苦悩と焦燥①
とある授業と授業の間の10分休み。
私と月城は神妙な面持ちでお互いを見る。
「……せぇぇぇの!」
バッとお互い日本史の小テストの紙を見せ合う。
私は95点。月城は90点。
「よっしゃあ!月城君の負けだねえ〜!」
「くそっっっ!!!」
月城は眉間にしわを寄せて、悔しそうな顔をする。もう、月城の怒り顔にはビビらなくなった。
別に私は勉強が得意というわけではないが、国語と日本史だけはクラスのトップ3には絶対入る自信がある。
日本史の授業は毎回小テストがあるのだが、ずっと高得点を取っていたら、お勉強でクラス1位の座を狙っている月城に目をつけられたという訳だ。
「いやー、ここの記述が三角じゃなかったら満点だったのになあー。」
最近は月城のすぐキレる性格が面白いとさえ思うようになってしまったので、ちょっとだけ煽ってみる。
「ふざけるな!確か今日の五限は数学で小テストあるだろ?今度はそれで勝負だ!」
「無理ー。数学は専門外だから。」
「お前ぇ……!」
みやびがくすくすと笑う。
「ほんと、なかよくなったなぁ〜」
「なかよくないよ!」
「なかよくないだろ!」
「ハモってるやん。」
……笑っているみやびを2人で睨む。
「おーい、二階堂ー!」
教卓から声が聞こえる。担任兼日本史担当の男性教師、大山先生が私を呼んでいるようだ。
「……なんですか?」
「これ、欠席中の陽道に渡しに行ってくれないか?」
日本史の授業まとめプリントと、学級通信などの帰りのHRで配られるようなプリントがごっそりと渡された。
ちなみに、陽道君は1週間ちょい学校に来ていない。やはり、あの妖怪の召喚はかなりこたえたみたいだ。
2日前にみやびと月城がお見舞いに行ったらしいが、もうちょっとしたら学校に行けそう的ニュアンスの話をされたそうだ。
「えーと、なんで私なんですかね?」
「二階堂が1番家近いから。」
「あー。でも、今日、用事があって……。」
もちろん嘘だ。
正直、彼と2人っきりはキツい。無口っていうのもあるけど、どこか妖魔師の私を疑うような目っていうか…。
それなら月城と2人っきりの方がまだマシではある。……嫌だけど。
「大丈夫。大丈夫。君ら同じマンションだから!…と、いうことで、はい!」
マンション名と号室がかかれたメモまで渡された。てか、同じマンションなんかい!
よって、私は放課後に陽道君の家に行かないといけなくなってしまった。