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大きな目標

そしてある程度蘊蓄を披露した後、リーシャと手を繋ぎアーサイ通りを歩いていく。


天気に恵まれ雨こそ降ってはいないものの薄い雲がかかった少し仄暗い感じと湿った重い空気が梅雨独特の雰囲気を醸し出し、それがまたアーサイの魅力に繋がっている。


偶に鳥が囀り初夏のセミと二人の足音だけが響き渡る。


蘊蓄を語ってから小一時間、俺もリーシャも無言であったのだがそれが別に苦という訳でもなく、むしろその無言の時間が心地よく感じる。


「…………っ!?」


そして俺は手の握り方を握手握りから恋人握りへと握り方を変えるとリーシャの顔が一気に真っ赤になっていくのが分かる。


そんな反応が可愛くてたまらない。






リーシャはこの旅行中に一つの大きな目標を立てていた。


それはクロード殿下の事を心からお慕いしている事と、感謝を述べる事である。


勿論、婚姻をする事が決定しているし、感謝の言葉一つでは足りないくらいにはクロード殿下に助けられて来た。


しかしだからこそリーシャは思うのである。


自分の口でこの思いの丈を伝えたいと。


しかしながらいざクロード殿下を前にすると心臓が壊れてしまうのでは無いかと思う位激しく動き、言おうとしていた言葉達はわたくしの口から出るのを頑なに拒む。


ただ、パクパクとまるでイコ(鯉の様な魚)の様になってしまう。


「どうしたのだ?リーシャ」

「い、いえっ。何でもございませんわっ!」


そしてわたくしはまたチャンスを逃すのであった。





「一体何をしておりますの、リーシャ様」

「だ、だって………」

「今日一日だけ見てもチャンスは幾度となくありましたし、最後はクロード殿下から聞いてくださったというのに」


宿に戻ったわたくし達は男女で部屋を分かれたあと、今日一日を振り返りシャルロットがダメだしをしてくる。


そんな事など分かってはいるのだが、もうこれ以上お慕いしてしまう事などないと思っていたこの感情が、今回の旅行中より一層クロード殿下の事をお慕いししている気持ちが深く強くなっていってしまっているのだ。


そしてお慕いしている気持ちが強くなればなるほど、クロード殿下へと本心を伝えたいと思う気持ちは強くなりつつあると同時に、そのハードルもまた高くなって来ている。


「だって……………………クロード殿下を見ると、頭が真っ白になってしまうんですもの」


それにいざ言おうとすると羞恥心がわたくしを襲ってくるのだからもどかしい。


「全く、貴族令嬢を前にした凛々しいお姿はどこに置いて来たのかしら」


誤字脱字報告ありがとうございますっ!

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