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第1話 起動


「チャンスは残り3回です」どこか楽しげに声は告げた。


 ……これが聞こえるということは、ぼくは命の危機に瀕しているらしい。


 初めて聞く音声だが間違いない。

 それは心身が危機に瀕した際に電脳内で作動する安全機能ソフトウェア──シロタ・フラッシュバックのアナウンスだった。


 ブルーを基調としたほの明るい電脳空間の中、場違いなほどにこやかな声がすらすらと続ける。


「シロタ・フラッシュバックをご利用いただき、ありがとうございます。当ソフトのバージョンは3.03、テスト中のβ版となります。当ソフトをインストールした段階で、ユーザーはテスト協力に同意したものとされます」


 どこか聞き覚えのある明るい声音にぽかんとしていると、アナウンスはさらに続けた。


「では、機能説明に入ります。当ソフトは、危機に陥ったユーザーの意識を0.3秒間遮断いたします。その間、半径30m以内の人物の電脳に強制アクセスを行い、直近3分間の認知をユーザーの電脳内に再現可能となります。その情報をもとに、危機に対処してください。再現のチャンスは3回となります。それでは、誰の認知を再現するかお選びください。チャンスは残り3回です」


 ──困った。


 お選びくださいもなにも、ぼくは今、現状をまったく理解していないのだ。

 なにも思い出せない。ぼくはどうして危機に陥っているんだ。こんな状態で命の危機と言われても、どうすればいいかわからない。


 ぼんやりと覚えているのは、子供部屋のソファで本を読んでいたあたりまでだ。


 ぼくも中学三年生になったのだし、そろそろ自分の部屋がほしい。

 そう思いながらどうしても言い出せなかったぼくを察してか、姉さんが両親にお願いして、子供部屋を分けてから数ヶ月。


 姉さんが移ってから手広になった子供部屋で、ぼくは本を読んでいた。

 そのとき、「ユーリ」とぼくを呼ぶ姉さんの声がして、ドアがノックされた……ような気がする。


(あの状況から、どうやって命の危機に陥るんだ……?)


 考えるぼくを、楽しげな声が急かしてきた。


「早くなさったほうが良いですよ。いくら電脳内時間が圧縮されていても、実世界の0.3秒はすぐです」

「わ、わかりました。じゃあ、ぼくの認知を再現してください」


 とりあえず、現状把握が最優先だ。


 ぼくがそう言うや否や、ぱあっ、とあたりが光に包まれた。



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