プロローグ
俺は今ダンジョンの、いわゆる中層くらいの場所にいる。
ここは魔物がほとんんどおらず、冒険者もめったに入ってくることはない。
―にも拘わらず、俺は今窮地にあった。
「どこへ行くの? 」
女は言う。大きな目、柔らかそうな色の薄い金髪、どちらかといえば小柄である。髪は肩にかかるくらい。その服装の紋様には見覚えがある。あれは神殿のものだ。魔法使いだろうか、上品な服を着ている。きっと俺より年下だろう。相当な美少女である。
「誰だよ、アンタ? 」
誰だ、こいつは? 俺はゆっくりと、後ろに下がる。
「あなた、魔族のくせに、生意気なのね。」
女は一歩ずつ前に進む。
「いや、人間なんだが? 」
これは嘘だ。スキルでステータスを人間に偽造している。しかし、これを見破ることができる人間は数少ないはずなのだが。
「嘘ね。」
女はこちらを睨みつける。
女はすっと指を動かし、何も言わずにそこから鋭い光を打ち出した。
ジュッ
気が付くと俺はダンジョンの壁に追い詰められていた。顔のすぐ傍に小さな光の矢のようなものが着弾する。
「うぉっ!」
ーなんだこの女は。
この世界に来て魔法を何度か見たが、基本的に詠唱を必要とする。しかし、今のは指先の動きだけ。今の俺ではまず間違いなくこの女に勝てないだろう。
「リアリトア様!」
上からぞろぞろ白い騎士のような恰好をした人間がやってくる。目の前の女はリアリトアというらしい。
「ガディウスの予見の通り、魔族を見つけたわ。まさかこんな所にいるなんてね。」
予見ってなんだ? そもそもこいつらは―
「あなた達は下がって。私が捕える。」
指から今度は光の輪のようなものが飛び出し、俺の体を縛る。
「なんじゃこりゃ!? 」
これは何だ? 光輪のようなもので、触れることができるようだ。触れてみると、少し温かい感じがした。
「・・・こいつ本当に魔族なんですか? 見た感じ、魔力がほとんど感じられませんが。」
後ろの騎士がそう言う。
「そうね。でも油断しないで。」
―どうしてこうなった?
いざとなれば転移してしまえばいいが、できればやりたくない。痛い思いはしたくはないのだ。それに今は情報が欲しい。
「なあ、あんたら何者なんだ? 」
「だまれ!」
後ろの白い騎士の恰好をした男が言う。
「大人しくついて来ることね。」
女はそう言った。
俺はため息をついた。
――今日はついてない。
場の緊張がふと揺らいだ、そんなときだった。
下から誰かが来る。コツ、コツ、コツ。足音が響く。
「なんだ? お仲間か? 」
「しゃべらないで。誰か下に潜っていたの? 」
女が騎士に確認するが、誰も頷く様子はない。
そちらを凝視すると、影から男が姿を現した。目は赤く、爪は長い。魔族に違いなかった。
「あん? 誰だ、てめえ? 」
男は俺の方を睨み、そう言った。
「何で俺以外に魔族がいやがる。」
女がその瞬間、何本もの光のヤリ(でかい!)を男の方へ飛ばす。
男はそれを腕で防ぐ。
「逃げなさい!」
女は騎士に叫ぶ! だが、騎士達は困惑している。
「遅えよ。」
男は飛び上がり、黒い、杭状のものを騎士に向かって投げつけると、大きな白い防壁が騎士たちを覆う。
だが、その黒い杭は難なくその防壁を打ち破った!
黒い杭が突き刺さった騎士はその場に崩れ落ちる。女は白い紋様の結界のようなもので黒い杭から身を守っていた。
「さすがは聖騎士。だがよ。」
男は姿を消す。
―俺の目では追いきれない。
だが女には見えているようだ、女は咄嗟に男に向かって光の剣をふるう!
「―あっ・・・」
しかし、男は黒い杭のようなものを禍々しい剣の形に変え、女より早く、結界ごと女を真っ二つに切り裂いたのである。
俺を拘束していた光輪は冷たくなって砕け散った。
―俺が、やるしかない。
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