表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

第四話 入学式 I

9月。時間が迫ってくる。

9月から12月まで学園で授業を受ける事となる。そしてそれは、内申点にも影響があり、いい成績をとっていくと報酬が貰われる。

その報酬というのは、分からない。

だが、狙うのはそこじゃない。

『悪魔』と呼ばれたとしても、俺はその学園で成り上がってみせる。

刻限は直ぐそこまでやって来ている。

魔導書を片手に持ち、指輪をはめる。

私服のまま王都に存在する学園。

魔術学院アカデミーに行くのだ。


アルテフェア王国のほぼ中心部分に存在し、そして王宮と同等の大きさを待つ建物。

その学園の名は、“アルテフェア魔術学院アカデミー”。

名門高き場所であり、有名どころでは帝国の皇帝直々に仕えている、宮廷魔導師団のメンバーはほとんどがこのアカデミーの卒業生。

誇り高きアカデミーは、国そのものの象徴ともなりうる存在。

だが、そのライバル校も多数存在する。


西国に一校、東国に一校、天空に一校。

どれも名門高き学園、学院である。

特に天空では魔術内での誇り高き、魔術賢者の孫が学院長をやっているほどの、名高い場所。


(おそらく今年も、入学生は多いはずだ)


8月25日。試験は突破した。魔法だけで何とか審査員の前で披露し、握手喝采となり、入学許可が安易に降りた。ここまで上手く行くと後々怖い。

そんな思いでその日を終え、それからの後日。そして時間は流れて9月になったばかりある。

前日に届いた制服に着替える。資金に関しては、俺の実力を知った審査員の1人が免除をしてくれる様に頼んだ。

学園内での初めの味方。担当は飛空魔法担当らしいが、俺は扱うことは出来ない。


(……慣れん)


ネクタイ式であり、カーディガンをワイシャツの上から着る。胸元にはまだバッチがついていない様で、恐らく学園に入った時にクラス決めがあるはずだ。

それで入れるクラスが分けられる。

またもや黒い渦が心に現れる。今俺は、不安がっている。緊張しているとも過言ではないが、不安の方が大きい。

両親は何とか。俺が抗っている姿を見てくれてはいる。だが、何も言わない。

言わないでくれている方が、楽ではある。

心臓の鼓動が久々に脈を打っている。

落ち着かせるため、胸元に手を当て、息を吸ったり吐いたりを繰り返す。

交互にやっていき、自分に言い聞かせる。


———大丈夫、大丈夫だ。


と。だが、心なしか心が軽くなった様な気がする。

綺麗さっぱりとはいかないが、ある程度の不安は取り拭えたはずだ。


そして入学式の9月1日。

遅刻しないように早めに出て、両親たちに「行って来ます!」と元気よく言い、手を振る。

久々に手を振ってくれた2人に、心が温まり、先程までの緊張は無くなる。

アルテフェア王国に続く一本道を歩き、空を見上げた。曇り空ひとつない晴天。

まるで空までもが味方をしている様な、そんな気持ちとなる。


『緊張してんのか?』

「いや、別に」


嘘とも言えるし、本当とも言える。

クラスがどうなるか分からない。そして魔法を変えることはできない。

禁忌魔法を扱えば、おそらく『悪魔』だと見破られる。試験の時には、審査員たちに見破られたと思う。


一本道を歩きながら、俺はそう思った。


♢♢♢


「アデルさん。この間の少年、なぜ入学させたのですか?」


教職員たちが集う職員室。何の特徴もないアデル。穏やかそうな顔で、生徒達からの信頼も厚い彼は、学園の試験の日に禁忌を扱うロイスを、入学させたのか。それを新人の教師、ダムラーは聞く。

その問いにアデルは穏やかそうな笑みを浮かべた。


「あの子は確かに、禁忌を扱う。だから、なに。あの子なら、もしかしたら。常識を覆す事が出来るかもしれない。そう思っただけさ」

「は、はぁ」


アデルのその答えに、ダムラーは疑問を浮かべた。

アデルだけ、何かを見透かしているかの様に。

そんな彼の言葉を嘲笑う人が1人いた。


「ぷっははは! アデルさん、なにを言っているのですか? 『悪魔』がどうやってそれを出来る? 笑わせるのもやめて下さいよ!」


頭のてっぺんが禿げている男性。カーポは40代を過ぎているが、人を見下すのが好きな人物。

『聖騎士』の職業を持っており、その力を教師として教えている。だが、裏では他人を見下す。

それを至福としているカーポに、教師達は呆れていた。


「全くあの人は……」

「まぁ、いいさ。今年の入学生にはもしかしたら。彼を倒す者が現れるかもしれない。そしたら、あの性格も直るさ」


穏やかそうに見える笑顔だが、謎の威圧さも兼ね備えていた。

アデルのその言葉に、ダムラーは再び疑問を浮かべた。


(確か、名前はロイス・ハウクソン。『悪魔』に魅入られた少年)

「アデルさん、そろそろ入学式が始まります」

「あぁ、そうですか。なら、急ぎましょう」


もうすぐ入学式。講堂にて合格した入学生一同を歓迎し、そして演説。もといは学園長の挨拶だが、クラス発表と担当する教師の説明。

入学したものからしたら、最初の一大イベントなのだ。

教師達も講堂へと急ぎ、入学生達の顔を見る。

保護者同伴する者もいれば、いない者もいる。

それは殆どが来れなかった理由が多いが、13歳ともなれば他人に自分の親を見せたくない年頃。

だが、それは個人の意見に過ぎない。本来は仕事や都合が合わない者が大多数だ。


講堂へ急ぐと新規の顔立ちがずらりと並んでいる。

それを教師達は1人ずつの顔を見る。どの子が自分のクラスになる事は、既に知っている。名前と顔を一致する様に見るのも教師の務め。


(さて、ロイス・ハウクソンはどこに……)


