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俺は新(異)世界の神となる! ~そのタイトル、死亡フラグにしか見えないんで止めてもらえませんか~  作者: 獅東 諒
神様Help!!

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筆頭剣闘士決定戦! ……アンタ誰?

「え゛ッ!?」


 思わず声が漏れたが、……この世紀末覇者はどこのどなたですか!? 

 ハッキリ言おう、ムリです!!

 以前、見れば思い出すだろうと言ったが、無理! コレはムリ!!

 これが、反対側の控え通路から進み出てきたデビッドを見た俺の素直な感想です。

 いや、だって、面影無いですよアレ!!

 俺の記憶に残っていたデビッドは確かに背が高く筋肉ムキムキだった。が、いまの彼はさらに一回り以上大きくなっていて、ムキムキと云うよりガチッ、ガキッ! ムキッ!! といった感じだ。

 顔つきも以前は身体付きに対して優しげな感じだったが、いまは顔色も悪いし、そこに配置された部品のことごとくが固く鋭利な印象で、子供などは目にしただけで引きつけを起こしそうなほどだ。

 俺は、チラリと控え通路からこちらを見ているバルトスに視線を向けた。


『……本当にコレで合ってる?』

『どう見たってデビッドだろ。まあ、魔堕ちしたぶん少しはゴツくなった気もするが、オメエ目は大丈夫か?』


 いや、アンタのほうが『目は大丈夫か?』だろ!!

 まあ神は外見だけで人を見てるわけじゃないみたいだけど、アンタだっていま一応人間でしょ!


 ちなみに、今回は間違いなくデビッドが出て来るだろうということで、アンジェラさんも来ていてバルバロイのとなりに控えている。

 彼女は、久し振りに夫であるデビッドを確認して、ほふぅといった感じで頬を染めてデビッドを見ていた。

 あれっ? 本当に俺の目が変なの?

 いや、彼女はたぶん筋肉フェチだ、デビッドを愛していることは確かだが、その愛のきっかけは筋肉だったろう。……いやすみません、俺、そう思わないと、この置いて行かれた感が払拭できないです。ハイ。


 デビッドの進み出てきた控え通路では、ルチアが含みある視線でこちらを見ている。

 彼女は相変わらず淫らさを感じさせる濡れた視線をこちらに送っている。その中にチラチラと獲物を狙う蛇のような光が見え隠れして見える。

 昨日は一日休養がとれたのだが、戦う相手の関係者ということもあって、ルチアがこちらに接触してくることは無かった。

 俺としては、ヴリンダさんや、彼女を通してこの地を見ているという識神と話をしてみたかったので、識神の神殿を訪ねてみたかったのだが、バルバロイに止められてしまったのだ。

 理由を聞くと、不正を疑われるので試合前後に関係者が接触するべきではないとのことだ。

 俺は知らなかったとはいえ、ヴリンダとの試合はある意味出来レースになってたみたいだから仕方ないか?

 なんだかバルバロイが識神の神殿に出向くのを避けているようにも感じたんだ……。俺、誤魔化されてる?

 じつは決勝の後、ヴリンダさんが接触してくるんじゃないかとも思ってた。それがなかったのもその関係だったらしいので、すべてが嘘ではないんだろうが……。なんか納得いかん。

 しかしバルバロイとヴリンダさんの間では既に話しはついているらしいので、まあ問題はないのかな? 俺としては聞いてみたいこともあったんだけど、大局的には確かに問題ないしね。

 ちなみに、いまヴリンダさんはアレーナの席で観客としてこの試合を観戦していた。彼女のとなりには背の低い巫女らしい服装をした少女が座っている。

 ヴリンダさんはその少女の頭を撫でながらなにやら話をしている。

 ヴリンダさんアンタ試合見る気ありますか? 完全に意識がその少女に向いているように見えるけど。先程からチラリともこっちを見てないし。


 今回の試合も前回の試合と同じく追撃剣闘士(セクトル)呼ばれる装いだ。ついでに言うと今回も兜はなしだ。

 これについてはエンターテイメントの要素が強いからだろう。防御に関しては問題あるが、俺としては視界が広いのでこちらの方が戦いやすい。


「これより今年度の筆頭剣闘士を決定する戦いを開始する! 右方より進み出るはこの度のトーナメントを制した幻のジパングより訪れし戦士、ヤンマー。左方より進み出るは10年もの長きに渡り筆頭剣闘士の座を守り続ける生ける伝説デビッド!! 共に偉大なる教練士(マギステル)バルトスに見いだされし戦士である。その名を汚さぬ戦いを期待する! それでは構えられよ!」


