水と油の出会い④
小会議室にて。
壁に寄りかかって立つ黒髪イケメンこと、陽道潤が私に言った。
「鬼門院茉莉花。お前は何を企んでる。」
「……はい?」
やだあ。ほんとにこの人たち何なの!?何で私の前の名字なんかしってんの。怖いわ!
「…全然、おっしゃってる意味がわからないのですが。」
恐ろしい顔で堅物メガネは私を睨みつける。
「すっとぼけるなよ。この非人道的女め。」
……カチーン。
「なんなの!ほんとに意味わかんないんだってば!この、堅物メガネ!………………あ。」
心の中で呼んでいたあだ名をうっかり言ってしまった。
「…………。」
やばいやばいやばい、めっちゃ眉間にしわがよってる、なに火に油注いでんだ私!
「……ぷっ、あははははは!」
みやびがこらえきれず笑いだした。
「あはは、堅物メガネって、ふふ、見た目も中身もほんとその通りやんなあ……!最高や、茉莉花ちゃん!」
「おい!ふざけんなよ百寺!」
「でも、この様子だと茉莉花ちゃん、何にも知らないんやないの?」
「……ふん。」
ほっ、なんかわからないけど、誤解はとけたのかな?
みやびは私に謝る。
「ほんまごめんなあ、うちら陰陽師やねん。せやから、茉莉花ちゃんが鬼門院家の人間やって聞いて、何か企んでるんやないかって疑ってたんや。」
なるほどね。厄介な家系に生まれたものだ。
「まあ、わかってもらえればいいよ。でもどうして陰陽師が3人も同じ学校に来たの?」
「それはやな……八岐大蛇って知ってる?」
「やまたのおろち、、、あの伝説の生き物の?」
八岐大蛇…蛇みたいな龍みたいなのが8つくっついてる、暴れん坊の怪物、というイメージ。
みやびはうんうん、と頷いた。
「ソイツ、この学校の校庭に埋まっとんねん。」
「……はい?」
私、からかわれてる?
「そもそも、八岐大蛇って存在したの?」
「いた。」
かたぶつ、、月城がキッパリという。
お、若干機嫌なおってる…!
「じゃあ、いたとして……伝説では退治されてなかった?」
「された。だが、肉体を退治しただけで、魂まで破壊しきれなかった。八岐大蛇の魂はいろんな人間の身体に乗り移ったために退治ができなかったが、ついに約200年前この場所に封印することに成功した。そして、次の3月20日封印が解ける。」
「もう1年きったってこと!?」
「ああ。俺たちは3月20日に再びヤツを封印しなきゃならない。」
「……でも、約1年も前にわざわざ転校までしてくる必要あるの?3月になってからここ来ればよくない?」
「そうしたいところなんやけどなぁー。」
みやびは肩を落とす。
「封印が緩まれば緩まるほど、八岐大蛇の強大な力に引き寄せられて妖怪が集まりやすくなるんや。」
「へー、そうなんだ。」
「この学校が妖怪ハウスになる前に、引き寄せられた小物たちを地道に処理するのも任務のひとつやねん。」
「大変なんだね、陰陽師も。」
「そうなの!」
みやびがそう言った時だった。
バリン!!!!!!
「!?」
ガラスが割れる音がした。
ずっと黙っていた陽道君は音がした方に走っていった。
私達も後に続く。
「なにこれ……。」
廊下の窓が1つ割れていて、その割れた窓の前に、顔はカエル、身体は人間の気味の悪い妖怪が立っていた。