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9話 決勝その一

「さて、荷物はこれで全部だな。ヴァルト、アリシアちゃん、俺はこのまま荷車と馬車を停める場所を探すから先行っててくれ」

「ありがとう父さん」

「ありがとうございますアルマさん」

二人は頭を下げる。

「おうよ、一段落ついたら試合見に行くからな!勝てよ!」

馬車に乗った父親を見送り、ヴァルトとアリシアは歩き出す。


「ついに決勝戦か…」

「まぁ、私たちは戦う理由なんてないけどね」

アリシアが肩をすくめる。

「いや、僕はカインを優勝させる。あいつは偉くなるべき人間だ」

ヴァルトがはっきりそう答えるとアリシアがキョトンとした顔をしている。

「ヴァルトとカインって仲良かったんだ…」

「正確には仲良くなっただけどね」

「ふーん、変なの」


会場につき控室に入る。

「ヴァルト、今日の観客の数見たか?」

カインがおもむろに話しかけてくる。

「うん!すごい人数だったね」

「それだけじゃない。今日は王族の誰かが来るって話だ…。

誰が来るんだろうな?」

「どうせ大した奴じゃないわよ。せいぜい来ても王家の親戚でしょうね」

アリシアが面白くなさそうに言う。

「わかんねーぞ、とんでもないビッグネームが来たりしてな」


ガチャ!

控室の扉が開く。

「おう、モバ!ついに決勝せ…」

カインが入ってきた相手に対して言葉を失う。

入ってきたのはモバ様と誰だ?

そこには大柄の見たことない男がモバと立っていた。


「お前…リバはどうした」

カインが問う。

「捨てたわよあんな奴。大会規定によれば主従紋(ルディン)が消滅した場合のみメンバーの入れ替えが認められているわ」

モバは軽く吐き捨てる。

「捨てたって…お前!」

「お下がりください」

モバに近づこうとしたカインを男が止める。


「お初にお目にかかります。モバ様に使える従者(リークス)のゴンザと申します。腕を失ったリバ様の代わりに出場させていただきます」

男が丁寧に挨拶をした。

「だからリバは!「無駄よ、カイン」

アリシアがカインを制止させる。


そう別にモバのやったとは間違ってはいない。

使えない従者を切り捨てて新しい者を起用しただけ。

この国の常識的に考えれば貴族が絶対であり、平民のリバは捨てられようと文句は言えない。

この小柄な女はこの国の価値観に完全に適応してるだけなのだ。


「そろそろカインチームはご移動を!」

係が呼びに来る。


『第200回!グウィン王国ダルク辺境伯領高等学校集団武闘(ヴァニッチ)大会!ついに決勝です!!!』

いつも以上の盛り上がりをみせている会場は歓声で地響きがなるようだった。

『まずは今大会のダークホース!まさかまさかの試合でついに決勝まで進んだカインチィーム!!!』

凄まじい熱気に迎えられ会場に入る。


やはりこの伝統的な大会はそれだけ注目されているのだろう。

貴族による貴族同士の殺し合い。

各領地の貴族階級が増えすぎない抑止的な側面もあるこの大会は、次の上級貴族階級の選抜でもある。


『さてお次は今大会最強格!圧倒的すぎる実力差で敵を寄せ付けない最強部隊。シルヴィーチィーム!!!』

カインのチームを遥かに上回る歓声が響く。


おそらく対象であろう赤髪の少女を先頭に、全身を大盾で武装した男たちが現れる

いや、それは盾と呼ぶにはあまりに大きすぎる、もはや鉄柱を全身に纏っているかのような男たちだった。

「おい、あんな量の武装持ち込んでいいのかよ!」

「大会規定によれば本人が装備した状態で自立して歩行できるものなら持ち込み可能だけど、あれでよく歩けるわね…」


『たっ大変です!ここで王族の方がご到着されたため紹介させていただきます』

会場が息を呑む。

なんせ厳格な身分封建制を取っているグウィン王国にとって王族はトップの権力を有する。

もし失礼があれば裁判などなしに首が飛ぶ。

『ご紹介させていただきます。現グウィン王国第一皇太子であらせられるマクシミリアン=マジェス=グウィン殿下でございます!皆様ご起立と最大限の平伏をお願いします』


会場の特別席に現れたのは、赤い髪を短く切りそろえ月桂冠をのせた男だった。

あれが…第一皇太子

次の王になる男!

