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閑話 出会い

「アリシア。今日はあなたのお父様が帰ってくるのだからしっかりしてちょうだい」

頬をシルクのすべすべした布で拭き取られる。


意識を戻すとアリシアは椅子に座っていた。

目の前にはチキンのトマト煮とバケットが置かれている。


「ちょっと聞いているの?」

少々呆れたような声がした。

「ママ…」

「ママじゃなくて、お母様と呼んでと言ったはずよ」

厳しくも優しい母の声。


ああ、これはいつもの夢だ…。

アリシアは直感した。

「はい、お母様」

「よくできました」

母は私のそばから立って自分の席に戻った。


「アリシア、今日から私達は貴族の身分になるのよ。こんな狭い家じゃなくて立派なお屋敷に住むの!」

嬉しそうな母の声

「お屋敷…?」

「そうよ、これも全部お父様のおかげなのよ」

「お父様も一緒に住むの…?」

「ええ!今からお父様を迎えにいくわよー!」

「やったー!」


ふと瞬きをすると気づかぬうちに人混みにいた。

人混みに飲まれないよう母の手をぎゅっと握り目をつむった。

瞬間。


あたりを包んでた人の熱がさっと引き、母と自分の方へ歩き出す影が見えた。


「パパー!!!」

母の手をサッと放しその影に向かって走り出す。

カシャカシャと鎧が擦れる音とともに私の体は父に抱き抱えられた。


「おー!アリシア!!少し見ないうちに大きくなったな」

「うん!」

「まったくこの子ったら…、人前ではお父様と呼びなさいと」

すぐ後ろからは母の声。


「英雄ジークフリート万歳!!!」

誰かの声が上がり、青い空に色とりどりの紙吹雪が舞う。


「ありがとう!あんたは俺達の恩人だぁ!!」

黒龍殺し(ドラゴンスレイヤー)ジークフリート!」

「おめでとう!ジークフリート伯爵の誕生だぁ!」


大勢の声援と父の匂いに包まれアリシアは幸せそうに目を閉じた。



「ねえ、やっと帰ってきたのにどこへ行くって言うの⁉」

再び開けると屋敷の門の前で言い争いをしている父と母の姿があった。


「すまない、俺にはやり遂げなきゃいけないことがある」

母の目を見ずに言う父。

「だからってアリシアもこんなに幼いのに…、王様だって少しはお休みを下さるはずよ!」

父をまっすぐ見つめ声を張り上げる母。


アリシアは急に不安に襲われた。

「パパ…。またどこかにいっちゃうの…?」

私に気づいた父が屈んで目線を合わせる。

「すまないアリシア。父さんはお前を本当に愛しているよ。でも行かなきゃ行けないんだ」

父の声がなんだかとても耳に残る。



「それに急にこの人たちを預かれって言われても!」

母の指差した方向に目をやると、父と同じ年くらいのおじさんとローブを身にまとった子どもがいた。

「そんな乱暴なことを言うな!俺の戦友だ!」

「だいたい顔も見せない子どもに!!」


母が二人に近づいて子どものローブのフードをまくりあげた。

バサッ!


フードの下からは夕日にキラキラと反射する銀色の髪と真紅の瞳。

「嘘…」

母が口元を抑える。


「綺麗…」

動揺する母をよそに自分はその少年の顔から目を離せなかった。

母の絵本の読み聞かせでその存在は知っていた。

悪しき人(ディヴェル)

卑しき者、災禍を招く者、絵本の中では毛むくじゃらの雪男のような姿で描かれていた。

しかし目の前にいる子どもは、卑しくも恐ろしくもない。

まるで天使のように透き通った姿をしていた。


激昂し混乱する母を横目に私は思わず少年の元へ駆け出していた。

「あたし、アリシア!あなたは?」

差し伸べられた手と私の目を、キョトンとした顔で少年は何度も見る。

そして隣のおじさんの顔を見てから、私の方をおずおずお向き直りこう言った。


「ヴァルト…です」



ヴァルト

私の運命の人。

そうだ、この時に…私は出会ったんだ。

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