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俺は新(異)世界の神となる! ~そのタイトル、死亡フラグにしか見えないんで止めてもらえませんか~  作者: 獅東 諒
第一章 初めての降臨。

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降臨したら、人間でした。(前)

「これは…… 酷いね」


 眼下に広がる惨状に、思わず言葉がでた。


「そうですね。それについては同意しますが、ここ(・・)が使えないと、キミ、終わりますよ?」


 薄々感じてたけどさ。サテラさん、主神(アイツ)のこと嫌いですか?

 そのせいで、主神に選ばれた俺にも当たりがキツい感じがする。

 まあたしかに、ここが使えないと【神力】を得る手段がなくなってゲームオーバーだ。


「しかし、ここまで酷いとは、もう少しこう、形が残ってると想像してたんだけどね。神殿」


 前の文明が滅ぼされたときに地形がかなり変ったのか、神殿跡には巨大な断層ができている。神殿は廃墟などとはお世辞にもいえない状態だ。この場所、今はかなりの高地で、ここ自体は見た感じ山頂みたいになっている。元々はもっと標高の低い場所で、平地だったんではないだろうか?

 崖の反対側も急な坂になっていて、崖の下のさらに下の辺りになってやっと草が生えはじめているような感じだ。以前、ヨーロッパの森林限界は標高1800メートルくらいだって聞いたことがあるから、この辺りは2500メートルくらいかな? でも、気象条件や木の種類によっても森林限界って変わるよな。

 断層で崖の上になっている場所から下を見ると、元は都市があったのではないかと思わせる大量の岩の塊が、そこかしこに転がっている。

 俺の中で、主神(アイツ)の邪神認定度が高まってます。


「ここは、大崩壊前に一つの大文明国家があった土地です。今では見る影もありませんね。大規模な地殻変動による地震に洪水、地崩れなどの天変地異に襲われ、その後に起きた星降りによって文明は崩壊。多量の死者がでました。生き残ったわずかな者たちも、高地になってしまったこの土地を捨て方々(ほうぼう)へと散っていきました」


 隣にいるサテラさんが説明してくれるが、原因、主神(アイツ)だよね。


「地上の者たちも、星槍(ほしやり)を使って天界に攻撃ができるのではないかなどと試してみたり。飛空船(ひくうせん)で天界に攻め込もうなどと考えなければ……、従属神(わたし)たちも、そのようなことは止めるようにと巫女や神官たちに神託を下したのですが……。手遅れでした」


 俺の表情から考えを読んだのか、サテラさんが一応のフォローを入れた。地上の奴らもかなり過激だったんだね。でも、その原因を作ったのもたぶん主神(アイツ)なんじゃないだろうか。

 あの、考えているんだかいないんだか分からない軽さで、地上の者たちを変なふうに追い込んだんじゃないだろうか。俺も、なんだかんだでいま追い込まれてるしね。

 正面からサテラさんを見て、いまさらながら気が付いたんだが、よく見るとサテラさんの装いが、天界に居たときと違っていた。

 天界でのサテラさんの格好は、まさに騎士という感じの完全防備のフルプレートメイルだったが、今はそれなりに簡素な物に変っていた。


 腰の剣帯に挿した剣はそのままだけど、胸と背中を守る胸甲板(ブレストプレート)背甲(バックプレート)に肩を守る肩甲(ポールドロン)。肘から手首までを守る肘当(クーター)手に篭手(ガントレット)。腰の辺りを守る草摺(タセット)尻当て(キュートレット)に膝と足を守る肘当て(パウレイン)すね当て(グリーブ)鉄靴(サバトン)という、俗に言うビキニアーマー状態だ。まあ、(よろい)と甲の間は、下に着込んでいるクロスアーマーで守られてるから、エロくは見えないよ……いやマジで。マントも着けてるしね。


「何か、不埒なことを考えてませか? いまの地上で、普段の装備でいたら目立ちすぎますからね。見ての通り、装備の見た目の質も落としてあります」


 震えがくるような冷たい瞳で見つめられてしまいました。さりげなく剣に手をそえないで欲しい。

 確かに、言われてみると、使われている部品には、天界にいたときのような輝きがない。


「それよりもキミ。まずは地上でのステータスを確認してみたらどうですか? 現状の確認を(おこた)ると……死にますよ」

 その間はなんですか? サテラさん。さっきの話といい、地上(ここ)よっぽど危なそうな気がしてきたんだけど。

 俺はサテラさんにうながされるままに、ステータスを確認してみた。


(ステータス)

〈大和大地 32歳〉人族 男

創造神 (?ゃ?吟???)

守護神 (サテラ)

生命力  37/37

魔力   53/53

力    25

耐久力  24 + 5

耐魔力  36

知力   25

精神力  40

俊敏性  23

器用度  28

スキル:探査(サーチ)、武の才、魔法の才、(いくさ)の才、菓匠(かしょう)の才

種族スキル:考案

装備:クロス・アーマー、マント


  おおっ、確かに天界に居た時と表示のされ方が違ってる。人間としての能力なんだ。

 天界では世界運営シュミレーションゲームみたいだけど、地上だと|ロールプレイングゲーム《RPG》みたいになるのかな? RPGもそれなりに好きだから問題ないが。

 ところで創造神が普通の(???)と違って、パソコンの文字化みたいになってるけど、問題ないのかな? 別の世界から来たからか? あっ、守護神がサテラさんになってるよ! これは、ちょっと嬉しい……か?