どこまでも見透かしたような紺碧の瞳。

上品な衣服に身を包み、民の平伏をつまらなそうに眺めている。

マクシミリアンが軽く上げていた手をおろす。

直れという意味だ。


「硬い顔してんなぁ!ほら笑顔笑顔!」

隣から逞しい体つきをした髭面の男が現れ、マクシミリアンの肩をたたく。


「嘘…あれって」

「グスタフ様ー!カッコイイー!!!」

「軍のトップが護衛かよ、さすが第一皇太子だな」

観客がどよめく。


マクシミリアン皇太子の隣にいる紳士。

グスタフ=ルチャル=アイアン

グウィン王国騎士団の団長にしてこの国の事実上のNo.2


グスタフはフィールドに並んでいた敵将の少女を見つけるやいなや大きな声で

「シルヴィー!頑張って勝てよー!!!」

と手を振った。

「ちょっと、お父様!恥ずかしいからやめてくださいまし!」 

敵将の少女がグスタフの方を向き直り叫んでいる。


「シルヴィーって間違いない…」

カインの頬を汗が伝う。

「もしかしてあのアイアン家の娘か?」

ヴァルトがカインに尋ねる。

「ああ、この国の特に神聖視される御三家。その中で軍事を司るアイアン家の娘…」

その会話に気づいた敵将の少女がこちらを向き直り、ゴシック調のドレスの裾をつまんで上品に挨拶する。

「お初にお目にかかります。わたくしはアイアン家の三女、シルヴィー=ルチャル=アイアンでございます。以後お見知りおきを」

少女は可憐にカインたちを見て微笑んだ。


『両チーム準備か整ったそうです。それでは、試合開始ぃ!!!』

試合開始のドラが鳴る。


魔力強化(ブースト)ですわ!」

敵将の少女シルヴィが右手を掲げるとそこから閃光が迸る。

「密集陣形!」

シルヴィの周りを囲むようにして立つ男たちの盾が大きく広がり地面に突き刺さる。

あっという間に少女の姿が見えなくなったと思うと、盾と盾の隙間に赤いバリアが張られる。

その姿はまるでフィールドに突如出現した要塞のようだ。


『出たー!!!シルヴィーチームの紅の要塞(レッドフォートレス)だー!!!』

紅の要塞(レッドフォートレス)だと…?

前衛三人が敵の要塞に警戒していると後方から

「どけ!雷の魔矢(ライトニングアロー)!!!」

カインが放った電撃の矢は一直線に盾にぶつかる。

パァン!

だが家紋の刻まれた盾に阻まれ矢は霧散する。

カインの雷の魔矢(ライトニングアロー)で傷一つつかないとは…!


無重力(ゼログラビディ)!!!」

ヴァルトの体が浮きはじめる。

要塞を打破するにはとにかく高威力の一撃を与えるしかない。

推進爆発(バーニア)!」

ヴァルトの背中から魔力が吹き出す。

爆発的な速度で要塞に接敵する。

片腕の使えない僕が今出せる最高火力!

重量化(グラビティ)!!!」

ヴァルトは足の質量を増加させる。

破壊力は速度と重量によって作用される。

今の速度と足の重量を加えれば!

重化迫撃(グラビティインパクト)!!!」

重たい金属音と共にヴァルトの足が要塞の盾を凹ませる。


これでもだめか!

ヴァルトが足を離すとみるみるうちにその箇所の凹みが回復する。

ヴァルトの頭上から甲高い音がする。

咄嗟に頭上を見上げると、ヴァルとめがけて熱線が放たれる。

咄嗟に回避し、要塞の上空に回る。

先程までいた場所の地面が黒ずんでいた。

安心するのもつかの間再び熱線がヴァルトめがけて放たれる。

再び回避するも、すぐに熱線が放たれる。

「何だこれ、早すぎる!」

なんとか避ける。

「前衛、下がれ!」

カインの指示でカインの所まで後退する。


「どうだい王子、俺の娘は?」

グスタフの娘、シルヴィーと言ったか。

「我が国の伝統的な密集陣形(ファランクス)を応用するとはな」

「お、さっすが王子!守りこそ最大の攻撃。我が娘ながら恐ろしいぜ」

グスタフが身震いのふりをする。

「だが余は奴の方が気になるがな」

マクシミリアンはその指を銀髪の少年に向ける。

「あの悪しき人(ディヴェル)がか?王が反逆の一族に言及するなんて、俺以外のやつが聞いたら怒られるぞ?」

「ふん、その程度のおとぎ話に踊らされる余ではない。それに虐げられてるものが勝ったほうが面白いではないか」

マクシミリアンはたいそう愉快そうにヴァルトを見つめる。

奴ならこのくだらん国を変えるかもな…。

趣味の悪い遊びと思って来たが、思わぬ収穫を得た。


「なぁ、カイン。あの熱線は恐らく…」

「ああ、自動反応魔法(フルオートマジック)。あいつらに近づいたら、反射的に熱光線で迎撃される」

「回復する装甲に、自動反応魔法(フルオートマジック)なんてな。このままじゃ近づけないぞ」

「わかってる。お前のスピードでも避けるのがやっとなんだ、さっきより強力な衝撃を与えて要塞を作る盾を壊すしかない。幸いあれに近づきさえしなければ攻撃はこないんだ、ゆっくり考えるさ」

