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クロとシロと、時々ギン  作者: 田古 みゆう


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好き、かもしれない(8)

「ちょっと、シロ先輩。やめてくださいよ。髪が乱れるじゃないですか」


 そう言いながら、乱れた髪を直して少し膨れてみせる。ちょうどその時、ドアのノックと共に萌乃が、3人分のカップをトレーに乗せて戻ってきた。


「お待たせしました」


 萌乃はチラリと私に視線を向けてから、トレーの上のカップを先輩二人に手渡した。最後に残ったものを私の前に置く。


「明日花さんの分も、新しいものをお持ちしました。こちらをどうぞ」


 そう言ってカップを取り換える際、萌乃は、私の耳元に口を寄せた。私にだけ聞こえる声で囁く。


「先ほどは取り乱してすみませんでした。明日花さんは、白谷さんではなく、八木さんがお好きだったんですね」


 萌乃の囁きに、思わず目を見張る。そんな私に、萌乃はニコリと微笑んで、すっかり冷めてしまったカップをトレーに乗せると私から離れていった。


 私が、シロ先輩を好き?


 萌乃の不意打ちの言葉が、私の耳から離れない。私は無意識に髪を撫でつけた。先ほど乗せられたシロ先輩の手のひらの重みが蘇る。重くなく、痛くなく、丁度良い加減で私の頭に乗せられたそれは、決して不快などではなかった。シロ先輩の満足そうな笑顔も思い出され、むしろ、あのまま頭をポンポンとされながら、もっとあの笑顔を見ていたかったとさえ思ってしまう。


「クロ? どうした? ぼうっとして?」


 シロ先輩の声に、我に返る。白谷先輩が不思議そうにこちらを見ていた。白谷のそばに立つ萌乃は、私と視線を合わせると、意味ありげにニコリと笑みをこぼす。


 居心地の悪いその視線から逃れるように、そっと顔を背けると、ガッと頭を掴まれた。


「打ち合わせ始めるぞ」


 シロ先輩が私の頭を掴んだまま、覗き込んでくる。不意打ちのシロ先輩のアップに、私の心臓は大きく撥ね、ものすごい勢いで脈打ち始めた。シロ先輩が近すぎる。


「は、はい。すみません」


 口籠りながら思わず下を向く。シロ先輩のアップが視界から消えた。安堵の息が不意に漏れる。


 シロ先輩とはいつも一緒に行動をしているのに。こんなこと、今までにもいくらでもあったはずなのに。


 鳴りやまない鼓動に戸惑いつつ、そっと顔をあげる。隣に座っているシロ先輩をチラリと見ると、今まで見ていた横顔が輝いて見えた。


 ギュッと目を瞑る。鎮まれと思っても、いつまでも激しく胸を打つ鼓動。


 これってもしかして……。


 そっと目を開いて、もう一度シロ先輩をチラリと見る。やはりシロ先輩が輝いて見えた。

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