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クロとシロと、時々ギン  作者: 田古 みゆう


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むかし歩いた道(3)

 私の指摘に、シロ先輩は一瞬ポカンとした表情を見せたが、すぐに吹き出した。ひとしきり笑い終えたシロ先輩は、スッキリした顔で言う。


「わかった。気をつける」


 私は、その笑顔にドキッと胸が高鳴るのを感じた。思わず、じっとシロ先輩の顔を見つめて固まってしまう。そんな私の耳に、「あら、まぁ。いいわねぇ。ほほほ」と通り過ぎていく人の笑い声を滲ませた声が届く。


 その声で我に返った私は、慌ててシロ先輩から視線を逸らした。ドクンドクンという心臓の音がうるさいくらいに耳に響く。


(鎮まれ、私の心臓)


 心の中で必死に念じていると、シロ先輩が私の顔を覗き込んできた。突然視界いっぱいに広がったシロ先輩の顔に、さらに鼓動が激しくなる。まるで全身が心臓にでもなったかのようにドキドキが止まらない。


 シロ先輩は、そんな私の様子を不審に思ったらしく、怪しげな表情で見てきた。


「どうした? 顔赤いぞ? ……熱でもあんじゃねーのか?」


 そう言いながら、私に向かって伸ばされたシロ先輩の手が額に触れる直前、私はその手を避けるようにして慌てて飛び退いた。


 その行動に、さすがにシロ先輩も驚いたようだ。目を見開いて固まってしまっている。私は咄嵯の行動に自分でも驚きつつ、何とか誤魔化す言葉を口にする。


「だ、大丈夫です。何でもないですから」


 自分の気持ちを悟られたくなくて誤魔化そうとしたけれど、上手い言葉が出てこない。焦れば焦るほど、言葉というものは出てこなくなるのだということを、この時初めて知った。


 黙り込んでしまった私たちの間に、沈黙が流れる。先に動いたのはシロ先輩だった。


「まぁ、大丈夫ならいいけど。でも、少しあそこで休んでいこうぜ」


 そう言って、指差したのは神社にあるベンチ。私は促されるままに、シロ先輩と並んで腰掛ける。境内にある池を眺めながら、昔と変わらない静寂に包まれたこの場所の雰囲気に浸っていると、シロ先輩が唐突に口を開いた。


「あそこに、ものすごくデカい木が立ってたのにな? なくなったんだな」


 懐かしむような遠い目をしたシロ先輩のその言葉に、私はハッと息を呑んだ。


(そうだ。あの場所には大きな桜の木があったんだ)


 この場所を訪れた時に感じた違和感の正体に気がついて、私はいてもたっても居られなくなって立ち上がる。


「そっか! 大きな木! そうだ。そうだ」


 独り言のようにブツブツと言いながら歩き出そうとした私の腕をシロ先輩が掴む。


「おい。どうした、クロ」

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