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俺は新(異)世界の神となる! ~そのタイトル、死亡フラグにしか見えないんで止めてもらえませんか~  作者: 獅東 諒
第一章 初めての降臨。

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復活したら、巫女ゲット!?(前)

 ……苦しい。

 喉が詰まるような感覚に襲われ、俺は意識を目覚めさせた。

 暗い、暗い闇の中。

 それは、久々に感じる息苦しさ。

 子供の頃。俺は、タートルネックの服を着ることができない少年だった。

 なぜか首が絞まるような息苦しさに襲われたからだ。

 小さい頃、ずっとそれが不思議だった。

 あるときその疑問を両親にぶつけたところ、俺は逆子で生まれてきて、しかも喉に臍の緒が絡まっていたそうだ。さらそれが原因で息が止まっていたそうで。すぐに助産師に逆さに吊されて、尻を叩かれて息を吹き返したのだという。

 両親はそれが原因じゃないかと笑っていた。


 イヤイヤイヤ、笑い事じゃないからそれ!


 その話を聞いて以来、俺は『死』というものを漠然と頭の隅に置いて生きていた。

 だからだろうか。

 自分が生きていたという、存在の証しのようなモノを世界に刻みつけたい。『多くの他人(ひと)に認められる何者かになりたい』という思いが強かったのは。


 生まれたときの話を聞いて以来、俺は色々な物事に挑戦する子供になった。

 それで何かが成せたのかというと、結局そんなことは無かった。

 俺は俗に言う器用貧乏というやつで、様々な物事を普通の人よりも早く人並み以上にできるようになるものの、その先の高み……運動ならば大会で優勝したり、学問や芸術ならばなにがしかの賞を受けるような成績を残すことはできない。そんな人間だったのだ。


 様々な物事に挑戦し……それでも、ある一点の壁を越えることが出来ない。

 そんな事が何度も何度も続き……俺の想いは擦り切れてしまった。

 多くの他人(ひと)に認められる何者かになるんだという想いが……。

 だがそれが……別の世界とはいえ叶えられるかもしれないというチャンスを得た……。

 それこそ、神として名を知らしめるというチャンスだ。

 だが結局、俺にはそんな力も無かったのだ。


 苦しい……、喉が詰まって息ができない……

 ああ、もしかしてこれは夢だろうか……本当の俺は世界に生まれ落ちることもなく、そのまま息絶えていたのではないだろうか……これは息絶えるまでの泡沫の夢なのではないか……


「……起きなさいヤマト」


 優しい。まるで、母親が幼子を慈しむような声が掛かった。

 すーっと、息苦しさが消えていく。伸し掛かるような暗い闇が引いてゆき、暖かい光が(まぶた)の向こうに広がり、それまで俺を苦しめていた想念が淡く消えていった。


「……起きなさいヤマト」


 なんだか、サテラさんの声に似てるような気がするが……まさかね。

 閉じられた瞼の裏に、態度がキツい教育実習生のような雰囲気を漂わす彼女の顔が浮かぶ。


「起きなさい! ヤマト!!」


 おわッ!!

 冷たい声音が、俺の精神に凍った氷柱でも当てたような衝撃を持って覚醒をうながした。

 これは間違いなくサテラさんだ!

 俺は、バネが弾け戻るように上半身を立て、声のした方向を見る。


「……身体は、大丈夫そうですね」


 ……なんだ? 俺の目の前に居るのはサテラさんだよね? なんだか表情がいままでと違って柔らかいんだけど? なに? この慈愛に満ちた感じ……まるで女神様に見られているような感じだ。いや、女神なんだけどね。


「あれっ? 俺……生きてたの?」

「いえ、しっかり死にましたよ」

「ヘッ?」

「説明のときに最後まで聞きませんでしたので、言いませんでしたが、【人化降臨】では地上で死亡しても神力(しんりき)を消費して天界で復活できます」

 何――それ? 何で、そんな大事なことちゃんと説明しないの? 確かに、(さえぎ)った覚えはあるけどさ。それに目が覚める前に何か嫌な夢を見てたような気がするんだけど、驚きで忘れちゃったよ。

 いや、いまはそれじゃ無いだろ!!


