水と油の出会い⑤
目の前にはカエルの顔、人間の身体を持つ妖怪が立っている。
100歩譲ってカエルの顔はいいとして、身体は人間で、さらに、ムキムキのマッチョなのがキモさを何十倍にも増幅させている。
「お前が召喚したのか!」
また月城が突っかかってくる。
「してませーん。契約した妖怪の名前を呼ばないと召喚できないんでー。」
「ふん!とことん癪に障るな!」
「それはこっちのセリフだわ。」
みやびは呆れた顔で私と月城を見る。
「もう、今はそんなんゆうてる場合やないで。潤、倒せそう?」
「ああ、問題ない。」
陽道君は大きく深呼吸した。
その瞬間、彼の手にはオレンジ色でぼんやりと光る刀があらわれた。まるで、CGでも見ているみたいだ。
「なにこれ!?」
「その話は後でするわ。とりあえず見てて!」
みやびはにやりと笑って言う。
そして、陽道君は瞬く間にカエル人間を一刀両断する。つよ。
「……倒したの?」
「潤はうちらの中で1番優秀やからな!」
「これって八岐大蛇の封印が緩んだ影響なの?」
「まあ、そうなんやない?」
バリン!!!!!!
「今度はなに!?」
「階段の方からだな。」
月城が冷静に判断する。
一同、今いる3階廊下から4階に繋がる階段の踊り場に移動する。すると、またしても気味の悪い妖怪が割れた窓ガラスの前にいた。
今度は馬の生首が浮遊している。
「うえぇぇ……。」
なんか、テンションの下がる妖怪ばっか会うな。今日。
そして、またまた一瞬のうちに陽道君がぶった斬る。
「なんなんや!?ほんまに!」
「……。」
月城も黙って考え込んでいる。
妖怪が立て続けに現れるなんて、めったにない。たとえ、八岐大蛇の影響だとしても、そもそも妖怪というのは個体数が少ないのだ。私も月に1、2回しか見かけないほどだ。
さらに、馬の生首妖怪が消えて30秒もたたないうちに、
バン!!!!!!!!
「!?」
また大きい音がする。窓が割れる音ではない。
「もう、なんなんだよ!」
着々と月城のストレス値が溜まっているようだ。
もう3回目だが、音のした方に皆で向かう。
…うーん面倒くさいことに関わってしまったような。気味悪いから先帰るね、って言えばよかったかも。
「……やば、、、」
屋上へのドアが破壊されている。
私達は急いで屋上に出た。
屋上には何も無い。妖怪もいなかった。
月城と陽道君は屋上をうろつきキョロキョロと辺りを見回す。
私とみやびは破壊されたドアをまじまじと観察した。ドアの金具はぐにゃりと曲がっており、ドア自体も少し歪んでいた。
「ここらへんにも妖怪いるはずなんやけど、どこにおるんやろ。金属を曲げるくらいやから、さっきの2体よりは強いはずや。」
「そうだね。」
さっきの弱すぎる2体。そして見計らったようなタイミングで妖怪は現れる。たどり着いたのは屋上。
…………いや待て。私達、屋上に誘い込まれたんじゃないか?
だとしたら、屋上にいるのまずいんじゃ。
バッと月城と陽道君を見る。
屋上の端の方にいる2人の背後に、建物から生えたうっすら黒い影のような手がたくさん迫っていた。
あの妖怪2人を屋上から落とすんじゃ!?
「ねえ!後ろ!!!」
2人が後ろを見る。
間一髪のところで陽道君はオレンジに光る刀を、月城もまたオレンジに光る双剣を出し、黒い手の影を切った。
さすがに2人とも動揺が顔に出ていた。
「ウガアアアアア」
足元からうめき声が聞こえる。
すると、新たに屋上の床にたくさん黒い手が生え、その手が集まり、徐々に人の形を形成する。
「まずいな……。」
月城がぼそりとつぶやいた。