カインとヴァルトは前方にそびえ立つ紅の要塞(レッドフォートレス)を見据え思案する。

今の自分の持つ能力で爆発的な火力を生むもの…。


「総員、密集陣形を維持したまま前進開始」

紅の要塞(レッドフォートレス)の中から、シルヴィの声がする。

ズズズ…

地鳴りのような音がする。


「どうやらゆっくり考えている時間はなさそうだ」

「まさか、あの状態のまま動いてるのか…!」

近づいている。

幼子の歩きのように緩やかだが確実にカインの方へ近づいている。

あのまま要塞ごと距離を詰められたら、熱線で焼き切られるか押しつぶされるかしかない。

要塞の横と上は自動反応魔法(フルオートマジック)で熱線が飛んでくるから割り込むのも無理か…


紅の撃滅弾(クリムゾンレーザー)用意」

再びシルヴィの凛として冷たい声がした。

要塞の頭上に赤い大きな魔法陣が出現する。

魔法陣の中心に先程の熱線とは比べ物にらないほどの強烈な光が収束する。


「くっ!魔力強化(ブースト)!!」

魔障壁(マジックウォール)!!!」

ヴァルトたちの前方に光る壁が現れる。

モバとゴンザのペアが発動してくれたらしい。


「撃てー!!!」

シルヴィの声とともに収束された熱線がカインめがけて放射される。

熱線が魔障壁に阻まれ辺りに拡散する。

あまりの威力に会場が振動する。

「ぐっ、これほどの威力とは…」

障壁を張っているゴンズがうめき声を上げる。

障壁にひび割れが入る。

「まずい。割れるぞ!衝撃に備えろ!!」

途端に障壁が消滅し凄まじい衝撃が襲う。

直撃は避けたものの全員が大きく吹き飛ばされる。


「全員無事か!?」

シャクメに守られたカインが問いかける。

「なんとかな…」

ヴァルトはなんとか立ち上がる。

他のメンバーも無事なようだ。


「ゴンズ、あと何回までなら障壁を張れる?」

「恐らく、二回ほどでしょう…」

二回か。

無理もない、あれだけの破壊力。むしろあそこまで威力を軽減できたことを褒めるべきだろう。


カインは爪を噛む。

圧倒的耐久力と破壊力を兼ね備えた敵。

そもそもこの大会に国の御三家、その中でも軍を支配するアイアン家が参戦してくることがおかしいのだ。

家督の躍進を目指す下級貴族が多く参戦する中、文句なしの上級貴族。

恐らく国民に力を誇示することが目的、俺達はその噛ませ犬に過ぎないってことかよ!


紅の撃滅弾(クリムゾンレーザー)用意」

再びシルヴィの声がする。

早すぎる、さっきの威力がまた飛んでくるのか。

ヴァルトは戦慄する。

ゴンズだっていくらモバ様に魔力供給を受けてるとはいえ、またあれだけの障壁を張るのは用意ではないはずだ。

どうする。俺が体を張ってあのレーザーをとめれば…

俺は無事では済まないが、チームは無事で済むはず。

やるか…?

無重力(ゼログラビティ)…」

ヴァルトの体が浮き始める。

やるしかない!

「ダメ!」

ヴァルトの腰に手がまわされる。


「アリシア…」

「昨日言ったじゃない!自分一人で戦おうとしないで!」

「でも…このままじゃ僕ら全員負けるぞ!」

「だから()()()考えようよ!!」

ヴァルトは息を呑んだ。

そうだ、僕は何を考えてたんだ。

今ここで自分一人が体を張って犠牲になっても、あの要塞を突破できるわけじゃない。

考えるんだ…。あれを突破するだけの威力ある攻撃を!アリシアと二人で!!


「ヴァルト、アリシア。来るぞ!」

カインが叫ぶ。

「撃てー!!!」

再びシルヴィの号令ともに収束した光が解き放たれる。


「うおお!魔障壁(マジックウォール)!!!」

ゴンズの声とともに再び光る壁が出現する。

壁に阻まれた光線は威力を落とさない。

「なんという威力…負けてなるものか!」

ゴンズがさらに壁の光を増幅させる。

さらに厚くなった壁が熱線を弾く。

「すごい…。ゴンズさん!これなら防ぎきれますよ!」

ヴァルトがゴンズの方を振り向こうとしたとき

パァン!!

破裂音とともに壁が消滅した。


恐る恐るゴンズの方を見る。

ゴンズの両手の甲に大穴が空き、血が溢れている。

魔力暴走(オーバーヒート)…。

魔力の放出量が体の限界を超えると、魔力が暴走する現象。

過剰な魔力の放出にゴンズの体が耐えられなかったのか。


「ちょっとこの程度の魔力放出、リバなら簡単にできてたわよ!」

膝をつき俯いたゴンズの背中をモバが蹴りつける。

「リバは類稀なる魔力操作術を持った者、通常の人間ならばこれが限界です…」


「ヴァルト、私達で勝負を決めに行くわよ」

アリシアが唐突に言う。

「アリシア…?そうは言ってもどう崩すのさ」

「きっと出来るわ、私達なら」

そう言ってアリシアは剣を抜く。

そのまま頭上に剣を頭上に掲げる。

「悪しき邪竜を倒し、永きに渡る平和をもたらした奇跡の剣よ!我が手に顕現せよ竜殺しの超剣(バルムンク)!」










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