 良かった、今回はお互い様だ。ある意味兄弟弟子だしな。

 しかしデビッドは、「起きてますか~!」と言いたくなるほど虚ろな表情で、視線はどこを見ているかハッキリしないし、生気も感じない。

 なんと云うかホラー映画のフランケンシュタインとかを思い出してしまう。


『こいつは――本当にギリギリだな。……それでこれまで表に出てこなかったのか』


 バルバロイの苦々しさをはき出すような声が俺の頭に響く、考えづらいが昨日は空気を読んだらしく俺とヴリンダの会話に割り込まなかったのだが、今日はそのつもりもないようだ。

 ま、自分が頼んだことだしな。


『どういうこと?』

『奴を見てどう思う?』


 バルバロイは俺の問いに問いで返してきた。


『意識が無いように見えるけど』


 突っ込む状況でもないので素直に感想を述べる。


『使徒化寸前だな。魔堕ちしたといっても、その身は人のままだ。しかし魔堕ちしたことによりその身体には邪気が際限なく蓄積していく、普通の人間ならば邪気に侵され狂気で精神的にも肉体的にも破滅するんだが、神に目を付けられるような存在……、そうだな、分かり易く云うなら、オメエの部屋にあるあの()()()とかいう奴に、オメエと相性の良い地上の存在ってえのが映し出されるだろ。ああいう奴らだ。そういう奴らが魔堕ちしたとき、邪気を溜め込むと自分を護るために邪気に対応できる身体に変化するんだ。まるでサナギから蝶に変るようにな。まっ、この場合はサナギから蛾とたとえたほうが良いか。つまり、いまの奴はサナギのような状態ってことだ』


 てことは、表面上は人の形を保っているけど、その中では邪気に対応するために不必要な部分を無くしその分新たななにかをその身に宿そうとしているってことか。


『本当に大雑把な説明ですね。確かにいまの彼は使徒化寸前の意識も朦朧とした状態でしょうが、意識がおさえられている分、彼が身に付けた技量はなんの制約も無く放たれるでしょう、気を付けなさい』


 おおぅ――今度はヴリンダさんが神通(しんつう)を送ってきた、一応こっちにも気を掛けてたのか。

 相変わらず隣に座る巫女らしき少女を掻い繰りしているが。なんだあの小動物を盲目的に可愛がる女学生のような状態は。あれ一昨日(おととい)俺と戦った人だよね? ね? しかも、戦女神筆頭なんだよね!?


「準備はよろしいか、それでは――はじめ!!」


 マズッ、俺の意識がほかへ回っているうちに試合が始まってしまった。

 ………………

 …………

 ……

 あれ? リアクションが……。

 はじめのうちはデビッドの出方を伺ってみようとも思っていたんだが、……デビッドは剣を構えたまま動きません。


「どうした! 打ち合えー、つまんねーぞ!!」


 誰かが叫ぶと、追随する声がガヤガヤと湧き上がりアリーナは騒然とした雰囲気になっていく。

 ……しかたがない、突っかけてみるか。

 俺はその場で軽くステップすると、そこから一気に間を詰める。


「…………!?」


 デビッドの剣が届く範囲に入った途端、俺の背筋に怖気が走った。その瞬間バックステップすると目の前を銀光が通過する。

 ブワリと剣圧が身体を通り過ぎた。


「ぐわッ!」


 何だ? 今のは!?

 通り過ぎた剣圧が、したたかに俺を打った。

お読みいただきありがとうございます。



Copyright(C)2020 獅東 諒

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