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クロとシロと、時々ギン  作者: 田古 みゆう


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卒業すんなよ(1)

 営業先からの帰り道、少し遅めのランチを取ろうとファミレスの入口を開けると、途端に甲高い喧噪が私たちを包む。


 入口で店員に二名であることを告げると、「空いているお席へどうぞ」と言われて、私は振り返った。


「どこにしますか?」

「どこでもいいけど、なるべくあそこからは離れたい」


 そう言って、シロ先輩は、眉根を寄せながら店の中央付近、ドリンクバーの近くに陣取る女子高生の一団を顎でしゃくる。


「じゃあ、窓際の方にしましょう」


 女子高生から少しでも距離を取り、席に着いたが、あの年頃特有のキャッキャとした話し声は、店内中に響き渡り、あまり意味がないようだ。


 それぞれが適当に注文を済ませると、シロ先輩は椅子の背もたれに体を預けるようにして凭れ、深くため息を吐いた。彼女たちの声にイライラしているのかもしれない。


 私が席を立ち、ドリンクバーに二人分の水を取りに行くと、女子高生たちの席では、「ご卒業、おめでとうございま~す」という、華やいだ声とともに、ちょうど色紙らしきものを渡しているところだった。


 そうか。もう、そんな時期なのか。社会人になり、春が忙しいという意識はあれど、生活環境が変わったり、人間関係が変わったりという、自身の環境の変化にはドキドキしなくなったことに思い至る。


 もちろん、うちの会社にも春には新入社員も入ってくるし、部署の異動なんかもあって、新しい人間関係の構築は必要になるのだが、学生の頃程、生活環境や人間関係が目まぐるしく変わることはなくなった。


 私は、可もなく不可もなく、平凡な学生生活を送っていたのだが、どちらかと言えば、新しい人間関係を構築するのに時間がかかるほうで、学生の頃は、春が少し苦手だった。卒業のシーズンは、特に憂鬱だった。友人と離れ離れになるからというよりは、次の新しい関係構築に少々怖気づいていたのだ。


 私は、次のステップへ進むよりも、その場に留まっていたい派なのだ。だから、社会人になってからの、あまり変化のない人間関係には、少なからずホッとしている。特に、入社以来、常に行動を共にしている同じ一課のシロ先輩のことは、一緒にいると心地良いとさえ感じている。


「お水、氷なしで良かったですよね?」

「ああ。サンキュ」


 コップをコトリとテーブルに置き、声をかけると、シロ先輩は、背もたれから体を起こし、相変わらず盛り上がっている女子高生たちへチラリと視線を向けてから、コップへと手を伸ばした。

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