 能力値だけど、正直なところ平均がどの位か知らないから、能力の底上げがあるのか判らないな。でも、魔法使い系のステータスなのかな? 精神力が頭抜けてるし、生命力より魔力が高いしね。


 ああ、スキルは結構良いのかな? 【武の才】、【魔法の才】、【戦の才】は何となく分かるけど、【探査(サーチ)】ってなんだ? それに、【菓匠の才】って!? 仕事か? 俺の仕事なのか? もしかして、これが俺が本来持っていたスキルなんじゃないだろうか。……まあ、これはなんとなく分かる。

 最後に装備が、クロス・アーマー、マントってなってるけど、……おおっ、いまさら気がついたが服が替わってるよ! まるでファンタジー作品で良く見る旅人みたいだ。あっ、本当にそれみたいなもんか。

 俺のデータはこんな感じだけど、聞いた方が良さそうなのは【探査(サーチ)】だけかな。

「スキルに【探査(サーチ)】ってのが有るんだけど、これはどういうモンなの?」

 サテラさんは、またマニュアルを手に持ち、ペラペラとめくっていく。あれどこから出てくるんだろう?

「――そうですね。私を見て【サーチ(探査)】を使ってみてください」


(サーチ)

〈サテラ・ 21歳〉人族 女

クラス:騎士Lv 24

生命力  117/117

魔力   103/103

力    45

耐久力  45 + 30(装備修正)

耐魔力  40 + 25(装備修正)

知力   40

精神力  40

俊敏性  45

器用度  30

スキル:剣術Lv31、槍術Lv25、光魔法Lv17、風魔法Lv19、戦術Lv15、戦略Lv3、武の才、魔法の才(光・風)、戦の才

種族スキル:戦闘

装備:カルドゥーン、ライト・プレートアーマー、マント


 なるほど、自分の能力値は【ステータス】で見られるけど、他人は【サーチ】でないと見られないのか。

 あれ? 何か色々俺の能力値と違うぞ!? 数字的な意味でなく。


「サテラさん。なんだか俺の能力値と違いがあるんだけど?」

「人間のスキルでは自分の能力値以外は神に関する情報は読み取れませんよ」

「いやそれじゃなくて」

「もしかして、レベルの事ですか?」

「そう、それ! スキルの中にレベルがある物とない物があるし、サテラさんには、クラスってのが有って、〔騎士〕にレベルが付いてる」

「それに対して、キミのステータスにはレベルのあるスキルがない。そうですね? 理由は簡単です。【才】と付いているスキルは、その名のとおり、その才能を持っているということです。私でしたら、【武の才】があるので、剣術と槍術のスキルレベルが才のない者の倍は早く成長します」


 そういうことか。あれ? っていうことは、俺は才能持ってるけどただの人ってこと?


「それから、騎士というのは、私の地上での立場です。キミにクラスがないのだとしたら。キミは、まだ『何者でもない』ということですね。それから、私に『さん』付けはやめなさい。はじめにも言いましたが、かりにも目下の(もの)に敬称を付ける必要はありません。サテラと呼びなさい」


 サテラと呼びなさいって、言ってる顔に嫌そうな雰囲気が滲んでるよ、また命令形だし。それよりも、ちょっと待って!? 俺、三二年も生きてるんだけど『何者でもない』んですか?

 ……この世界(ここ)に来て一番ショックだったかもしれない。俺のこれまでの人生って……。


 一応、一〇年も働いてたんだけど? 菓子工場だったけど、流れ作業じゃ駄目でしたか。たしかに、職人って仕事じゃなかったけどね。【菓匠の才】って宝の持ち腐れでしたか?

 ……地味に沈んでしまった。そういえば、俺の種族スキルは【考案】だったけど、サテラは【戦闘】ってどこの戦闘民族ですか? 怒りで限界突破して金髪になったりするんだろうか? まあ冗談は置いておいて、農耕民族と狩猟民族の違いみたいなものかな。(ちなみに、心の中で『サテラ』と考えた瞬間に、嫌そうな顔をしたように見えたんだけど。気のせいだよね? ね? でも、怖いから心の中ではやっぱりサテラさんでいこうと思います)


「取りあえず、狼人族の娘を見付けませんか、この近くに居るはずです」


 ショックを誤魔化そうと、バカな事を考えていたらサテラさんに地上(ここ)に来た目的を思い出さされた。


「そう、そうだった。それが目的で来たんだったよね。で? どうやって探すの」

「ふぅ……」


 サテラさんが、額に手をやりため息をつく。あれ? デジャビュ。前に見たよねこれ。なんか呆れられてる?


「狼人族の娘は、『ペルカ』といいましたか。その名前を意識して、ここから【サーチ】してみなさい」


 ああっ、【サーチ】ってそういう用途にも使えるんだ。かなり便利なスキルなんじゃないか【サーチ】。


(サーチ)


 えーっと、ペルカ、ペルカ、ペルカっと。崖の上で、ペルカの名前を唱えながら下を見回す。おおっ、なんか目の前に矢印が! えっ、こっち?

 俺は遠くのほうを見回していたんだけど、矢印は真下をさしてる。恐る恐る崖の上から顔だけ出して真下を見下ろしてみると、いました! 崖のつけ根の部分に上の方を向いて倒れてる。えっ、これってもしかしてここから落下して倒れてるのか!?


「下だ、急ごう!」


 俺は、サテラさんの返事を待たずに駆けだした。

お読みいただきありがとうございます。


お気に入りいただけましたら、星評価や感想などいただけますと、書き手としてモチベーションが上がりますのでよろしくお願いいたします。


Copyright(C)2020 獅東 諒

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