アデルは講堂のステージの方で、入学生達を見ており、特に気になったのがロイス。

あの、短くもなく長くもない髪型、黒色の髪色で艶のある髪質。

鋭くもなく柔らかくもない瞳に、物寂しさを感じさせ、それとは裏腹に晴天な空を思わせる水色。

体格も痩せ細っているわけでもなく、太っているわけでもない健康的な体。

特徴的な声はないが、低くもなく高くもない、中性的な声質。


そんなロイスが見当たらない。


(……遅刻、か?)

「アデルさん、あの少年いませんね」


距離が遠いからか、顔をしっかりと確認できていないのが理由なのか、定かじゃないが、一応目はいい方である。


「遅刻、ですかね?」

「うーむ、何かあったか、本当に遅刻か……」


この学校では()()()()()()()()


遅刻したものは問答無用で、退学にさせられる可能性がある。


(…………思い違いか? いや、何か凄まじいものを兼ね備えている気がする……。もう少し待ってみよう……)


♢♢♢


一方、ロイスはと言うと。


(…………何で、こうなったんだっけ)


何故か、木に宙ぶらりんになっていた。

訳の分からない状況。視界が真っ逆さまとなり、頭に血が昇る感覚もしている状態。


『なにをしている? 遊んでいるのか?』

「違うわ! と言うか、お前も感じただろ?! 何か強い風が当たって、吹っ飛んだんだよ!!」


ましてや一時的に頭を強打し、気を失っていた。

13歳の体が吹っ飛ぶほどの強風。それは本当に自然的な強風なのだろうか? 台風や嵐が通ったと言う感じはない。晴天だ。晴天すぎるぐらい晴天だ。


『遅刻じゃないのか?』

「分かってる! とにかく、起き上がらないと」


地面に手がつかず、起き上がる事が出来ない。

足もまともに使えず、このままの状況じゃ遅刻となってしまうのは、安易に想像ができる。

下手したら血が昇ってしまい、視界が混濁してしまい、再び意識を失ってしまいかねない。


(ちくしょう……、誰がやったんだよ)


ロイスの中では自然的な風じゃなく、人為的に起こされた風と考えている。

理由は二つ。

・魔力が微かに残っている。

・この辺地域ではあまり嵐は起きない。


数十年の間、嵐なんて全く起こらず、大きな自然災害もないからだ。


(………よっと)


やっとの思いで起き上がることに成功したが、制服は木の葉っぱがくっつき過ぎている。

新品な制服が汚れてしまったが、休んだら折角試験を受けた甲斐が無くなる。


(あの人が入学許可を下ろしてくれたんだ。行かなきゃ!)

「キュー」


近くに小鳥が倒れていた。

地面に倒れているのを発見し、バタバタと羽を動かしている。

ロイスは近寄り、その小鳥を抱えた。


「どした? どこか痛むか?」

『……どうやら、怪我している様だな』

「え、わかるの?」

『これでもガーゴイルだ』

「いや、理由になってねぇし」


ガーゴイルの言う様に、赤色の小鳥は怪我をしていた。

ロイスにとっては一大事。治癒魔法を使えないロイスからしたら、どうすればいいのか迷うばかり。


『薬草で作った治癒薬は?』

「……! それだ!」


マジックアイテムという名の、袋を取り出し、そこからお手製の治癒薬を取り出す。

袋の中身は空間が出来ており、殆ど制限なく扱える。

コルクを外し、その薬草薬を小鳥に飲ませる。即効性が高く、すぐさま治る万能薬でもあり、森の奥に行って採った甲斐があった。


数分が経った後、小鳥は完全に飛べるようになった。ロイスは安心し、力が抜ける。


『……どうする? 学校は』

「行くさ。まぁ、遅刻だろうけど」


地面に座っていたロイスは立ち上がり、再び一本道を歩くようにした。すると、赤色の小鳥は「キュー」と鳴きながら、後を追いかけていく。


「え、一緒に行くの?」

「キュー!(もちろん!)」


どうやら懐かれたようだった。

肩に乗るぐらい小さな赤い小鳥。もふもふとした小鳥の名前を知るため、ロイスはステータス画面を表示する。


(…………不死鳥……。フェニックスの子供か)


名前が書かれておらず、ロイスは咄嗟に“キューちゃん”と言った。

キューちゃんは嬉しそうに「キュー!」と鳴いた。

ロイスに相棒が増えた。


ーーーーーーーーーーー


ロイスのステータス。

【名前】ロイス・ハウクソン

【運命】悪魔

【職業】ーー

【状態】ーー

【レベル】52

【HP(体力)】480/500

【MP(魔力)】350/350

【固有魔法】闇魔法・血魔法・毒魔法・死魔法

【相棒】キュー(不死鳥)

【称号】ーー

読んでくださりありがとうございます!


この話を気に入っていただけた方、「面白そう」「期待できそう!」と思った方は、ブックマーク、広告の下にある評価をお願いします!

モチベーションとテンションが爆上がりします!


応援のほどよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