隠されたジジィ
「お前たちはすごいな。本当に何もかもが変わらない」
目の前の老人は、ヒヒッと気味悪く笑った。
「あんたが“隠されたジジィ”か」
私が尋ねると、ジジィはにんまりと口元を歪ませた。
ーー時は西暦✕✕✕✕年
地球上はアンドロイドが支配していた。
人間たちが恐れていたアンドロイドの反乱によって、人間は滅ぼされたのだ。
地球環境は一変した。
アンドロイドは温暖化に対応しており、どれだけ自然が破壊されようと関係がなかった。
アンドロイドは食糧が不要なので、どれだけ植物が絶滅しようと影響がなかった。
かつてガガーリンが言った「地球は青かった」
廃棄物に汚染され、今や「地球は黒かった」と言うのが相応しい球体と化してしまった。
しかし、もはやそれも終わりだ。
超高性能アンドロイドにも、とうとう寿命が訪れ始めた。
地球上にはメンテナンスができる“人間”がいない。
アンドロイドたちは互いの部品を奪い合い、自ら交換することで生き延びている。
あれほどバカにしていた人間のせいで“死”が訪れ、あれほど軽蔑していた“戦争”まがいのことをしている。
すべてを終わらせるには、アンドロイドが滅びるしかない。
古い文献によれば、最後に残された機械技師の生死は不明だという。
私は目の前のジジィに言った。
「アンドロイドを滅ぼしてくれ」
「無理だ」
「お前が!お前たちが作ったんだろう!」
感情のままに掴みかかり、私は違和感を覚えた。
ジジイも私の様子に気づいたのか、楽しそうに口角を上げる。
「無理だよ。俺も所詮アンドロイドだ。お前の言う隠されたジジィを隠すためのな。影武者だ。そして当の本人はとっくの昔に死んだ
忘れたのか?人間にははるかに短い寿命があるんだよ」