので、付近にいるホーンラビット相手にストレングスを試してみる。
「ストレングス!」
ステータスを見てみる。
MP:27 攻撃力:C+ 防御力:C 筋力:C+ 体力:C
―おお。攻撃力と筋力が上昇している。
しばらくして、別のホーンラビットを見つけた。次は2つ唱えてみよう。
「ストレングス!」「マッスルパワー!」ステータスを見てみる。
MP:21 攻撃力:C++ 防御力:C 筋力:C++ 体力:C
―これは。
またしばらくして、別のホーンラビットを見つけた。今度は3つ唱えてみる。
「ストレングス!」「マッスルパワー!」「パワーアップ!」ステータスを見てみる。
MP:12 攻撃力:B 防御力:C 筋力:B 体力:C
―なんと。
合計3匹のホーンラビットを倒し、ありがたく角と肉を頂くのだった。
ストレングス、マッスルパワー、パワーアップそれぞれの消費MPは3。全て重ね掛けすると、攻撃力と筋力がCからBに1ランクアップするようだ。これはかなり使える魔法かもしれない。
もう少しこれらの魔法を検証する必要があるだろう。
できればゴブリンで試してみたいものだ。そのためにもポーションの準備が必要か。
一旦ベルフェンの街まで行って、採掘師ギルドに預けておいた銀貨を取りに向かおう。
ホーンラビットの肉はやはり、実にジューシーだった。
明くる日、ベルフェンの採掘ギルド内で、受付のおばちゃんと話をしようとしていた時のこと。
俺は、屈強なる採掘師たちがゴブリンについて話をしているのを聞いた。
「聞いたか? ゴブリンの巣が見つかったらしいぜ。」
「そうらしいな。今度冒険者どもが討伐に向かうって? 」
―ついにゴブリンの巣が見つかったようだ。
「おばちゃん、これギルドカード。この前預けておいた銀貨を5枚ほど引き出したい。」
「ちょっとあんた、しばらくカラタン山に行くのはやめときな。」
「ゴブリンの巣が見つかったんだってな? 心配すんな、しばらくはトアレの山で稼ぐさ。」
採掘ギルドを出る。当然向かう先はカラタン山だが、念のため、ポーションは購入する必要があるだろう。
向かう先は先日ポーションを購入した道具屋である。
「ポーションを5つほどくれ。」
道具屋に入るなり、俺は道具屋のねーちゃんに話しかける。
「銀貨5枚よ。ゴブリン退治にでも行く気? 」
「いや、ゴブリンの様子を少し見に行くだけだ。」
「今あの森は危険よ? 今度私も冒険者たちのお手伝いに向かうわ。」
「 アンタ、戦闘できるのか? 」
「後方支援よ。ポーション配るのよ。といっても、ポーションで治せる範囲は限りがあるけど。治療師たちも出るようよ? 」
「あなたもポーションの摂りすぎには注意しなさい。中毒になったら、神官か治療師がいないと治せないわよ。毒消しポーションはポーション中毒には効かないのよ。」
「ああ、気を付けるよ。」
夕方になり、俺はゴブリンの森に来ていた。
ゴブリンの森のなるべく浅い場所でゴブリンを狩るつもりだ。
「ストレングス!」「マッスルパワー!」「パワーアップ!」
結果、ポーションを2本ほど使用し、計3体のゴブリンを狩ることができた。
前回はゴブリン1体にポーション2本をかけてしまったことを考えると、確実に効果はあるようだ。
魔法の有用性をゴブリンで実際に確認することができた。
ゴブリンの耳も忘れず切り取る。
ベルフェンの街に帰ったころには既に夜更けになっていた。