「ペルカは? アースドラゴンはどうした!?」


 俺は、寝ていた場所からサテラさんに近寄ろうと、飛び上がるように身体を持ち上げ……、あれっ? 立ち上がれない。ヘロヘロヘロっとした感じで、下半身の力が抜けて座り込んでしまった。

 急いで腹を触って確かめる。

 ……大丈夫、腹に穴は開いて無い。――ということは……腰が抜けてるみたいです。

 うわぁー、情けねー。


「もう少し、そのままにしていなさい。彼女たちは無事です。アースドラゴンの関係した事件は解決しました」


 目の前のサテラさんは、俺が(たおさ)れる前までの冷たく厳しい雰囲気が抜け落ちて、ボーイッシュでクールなお姉さんといった感じだ。


「ヘッ? どういうこと!?」

「アースドラゴンは私がサクリと斃しました」


 うっわー、アッサリと殺された俺に、さらにアッサリと討伐報告がきました。えっ、アイツ結局、出落(でお)ちだったの!? やっぱりサテラさん容赦(ようしゃ)ネェ-。

 あれ? そういえば復活したってことみたいだけど、さっき復活には〈神力〉が必要って言ってなかった? 【人化降臨】したから俺の神力1だったような気がするんだけど。


「ねえ、サテラさん。さっき復活には神力が必要って言ったけど、俺、神力1だったよね?」

「そのことですが、アースドラゴンを斃したあと。アナタを生き返らせるため、ペルカに巫女になって貰いました。――それから、私のことはサテラと言うようにお願いしたと思うのですが? あと、私のことを考えていると感じられるときにも敬称が付けられていたように感じましたが」


 うわっ、油断して思わず。さすが女は鋭い。いや、女神だからそれ以上に鋭いのか!?

 しかし事件を解決したらペルカに俺の巫女になってもらうはずだったけどさ。サックリと殺られちゃった俺を見て、よく巫女になってくれたな。


「心配することありません。意識はもうろうとしていたようですが彼女は貴男(ヤマト)が、懸命に戦っていたことを理解していましたよ」


 俺の表情を読んだのかサテラが言う。

 ペルカに強要したわけではないということか。


「でも、巫女と(つな)がるには神殿が必要なんじゃないの?」

「ええ、ですから取りあえず。ヤマトがあのとき使っていた剣にラインを(つな)いで御神体とました」

「……? どういうこと?」

「神殿というのは、御神体を安置する場所です。なので、御神体が有ればあとは別に彼女の家でも神殿になります。まあ、正式な神殿と違い、天界との繋がりは少々弱くはなりますが」


 何だろう、(だま)された感が半端ないんだけど。


「それより、ステータスを見てみたらどうですか? たぶんレベルアップしていると思いますよ」


 まさか、俺そんなに活躍した覚えないよ。でも、まあ。


(ステータス)

大和大地〈主神代理〉

神レベル 2

神力 23

神スキル

【降臨】神力10:【人化降臨】神力2~:【神託】神力1:【スキル付与】神力1:【加護】神力1:【神職就業】神力1:【種族加護】神力5~10:【天啓】神力2


(人化降臨ステータス)

〈大和大地 32歳〉人族 男

創造神 (?ゃ?吟???)

守護神 (サテラ)

剣士レベル0

生命力 37/37

魔力  53/53

    ・

    ・

    ・


 オオッ! 本当にレベルが上がってる。しかし、神力23って多いの? 少ないの? 微妙な数字じゃない? つぎに神スキルも【種族加護】と【天啓】ってのが増えてる。

 さらに、人化降臨のときのステータスも見えてるけど、〈剣士レベル0〉だって。ゼロだからかステータスには変化は無いみたいだね。でも、あの戦闘だけで剣士のレベルが付くって事は、【戦の才】が関係してるんだろうな。


「ホントに、レベルが上がってたよ。神力が23ってなってるけどこれって多いの? 確かペルカを初めて見たときになかなかの神力が得られるって言ってたよね?」

「そうですね。何事もなければ――そうだったでしょうね……」


 なに? その間は?


「先ず、ヤマトが死にかけていたために、私がペルカとヤマトの【神職就業】の儀式を執り行いました。それで10。その後【人化降臨】の〈天界復活〉の後付けで50ほど神力を消費しました」

「一応聞いておくけど、もし俺が死なずに契約できたらどの位の神力消費で済んだの?」

「【神職就業】は自身で行えば1です。天界復活の付与は【人化降臨】ときに付加すれば5で済みます」


 上手く事が運んだら神力82も溜まったのか。確かに、そのくらいの数だとなかなかって気分になるよね。

 そんなことを考えていた俺を、何やら神妙な面持ちでサテラが見つめていた。


「神力はまだ心許ないですが……。ヤマト、地上に神殿もでき、導くべき子供達も得ました。あなたに与えられた主神としての仕事を覚えてもらいます。――どちらにしても今は動けないようですし、ちょうどいいでしょう」


 あ、やっぱり俺の腰が抜けてるのお見通しでしたね。

 サテラは俺の横にゆっくりと移動する。そして右の(てのひら)を前方に差し出した。

 すると目の前に液晶テレビがにじみ出すように現れる。本来ならば俺の部屋にあるはずのあの40インチの液晶テレビだ。この現れ方は彼女が倉界からものを取り出すときと同じだ。でも、これはおそらく転送だよね? それとも俺が復活する前に部屋から持ち出したのだろうか?

 さらに彼女は、いつの間にか手に持っていたリモコンを手渡してきた。

お読みいただきありがとうございます。



Copyright(C)2020 獅東 諒

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