1/66
序
どんよりとした空に、寒い空気。草木も枯れ、荒れ果てた大地が広がり、ただただ瘴気だけがあふれる。そんな薄暗い世界で魔族としてもうずっと長い間生きてきた。―不死とは。不死とはこんなにも辛く孤独なのか。探し求めていた死者蘇生の術。探し求め、それをようやく手に入れたというのに。蘇生させるべき魂は既にこの世界になかった。数多の敵を打ち滅ぼし、ついに世界の全てを手に入れたその男は、誰もいない世界で朽ち果てることもなく彷徨ことしかできなかった。
しかし、ある時。―ああ、何か声が。懐かしい声が聞こえた気がした。
目覚めると、その男の目の前には優しい風に揺れる緑の大地があった。