4話
カラタン山へはベルフェンの街を出て、ちょうど北東の道を進むようだ。
ちなみに採掘を頑張ったからか、少しだけレベルが上がり、HPが少しだけ上昇している。
土の道をしばらく歩いていくと、鬱蒼とした森が姿を現した。
森の中に入り、その辺りを散策していると、さっそくゴブリンを発見した!外見は大したことなさそうだが、果たして。
「とうっ」
俺はおもむろに剣でゴブリンに切りつける。
「ギャギャ!? 」
ゴブリンに傷をつけるも、表面を切り裂く程度である。咄嗟に避けられてしまった。
あれ? 思ったより動き速くないか?
「ギッ!」
ゴブリンは手に持っているボロボロの剣で切り付けてくる。
「何!? 」
回避が間に合わず、咄嗟に左手で防御するが、腕がざっくりやられてしまった。
HP:110/160。
まずいな、今の動き。追い切ることができなかったぞ。
――だが、俺は気にせず追撃する!
ザク。
しかし、今度は腹を着られてしまう。
HP:15/160。
―まさか、こんなにゴブリンが強いとは! 俺はとにかく袋からポーションを取り出し、それを飲む!!
HP:115/160。何とか態勢を立て直す。
しばらくの激闘の後・・・
「はあ、はあ、はあ。」何やかんやでゴブリンを討伐することができた。
HP:20/160
ありえねー。ゴブリン強すぎるだろ。かれこれ30分くらい戦っていたか?
ただヒットアンドアウェイをひたすら繰り返す、華麗なる戦法でギリギリとは。ポーションは2本とも飲んでしまった。
持ってきた銀貨のことを考えると「タイムスタンプ」を使用しなくて良かった。さっさとベルフェンの街に戻ろう。
採掘ギルドに戻り、再度おばちゃんに声をかける。
「・・・ゴブリン強すぎたんだが。」
「おや、あんた。生きて帰るとはね! 討伐したのかい? 」
「ポーション込みでなんとか。」
「やるじゃないか。ゴブリンの耳は冒険者ギルドで銅貨に変えてもらえるよ。」
いわゆる討伐部位というやつか。というか、ホーンラビットの肉より安いだと? ?
「ゴブリンの耳はそのままにしてきた。」
「ゴブリンの耳はあまりお金にならないからねぇ。」
そうだ、カラタン山の採掘を請け負うのはどうか?
「ところで、カラタン山に行きたいんだが。乗り合い馬車はどこで? 」
「ちょうどカラタン山の採掘を募集中だよ。明日のお昼過ぎには馬車が出るよ。」
ベルフェンの街の安宿で一夜を明かし、翌日にはカラタン山に行ってみるか。
翌日、俺が馬車乗り場に辿り着いたころには、既に何人かの屈強な採掘師と護衛の冒険者が集まっていた。
冒険者がそれぞれ自己紹介を行う。
「俺はアルってんだ。前衛で剣士をやってる。このパーティーのリーダーだ。」
黒い髪の毛に、やや幼さの残る顔立ち。だが、腰にロングソードを持ち、その表情は自信に満ちていた。
「私はミーシャよ。魔法使い。」
栗色の髪の毛に、こちらもやや幼さの残る顔立ち。背は少し小さめだ。滑らかな紺色のローブを身に着けている。
「俺はタムだ。アルと同じく前衛でタンクだ。」
このパーティーの中で最も背が高い。褐色の短髪で、活発そうな顔立ちである。大きな縦を持っている。
「わたしはルイナ。弓使いよ。」
少し控えめな口調。アルと同じかそれよりも少し低いくらいの身長。緑色の長髪が特徴的だ。
採掘師の連中よりずっと若そうだ。聞けば4人パーティーの銅級冒険者らしい。
冒険者ギルドは、鉄、黒鉄、銅、銀、金、白金とあり、その上に、ミスリル、オリハルコンと続くようだ。その年で銅級とはかなりやるらしい、とその場の他の屈強なる採掘師が言っていた。
―パッと見どう考えても俺たち採掘師の方が強いだろ。どうなっているのか。
カラタン山への道中、日が暮れかけたころ。
――やはりというべきか。
「ギャギャ」「グゲ」「ギャ」
といくつものゴブリンの鳴き声が聞こえてくる。どうやら囲まれたようだ。
「―戦闘だ!」
アルが叫ぶと、
「了解!」
ミーシャ、タム、ルイナがそれぞれ馬車を囲むように位置するのが見えた。
相手ゴブリンは6匹。
「そらっ」
アルがまずゴブリン1匹を鮮やかに一撃で倒すと、
「おらよ!」
ルイナとミーシャを守るようにしていたタムが、ゴブリン2匹をシールドで吹っ飛ばす。
そこにすかさず、ルイナが矢を2発打ち込んでゴブリン1匹を倒す。
「―詠唱が完了したわ。離れて!」
先ほどからブツブツと目を閉じて集中していたミーシャが魔法を放つ。
「ファイアーボール!」
複数の火球がゴブリン4匹にすっ飛んでいき、ゴブリンを焼き尽くす。ゴブリンどもは数秒で炭になった。
アルは短剣で倒れていたゴブリン2匹の耳を器用に処理し、それを袋にそれを入れる。
この世界で初めて見たが、魔法の威力たるや。我らが採掘師の屈強な筋肉でも、あれにはお手上げだろう。
途中野営をすることになったが、道中の金は採掘ギルドから依頼されているらしい。
外はそう寒くもなく、冒険者は外で見張りを、俺らは馬車の中か、近くの地面で寝っ転がり野宿を行う。乗客に貴婦人や子どもなどがいれば、もう少し冒険者が必要かもしれないが、今回の乗客は採掘師だしな。
俺は広い場所で寝るが良かったから、外で寝ることにした。地面のゴツゴツとした岩の感触を感じながら、眠りについた。翌朝、体がバキバキになっていたのは言うまでもない。
そんなこんなで、翌日ちょうど昼を過ぎたころにはカラタン山にたどり着くのであった。