終わらない夏祭り④
「瑠璃の目……?」
茉莉花は首を傾げた。
「実際に、今から目を青く光らせてみて。その方が説明しやすいわ。」
ヤマトはキラキラと目を輝かせて茉莉花の目に注目する。
……本当はただ瑠璃の目を見たいだけなんじゃないか?…この妖怪。
茉莉花はとりあえず、右目に全神経を集中させる。
「………………きた!」
自分の周りに真っ黒なオーラがあるのが視覚化された。
ヤマトの周りも紺色のオーラが漂っている。
「わぁ!すごーい!……じゃ、なくて、、この目についての説明をしなくちゃね。今、茉莉花ちゃんはさっき言った、瑠璃の目を発現させているわ。集中を途切れさせなければ、長時間の発現も可能よ。」
簡単に言うが、その集中をきらさないというのがかなり難しいんだけどなぁ。
「瑠璃の目は今、茉莉花ちゃんが体験している通り、陰の気を視覚化することができるの。
瑠璃の目を持たない人が陰の気を認知するには、陰の気特有の冷たい空気感の感知しか方法がないのに対して、茉莉花ちゃんは視覚化によって陰の気の正確な位置と濃さを把握できるから、明らかに有利よね!」
「……有利って…。別に私は誰とも戦うつもりないんですけど。無闇に発現させる気も起きないですし。」
「え〜。もったいない。瑠璃の目にはね、もうひとつ凄い力があるのに。」
「凄い力?」
「ちょっと試しに、あそこにある桜の枝を折るイメージをしてみて。」
ヤマトは近くの桜を指さした。
「?……わかりました。」
茉莉花は、右目に神経を集中させたまま、ヤマトのさす枝がポキッと折れるイメージをした。
…………………………パキッ!!!
「え?」
なんということだ。自分のまわりにある黒いオーラが、まるで自分の意思を反映したかのように動き、枝を折ってしまった。
「これが瑠璃の目の最大の特徴、“陰の気のコントロール”よ。自分の半径およそ5メートル以内の陰の気を自在に操ることができるの。本来、陽の気を操れるのは人間、陰の気を操れるのは妖怪と決まっているんだけどね、瑠璃の目を持つ人間だけは例外なのよ。」
「へぇ。すごい。」
ってことはこの前、煙丸が投げつけてきた槍の軌道が自分にあたるギリギリの所でズレたのも、偶然ではなくて無意識にコントロールしたってことなのかも。
「この目は鬼門院家の地位を揺るがないものにした最大の要因とも言えるわね。瑠璃の目をもつ鬼門院に今まで、多くの陰陽師や敵対する妖魔師達がねじ伏せられてきたんだもの。」
「じゃあ、私が瑠璃の目を発現したのも、鬼門院の血が流れているから?」
「それがねぇ、発現させたのは今まででたった2人しかいないの。………茉莉花ちゃんと生前のアマネ様だけ。」
「へ?え?どういうことですか?」
なんで急に天音輪道鬼が出てくるんだ?
茉莉花は軽く混乱する。
「あら?茉莉花ちゃん、アマネ様が鬼門院家の先祖って知らなかった?」
とんでもない爆弾発言。
「は、はあ!?めっちゃ、初耳ですけど。」
ヤマトは常識だと思っていたようで、驚いている茉莉花に驚く。
「本当にアマネ様の契約者にしては何も知らされてないのねぇ。……まぁ、そういうことなのよ。そして、アマネ様の子孫、つまり鬼門院家はアマネ様が生前発現させた瑠璃の目を代々移植して今日まで残してきたの。」
「い、移植ねぇ…。でも、さすがに1万年も引き継いでいるのに、形なんて残っているものなの?」
目玉なんてすぐに腐るでしょ。普通。
「確かにおかしな話なのだけど、今も受け継がれているのは事実ですもの。そして、今瑠璃の目を引き継いでいるのが、現当主でもある鬼門院夜彦よ。」
「鬼門院夜彦……。」
その人なら、両親の死についてなにか知っているのだろうか。
「彼に関していい噂はないわね。実力のある陰陽師をとことん潰しているみたいだし、自分に従わない妖魔師や、血縁の者でさえ手にかけているという話を聞くわ。まあ、そもそも鬼門院の人間から悪い噂が絶えたことなんてないんだけどね。」
「まぁ、やっぱりそうですよね。」
鬼門院の当主がそんなんだから、潤達にで会った瞬間、敵対心を向けられたわけだ。
「鬼門院夜彦は瑠璃の目で巧みに陰の気を操り、陰陽師側に大きな損失をもたらしているの。だから、茉莉花ちゃんが瑠璃の目を持っていることはナイショにしていたほうが、安全だと思うわ。」
なるほど。これも天音輪道鬼との契約同様、言わない方がいいって訳か。
「………へぇー。内緒話ですか。へぇー。」
「…………げ。」
ヤマトと茉莉花はゆっくりと御堂理斗の方へ振り向いた。
彼は相変わらず、仰向けで枝に寄生されてはいるが、普通に喋れるようにはなったみたいだ。
「あ、あらら……。どうする?茉莉花ちゃん。」
ヤマトはアワアワと慌てている。
……もしかしたら、、
今の会話、1番聞かれたら危険な人に聞かれたかもしれない。




