2話
道なりに歩いていくと、少し遠くに村が見えてきた。
しかし、腹が減ったな。随分と長い間腹が減るという感覚を忘れていたが、こいつはきつい。力が出ない。何か食うものはないか?
以前は常に魔素を取り入れることができたために、腹は減ることはなかった。だが、今はそういうわけにもいかない。
―ていうか金は。装備に金ないんかい!
これでは村に入れないではないか。早急に金を稼がねばなるまい。
近くの草原をしばらく歩いていると、角の生えたウサギのようなありふれた魔物を見た。RPGでよくある、ホーンラビットというやつだろうか? 幸いこちらには気づいていないようだ。
俺はホーンラビットに襲い掛かかった!だが、一撃では仕留められない。何度か攻撃を仕掛けるうちに、反撃に遭う。
「痛っ!」
ステータスを見ると、なんと20ポイントもHPが減っており、防御した腕から血が出ている。
「痛っえんじゃ!」
一発でかいのを入れ、ようやくホーンラビットを倒す。
―すまぬ、許せ。
痛い思いをしたが、角と肉を手に入れたのはでかい。何とか短剣で切り分け、村に向かう。
その村は一言でいえば、のどかな村だった。木造の家、水車、いくつかの店や民家、そしてツルハシの看板がひと際目立つ少し大きめの建物などがあった。あの看板のある建物は何だろうか?
村の中にいた村人に話しかける。
「これを買い取ってもらうことはできないか? 」
「あ~、あんちゃん、見ない顔だな? どっから来た? 」
「ちょっと遠くの街だ。」
「それなら、そこの肉屋によってけ。角も買い取ってくれるだろうよ。」
肉屋に行けと言われ、そのままそこが肉屋だという、すぐ近くの店に向かうことにする。
「ごめんくださーい。」
決して訪問販売ではない。
「はーい。」
中からおかみさんが出てくる。
「ホーンラビットの肉と角を売りたいんだが。」
「あら。そうね。今の時期なら、大銅貨1枚と銅貨3枚ね。」
「すまない。ここらで飯屋はないか? 」
「ちょうど向かいに酒場があるから、そこで何か食べられるわよ。」
「ああ、ありがとう。」
そう言って貨幣を受け取り、今度は酒場へ向かう。
その酒場は、酒場にしては小さく、どことなく居心地の良さを感じた。
「いらっしゃい。」
酒場の人の良さそうなオヤジさんが声をかけてくる。
「大銅貨1枚程度で食べられる物はないか? 」
「なら、ちょうどホーンラビットを仕入れたところだ。そいつの肝と肉の香草煮込みはどうだ? 」
「じゃあそれで頼むよ。」
ホーンラビットの肉を売って、その料理を食べるのである。ホーンラビットは、この辺りの特産品なのだろうか。
「この辺で金を稼ぐなら何すればいい? 」
俺が質問すると、
「採掘だな。ここの近くにはトアレの山がある。採掘ギルドへ行けば、ツルハシを貸してもらえるだろうよ。」
どうやら採掘をすれば金を稼ぐことができるようだ。
「冒険者ギルドはないのか? 」
「冒険者だあ? ここらには大した魔物は出ねえからなあ。遺跡の周りにホーンラビット、山にイモムシオバケが住み着いてるくらいだぞ。」
「へえ。遺跡とは何だ? 」
「さあな。何かの遺跡らしいぜ。トアレの遺跡。だが入り口は瓦礫で埋まって、村の連中も中に入ったやつはいねーな。 この辺りはトアレって場所だから、遺跡も山も村もみんなトアレだ。」
―俺が最初に見た遺跡がそれだろうか?
「トアレの山では何が採れるんだ?」
「何、大したもんじゃない。鉄鉱石さ。だが、ここらで一番稼ぎがいいだろうよ。」
飯を食い終わればさっそく採掘ギルドへ向かおう。きっとあの看板が目立つ建物がきっと採掘ギルドだろう。
ちなみに、ホーンラビットの肉はかなり美味かった。
「ここか? ごめんくださーい。」
「あらお客かい?いらっしゃい。」
採掘ギルドの中には、受付のおばちゃんがおり、中にはちょっとした武器屋のようなものもあった。そちらの店主は今は不在のようだ。
「採掘ギルドに登録したいんだが。」
「あいよ。これに名前を書きな。」
「それだけ? 」
「それだけさ。」
「すまないが、代筆をお願いできるか? テラという。あと、何か本を貸してもらえないだろうか? 」
「そりゃ構わないが、何をお探しだい? 文字の練習かい? 」
「そうだ。何、子どもが読めるような絵本でいい。」
「あいよ。本はそうさね、あたいのガキの絵本を貸してやろう。ーこれを持っていきな。」
そう言うと、受付のおばちゃんは近くの本棚から絵本を取ってきてこちらに手渡す。個人の家を採掘ギルドとしても運営しているのだろう。
「ああ、ありがとう。また返しに来る。」
「採掘の方法は山にいる親方に聞きな。それと、これを首から下げときな。」
銅のプレートをもらった。これはギルドカードだろうか。
「トアレの山はあっちだよ。道は一本道さ。」
なんとも適当な案内を受けるが、山へ続く道は明らかなのでそれで問題ないのだろう。
俺はトアレの山まで向かうことにした。
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